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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第一部 第三章 回廊

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第31話 恐竜と二人の息子

「君はここに来ちゃダメなんだがねぇ。

魔王様も困りなさる。

どうしたもんか」


実際わしは困っておった。


魔王様からもしかしてと言われていたが、

本当にそんなことが起こるとは。


今の今までそこには、

我が息子、マーリンが寝ておった。


儀式の後、時を止めて眠り続ける息子を、


森の我が家へ連れて帰る途中だった。


「ここはどこ?」


はるまが問いかける。


さてどこまで話したものか。


「ここはなんていうかの~頭の中の世界じゃな。夢の中とでも思っとくれ」


わしもこことはるまが居た世界の説明は正確には出来ない。


ごまかせてるのかわからないがふわっとさせておくか。


「なんではるま君のこと知ってるの?」


「君のお父さんと知り合いでの~聞いておった子に似ておったからじゃ」


仕方ない。


この子をほってもおけんし、かといって必要以上に教えられん。


しばらく相手をしてみるとしよう。




マーリンが儀式により止まったのは魔王様の意思だった。


だが、魔王様のために犠牲になったわけではない。


魔王様のために犠牲にしろと言われていたとしたら、

わしはおそらく犠牲にしておったであろう。


そんなわしが言うのもなんじゃが、魔王様は最後まで抗って下さった。


わしが魔王様以外で初めて、

自分の命をかけても守りたいと思えた彼女。

彼女を失ったわしには、家族はマーリンしかおらん。


魔王様をも凌駕するかもしれん魔法の素質を持った我が息子。

マーリンを失うことは魔王様にとっても痛手であったろう。


いや、魔王様はそんな打算で人を大切にする人ではないがな。



息子を封印したのは、むしろこのはるまという子の存在のせいじゃ。


この子が悪いわけではないが、少し複雑な思いもあった。


しかし、この子を見ておるとマーリンが帰ってきたような。


そう思うとほっとけんかった。



それからわしはこの子に学問を教え、一人で生きていく術を叩きこんだ。


すぐ泣く所など、マーリンにそっくりじゃ。


「泣いておっても腹はふくれんぞ。

泣いてる暇があったら肉を切れ」


「はるま君、ご飯はママに作ってもらう~」


「平和な世界で生きてきたんじゃな~まったく」



はるまが初めて一人で火をおこしおった。


「できた……」


「やっと一人前じゃな」


「出来たよ!僕火をつけたよ!やった~」


成長が我が子のことのように嬉しかった。


「自分で着けた火で焼く魚はきっとうまいぞ」


わしはそう言うと、串に刺さった魚を火にかざした。



しかし、この子はいつまでこっちにくるんじゃ。


もしかしてずっとこのままなのか?



ある時、ふとはるまが聞いてきた。


「なんでそんないろんなこと知ってるの?」


魔王様に広げてもらった回廊で少し知識が入ってくるんじゃが、

その仕組みはわしにもわからんし、実際どうやって知識が入ってくるのか知らん。


「そりゃ知らんわい」


嘘ではないじゃろ。


魔王様のことは言えんしな。



「なんでも知ってて、パパみたいだね」



はるまが何気なく発したその言葉に胸が締め付けられた。


息子よと抱きしめたかった。



数年経ったが、はるまは全然帰る気配がない。


このままこの世界で生きていくことも考えた方が良いかの。


「父さんに会いたい」


はるまの望みはそれ一点じゃった。


それも叶えてやりたいが叶わんじゃろうな。



最近考え込むことが増えた。


はるまにマーリンを重ねる。


マーリン、いやはるまなら。

魔王様がおらんでも魔王様が望んだ世界が作れるかもしれん。


それならば魔王様は解放される。


そんな考えが頭をよぎる。


魔王様を眠りにつかせてやりたい。



そんなことを考えておった時じゃった。


「父さんに会いたい」


はるまのその言葉に、

魔王様が人柱となって眠れば、この子の父は眠りから覚めるか。

という思いが頭に浮かんだ。


「ふ~、魔王様を倒せば会えるよ」


うっかり言ってしまったわい。


しかし、それが魔王様にとって一番の道かもしれぬ。



この子なら、マーリンの器に入るこの子なら、

理を曲げて魔王様がおらんでも良い世界を見つけるかもしれん。


「魔王って悪いやつなの?」


ああ、魔王様よ。


お主は悪い奴であろう?


この世の悪を全てその身に背負って眠りにつくのじゃからの。


「……そうじゃな」



「どこにいらっしゃるかも答えられんでな。自分で探せ」


この子には、世界中を冒険して知識と力を手に入れて欲しい。


そうしなければ、大きなことは成し遂げられん。



その日を最後にわしははるまに会うのを止めた。



心配じゃから見ておったがの。


その道は進めんぞとか教えてやりたかったわい。


森でアリシア殿と会った所で見守るのを辞めた。


彼女ならはるまを導いてくれるじゃろう。



さて、わしは倉庫番の仕事に戻るかの。


何があっても最奥の倉庫は開けん。


とびきりの封印を施さねばの。



しかし、心配もある。


アリシア殿もはるまの名前を知っておるはずじゃが、あれは完全に忘れておるな。


言っておくかの?


いや、ええじゃろ。


わしらに守られ過ぎてもはるまの成長を妨げる。


はるまよ。


世界を知れ。


魔王様の悪を理解しておくれ。


きみの父が犯した罪も知っておくれ。


全てを自分の目で見て頭で理解しておくれ。



そして、マーリンよ。


この方法しか取れんかった父を許せとは言わぬ。


だが、この父の代わりにはるまを守ってやっておくれ。


この父以上の答えで、魔王様の望みを叶えてやっておくれ。

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