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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第一部 第三章 覚悟

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第26話 ナルとシル

今日、私は継承の儀を行いナルビアと言う聖名を授かった。


亡くなった聖女や追放された聖女の力は、

他の聖女に宿り、継承の時を待つ。


聖女候補だった私は、その力を継承し今日聖女としての力を得た。


「これでそなたは聖女の一人となった」


「聖女ナルビア様、明日は国民へのお披露目となります。

今日はしっかりお身体を清め、ごゆるりとお過ごしくだされ」


「はい、シルにも話してあげないと」


「いけませぬぞ聖女様。明日のお披露目の議まで誰にも話してはなりません」


そう言いながら枢機卿が額を隠す布を丁寧に巻き直した。


「あ、そうでしたね。ごめんなさい」


「聖女様が、枢機卿ごときに謝罪召されぬな」


「あ、ごめんなさい。あっ」


急に偉い人になってしまったみたいだ。


シルに会いたい。

私は走り出して転んだ。


「聖女様!大丈夫でございますかな」


「大丈夫よ!じゃあね!」


「あ、聖女様杖を……」


「行ってしまわれた。あの方が聖女で本当に大丈夫なのか。先が思いやられるわ」



「シルちゃ~ん!」


シルを見つけた私は嬉しくて走り出した。


そしてまた転んだ。


「お姉ちゃん!

また転んでる~気を付けてよ!


頭のそれ何?」


「これはね。ちょっと怪我しちゃって!」


「また先生に、

聖女候補としてそのような振る舞いなりませぬぞ!

って怒られるよ?」


「私ね!今日ね!候補……あ、じゃなくて。そうね!候補としてね!」


「うん?何?今日のお姉ちゃんなんか変なの」



二人で朝食を食べに食堂に行く。


司祭や聖女候補、たくさんの人が居る。


「これとこれとあれと、それも!」


「も~お姉ちゃん、そんなに食べられるの~?」


「大丈夫だよ~三人前は余裕だからね!」


「またお腹壊しても知らないよ~?」


聖女は専用の食堂で食事する。


ここでの食事は今日が最後だ。


なんかしんみりするな~


配膳された食事を一気に口に入れていく。


「そんなに急いで食べなくても誰も取らないよ。

ほんとにおねえちゃんは食いしん坊なんだから」


シルが腹を抱えて笑っている。


「いつも思ってたけど、シルはなんで私のことおねえちゃんって呼ぶの?」


「ずっとお姉ちゃんが欲しかったんだ。


聖女候補としてここに来た時からいろんなこと教えてくれて、

お姉ちゃんだって思って嬉しかったの。


でも世話が焼けるしおっちょこちょいだし、妹みたいに感じてるけどね」


シルは意地悪な顔で笑った。


そう、シルはいつも私を見てくれてる。


私の後を追いかけてくるのにいつも失敗する私を支えてくれる。


賢いし、本当はこの子の方が聖女にふさわしいって思う。



「いたたた」


急いで食べたから、お腹が痛い。


「も~お姉ちゃんはやっぱり世話のやける妹だよ!」


シルの屈託のない笑顔に、私もいつも笑顔になれる。



私は大切な用事を思い出して立ち上がる。

「あ、そうだった。

今日は枢機卿と一緒にお客様に会うんだった!」


「あ、お姉ちゃん!これ!

あ~言っちゃった。本当に忘れ物多いな~お姉ちゃんは」



枢機卿の部屋の前で息を整え、コンコンコンとノックをする。


「入りなさい。遅かったね」


「はい!すみません」


「お客様はまだ来られていないから座っていなさい。

気難しい方だから失礼の無いようにね」



しばらくすると二人のお供を引き連れ女性が現れた。


「お久しぶりです。アリシア様」

枢機卿が深々とお辞儀する。


私も深くお辞儀する。


「こちらは明日から新しい聖女となるナルビアです」


「ナルビアと申します!よろしくお願いします!」


私は少し驚いた。


明日まで誰にも言ってはいけないはずなのに、それほど重要な人物なんだろうか?


「明日からですので、ご内密にお願いしますね」


「聖女が誰かなんてね。言う相手が居ないよ」


枢機卿に対してそれほど敬意を払っていない。

高位の方なんだろうか?


雰囲気はあるけど私にはわからない。


「んで、あんたたちの聖女様が特別なのはわかるんだけどさ。

おいたが過ぎるでしょ?」


「はい、それについては申し訳ありません。

この子ならあのようなことは決して起こらないと…」


「起こってもらっちゃ困るのよ。

私達だって戦争したいわけじゃないわけ。

でもあんなことされちゃ力を振るわないわけにいかないでしょ?」


アリシアさんがこちらをまじまじと見つめる。


「あんた、人を傷付けるようなことするんじゃないよ」


私は聖女になるんだ。

人を癒す存在だ。


「もちろんです!聖女はそのようなことは致しません!」


アリシアさんは鼻で笑った。


「それ、忘れんじゃないわよ」


この人は聖女にどんなイメージを持ってるんだろう。


聖女を馬鹿にしてるんだろうか?


「んじゃ今日は行くわね。

ほんとに頼むからね。

私に戦争させんじゃないわよ」


そう言うとアリシアさんは部屋を出て行った。



枢機卿が頭を抱えている。


「あの~あの方は」


「ん?ああ、あの方はね。魔王軍の外交官だよ」


「魔王?あの?神聖なるトゥルールが魔王とお付き合いを?」


「そうだよ。公式には言っていないがね」


「あんなことって、前の聖女様は何かなさったのですか?」


「ん、ああ。言いたくないな」


枢機卿が言いたくなくなるようなことをしたことだけはわかった。


これ以上聞くのはやめておこう。


「言いたくないがそのせいで12の聖女の一人がいなくなった。

12人の聖女がまた減らないことを祈るが……」



今日やることが終わったのでまたシルに会いに来た。


庭に座るシルの横に寝転ぶ。


聖女になればこんなことも出来ないのかな~少し寂しい。


「ずっとこんな風にシルとだらだらしていたいな」


シルが笑いながら言う。

「何それ」


「お腹すいたな~」


「まだ早いよ~早めに食堂行く?」


「そうね~行こっか!」


立ち上がるが、立ち眩み?


頭がぐるぐる回る。


意識が遠くなる感覚が…


ドサッ!



なに?


なんだろう?


意識だけがふわふわしてる。


なんか吸い込まれる感覚がした。


なんだろうこの空間は………




お姉ちゃんが倒れた!


どうしよう。


周りに助けを求める。


どうしたんだろう。


たくさんの人が集まってきて騒ぎになる。


運ばれていくお姉ちゃんを追いかけた。



「なぜ…こんなことに…」


「呪い…だとしたら…」


部屋に入れてもらえず、声が途切れ途切れしか聞こえない。


「明日には…聖女…中止…」


長い長い時間待った。


誰も出てこない。



そのうち声がしなくなった。


どうしたらいいんだろう。


私は一人で泣いていた。



裏口から四人の司祭が出てきた。


四人で大きな袋を抱えている。


なんだか嫌な予感がして私は追いかけた。



神殿の外に出て街を出た。


街からどんどん離れていく。


崖の上に司祭が四人、崖から袋を投げ込む。


その瞬間袋から人の手が見えた。


衝撃が走った。


司祭が去って行ったあと私は夢中で崖を駆け下りた。


あちこちで身体を擦り付け血がにじむ。


それでも走った。


袋を見つけ駆け寄る。



恐る恐る開けるとナルの顔が出てきた。


「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」


私は泣きながら呼び続けた。



もう神殿には戻れない。


お姉ちゃんを捨てた。それは殺したのと同義だ。


そんなことをする神殿に戻ってどうする。



私はお姉ちゃんを連れて隣国へ逃げた。

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