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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第一部 第三章 覚悟

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第22話 ゆうなと回廊

「しおりんがあっちに来てくれたらいろんなことわかりそうだね」


「はるま君が一年もいたのにわからなかったことがね」


「お姉ちゃんのはずのゆうなちゃんが来てもわからなかったことがね」


嫌味を言いながらお互い顔を見合わせて、

「プフフッ」

噴き出して笑った。


「じゃぁまたあとでね。お休み」



ママが帰ってきて話は中断された。


ママには天狗が見えていなかった。


30センチの天狗は可愛いけど、やっぱり変な存在みたいだ。


今天狗は私たちの間に寝ている。


寝るんだ。この天狗。



起きたら、はるま君が先に起きて、

シンシアちゃんと話してた。


この時間差もしおりんに報告しよう。


私の方が少し寝坊助なだけかも。



「お姉ちゃんが連れてきてから?一週間ぐらい寝てたんじゃないか?もっとかも」


「やっぱりそうなんだ。二回分ぐらい寝てたってことだ」


「俺ってさ、昨日の夜寝て今日の朝起きたよね?いつも通りだよね?」


「あたりまえだろ?何言ってんだ?」



「アリシアちゃ~ん!」

アーサーさんが部屋に飛び込んできた。


今日は気配を消していないのか、すぐに気が付いた。


シルが慌ててスカートの端をつまみ、

「アーサー王子!ごきげんよう」

嬉しそうに頭を下げる。


シルは最近アーサーさんになついている。


確かにイケメンと言えなくもないが、

胡散臭いアーサーにシルが惹かれるのは少し心配だ。


「シルちゃ~ん。元気そうで嬉しいよ!」


「王子もお元気そうで何よりです」


最初こそ全然口も開かなかったシルが、

普通に会話出来るようになっただけでもアーサーグッジョブ!


だいぶ気を許すようになってくれたんだろう。

当初のおどおどした感じが全然無くなってる。



「ねえちゃんいないぞ」

シンシアちゃんが答える。


「今日もか~最近全然戻ってこないね~。

相談事もあるんだけどね~」


「相談ってなんだ?」


アーサーさんは深刻な感じで口を開いた。

「君たちになら良いか。誰にも言わないでくれよ?」


執事さんが口をはさむ。

「王子!」


珍しく深刻なアーサーさんにみんな真剣な顔で答える。

「わかった」


「実はね…父さんを殺そうかと思ってる」

びっくりして、髪の毛が飛び上がった気がする。


執事さんは呆れて頭を抱えている。


はるま君が声を上げる。

「国王を?」


「そういうことさ。現状魔王との関係を好転させるためには国王を殺すしかない」


父親を殺す。

私には理解出来ない。


でも…パパが言ってたことを思い出した。


私が、

「友達がね。

パパのこと嫌いなんだって、

家族のことは大切にしないといけないのにね」

って言った時だ。


「うちは家族仲良しだからこのままずっと仲良しでいようね。


でもね。

父親にひどいことされて父親が嫌いな人。

母親が守ってくれなくて母親と一緒にいたくない人。

いろんな人がいることを理解出来るゆうなちゃんでいて欲しいな」


パパの言葉、アーサーさんもそうなのかな。


父親を殺したいと思うほど、

ひどいことをされたんだろうか。



シンシアちゃんがジュースを飲みながら、

「それで?相談ってなんだ?」


アーサーさんがさらに深刻な顔つきになって言う。

「ただ、今殺しても僕は国王になれない」


「そのために、早急に皇太子の座につかないといけない」


皇太子、次期国王候補の王子ってことだな。


皇太子に捨てられた悪徳令嬢が転生して成り上がるアニメで見たことある。


アニメでは皇太子が失脚して、悪徳令嬢が婚約した第二皇子が皇太子になってた。


アーサーさんはそういう皇太子交代を目指してるわけだ。


「今の皇太子を失脚させたいってこと?」

と私が聞くと、アーサーさんはわかってるね~って顔でニヤリとした。


「そういうことさ~。

で、そのあたりの相談をしようと思っててね」


「アリシアちゃんに会ったら、早めに僕に会うよう言っておいてくれよ~」



それから数日が経ち、アリシアさんが帰ってきた。


肩には賢者さんが座ってる。


アリシアさんがアーサーと話してる間に賢者と少しお話をした。


「あっちとこっちの時間の感覚は答えてくれる?」


賢者が立ち上がって答える。

「いいのよ。

どちらの世界でも時間はしっかり流れてるけど同じ時は刻んでいないのよ」


「それはわかるよ。こっちで1日過ごしたら向こうで1時間経ってる」


「それがまず勘違いなのね。

寝てる間にこっちに来てるんじゃないのよ」


「え?でも寝たらこっちにきてこっちで寝たら戻って起きて……」


「簡単に言うと、移動は回廊を経由するのよ。

寝る瞬間に回廊の入り口が開くのよ。

起きた瞬間に回廊の出口が開くのよ」


既に頭がこんがらがってきた。


はるま君が答える。

「寝る時に回廊に入れる、たまたま開いた方に出るってこと?」


はるま君がついていけてる?

私は全然ついていけないのに、ちょっとへこむ。


「そうね。回廊に時間は流れていないのよ。

だから時間軸は関係ないのよ」


「こっちで寝てもすぐ向こうに戻らないのはなんで?」


「それは単純に時間の流れが違うからなのよ。


こちらで寝ても向こうの出口が開かないから、

そのままこちらの出口から戻ってくるのよ。


次の日も同じなら同じように戻ってくるのよ。


十日目に向こうの出口が開けば、

その時初めて向こうへ出るのよ」


精神世界に来れなかった時は現実の出口が先に開いたからってことか。


「その回廊は誰でも入れるの?」


「入れないのよ。

あんたたちが入れる理由は聞くんじゃないのよ」



賢者との話が一段落したころ、

隣の部屋から何やら大きな声が聞こえてきた。


アリシアさんがドアを開け勢いよく戻ってきた。


その後ろでアーサーさんがおたおたしている。


「この国を離れるよ!」


アーサーさんが困ったように言う。

「アリシアちゃ~ん!」


シンシアちゃんが首をかしげる。

「どうして?」


「この国は跡形もなく滅ぶよ」

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