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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第一部 第一章 魂の境界

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第13話 はるまとゆうな

ナルを見つめながら、父さんとの共通点を思い出していた。


父さんへの糸口が見つかった。



賢者を探す間、やることがあるとアリシアさんは飛び出していった。

「私はしばらく戻らないからここでゆっくりしてな」


シンシアがシルに本を読んでもらっていた。

なんだか双子の姉妹みたいに見える。



俺はやることがないので、頭の中を整理しようと思った。


父さんだけが特別だと思っていた不思議な現象。


それと同じ状況にいる少女の存在。


でも、どうにも整理が付かない。


やっぱりまだまだピースが足りない。



今日は早めに寝ようと布団に入った。


ここのベッドはとにかくでかい。


俺のサイズなら10人は寝られるか。


とにかく落ち着かない。


そろそろ現実に戻る時期だ。


父さんの顔が見たい。


母さんにも…ゆうなちゃんにも…


会いたい…


意識が遠くなっていく。



目を覚ますと、見慣れた天井だった。


見慣れてはいるが、普段通りという感覚はない。


もう俺の中ではあちらで起きる感覚の方が普通になっていた。


たまにこちらで起きるって感じだ。



疲れた身体を無理やり起こし、立ち上がる。


この疲れには少し慣れてきた。



「ぎゃー痛い!痛い!」

足元で姉のゆうなが叫び声をあげる。


またやってしまった。

「ごめんごめん」


ゆうなちゃんを踏みつけて足をすぐに退ける。


ふらふらと歩きながらリビングに行く。



あいかわらずパンがきつい。


疲れ切った身体には水分が必要だ。


牛乳を一気に流し込み、スープをすする。


「うめぇ~」

やっぱり食事はこちらの方が数倍うまい。



「ママ~はるま君が踏む~」

ゆうなが遅れてリビングに入ってくる。


「も~ごめんって~」

半年経っても全然変わらないこの日常が胸にしみる。



「時間割はちゃんとした?忘れ物しないでよ」

母さんが言うがゆうなちゃんは動画を見ていて聞いちゃいない。


「俺は大丈夫だよ。ゆうなちゃんは知らないけど」


「ゆうなちゃん聞いてるの?」


「だいじょうぶ~」

絶対聞いてない。


適当に返事してるだけだ。



「はるま君はほんとしっかりしてきたね。パパも喜ぶわよ」


ゆうなちゃんは、こういうのにだけは反応する。

「私は~?」


「ゆうなちゃんも成長してきてますよ。でも忘れ物はなくならないけどね」


「気を付けても忘れちゃうんだな~これが」


「ほんっとにもう」

母さんも呆れて笑ってる。



朝からだらだら動画を見るゆうなちゃんを尻目に

「行ってきま~す」

父さんに挨拶をして学校へ向かう。


ゆうなちゃんを待っていると遅刻する。



最近は同級生の存在がうっとうしい。

「おい、はるま~」

はい来た。


「あ?」

振り返るとそこにはちょっと悪ぶった同級生3人。


ちび、でぶ、まぬけ。


典型的なモブ敵役だ。



「なんだよ。その目つき。喧嘩売ってんのか?」


お前らに喧嘩売ってるほど俺の人生は暇じゃない。

恐竜の教えで成長した俺は、父さんの暴力はいけないって教えをしっかり守っている。


同級生が殴りかかる。


肉体は成長していない。


でも、死に物狂いの戦いを経験してきた。

正直、同級生の拳なんかで動じない。


殴られてもたじろぎもせず、睨みつける俺に同級生は明らかに萎縮している。


「やめなさい!」

振り返るとゆうなちゃんが走ってくる。


そのまま飛び蹴り、モブ敵は派手に転んで泣き出すが、

ゆうなちゃんは馬乗りになって平手打ちを叩き込む。


「ゆうなちゃん、やめて! やめて!」

ゆうなちゃんの友達のしおりんが止めに入る。

俺も一緒に止め、やっとの思いで引き剥がす。


「次に見つけたら、ぶっ飛ばしてやる!」

俺の姉はこんなに狂暴だったか?


「ゆうなちゃん! 冷静に! そんなこと言っちゃダメ!」

良い友達だ。彼女のような人がなんでこんな狂暴な奴と友達なんだ。


「あんたがやり返さないからでしょうが!」

なんで俺が怒られるんだ!


父さんの教えがあんだろうが、恐竜だって…

その話は出来ない。

「……別に」

ひとことだけつぶやいてその場を去った。



教室に入りランドセルをおろす。


荷物を出しながら、

もしかして今日もゆうなちゃんは忘れ物をしてるんじゃないだろうか。


と思ったが……まさかな。



さっきの同級生がまた絡んでくる。


「こけた時にキーホルダー壊れた!」


「お前も俺のこと殴っただろ」


「お前のねえちゃんのエイガクのキーホルダー寄越せ!」


あ?ゆうなちゃんの大切なもの寄越せって言ってんのか?



ゆうなちゃんが学校行きたくないとか言い出した時、

父さんが二人でデートしようと遊びに誘ったんだ。


その時にクレーンゲームで取った思い出の品だ。


ただの好きなアニメのキーホルダーじゃない。


大金使って二人で苦労して取って、あれをお守りだって言ってた。


お守り持って頑張るって、学校も行けるようになったんだ。


お前なんかが欲しがって良いもんじゃねーんだよ。



「なんでお前にやらなきゃいけないんだよ!」


モブが食い下がる。

「やり返しもできねぇ弱虫が逆らうのか?」


やり返し出来ないわけじゃない。


恐竜の教えだ。


殺す気が無い相手を殴ったりしないだけだ。


いいかげんイラついてきた。


怒りを抑えずに全力でぶつける。

「俺は人を殴らね~だけでお前が怖いわけでもいいなりになってるわけでもね~ぞ」


その一言で何故かモブは、その場で座り込んだ。


そのあと泣いていたが、俺が理由なのか?


なんで?



あいかわらず学校の授業は退屈だが、

授業を受けているとそれを教えてくれた恐竜を思い出して胸が熱くなる。


だから嫌いな時間じゃなくなったんだ。



家に帰るとゆうなちゃんが父さんに話しかけている。


「パパ、パパ」

とつぶやくゆうなちゃん。


そうだゆうなちゃんだって俺と同じぐらい悲しいんだ。


わからないことだらけでも俺は戦えている。


何も知らず何も出来ないゆうなちゃんの方がつらいんじゃないかな。



父さんの身体を見ながら、同じ状態の少女に思いを馳せる。


どういう状態なんだろう。


彼女と父さんは関係あるんだろうか。


教えてよ父さん。


何がどうなってるんだ?


「父さん?」



あの日から、短くもならず、消えることのない線香


その線香だけが俺のことを見てるような気がした。

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