第115話 はるまと魔道大戦
「ママ~はるま君が世界を滅ぼしちゃ駄目って言う~」
ゆうなちゃんが世界を滅ぼすとか言うから、
止めてたら母さんにチクりだした。
「そりゃ駄目でしょ」
そりゃそうだろ。
「なんで良いと思ったんだよ」
「え~だって、あの奴隷の扱いは酷いでしょ?
なんでパパは滅ぼさなかったんだろ?
パパにも勝てなかったのかな?」
「そもそもあの世界の第六天の魔王は父さんじゃないからね?
同魂存在かもしれないけど、人格は違うんだから卑劣なやつかもしれないんだし」
「あそっか、パパとは違うのか」
「でも、俺も実際滅ぼすって選択肢が初めて生まれたよ」
「そんな危ないことしないでよ」
「危なくないなら良い?」
「良くはないだろうけど、危ないのはとにかく駄目」
「は~い、安全に滅ぼす方法考えよう」
「いやだから、止められれば良いんだから滅ぼすから離れよ?」
「そっか、そうだね」
「でもどうしようかなあ。
とりあえずしおりんに相談する?
しおりんならきっと滅ぼさないし」
「そりゃそうだ。しおりんは滅ぼさないだろうね。
そうだその前に天狗!天狗はあの世界ではなんなんの?」
天狗がドーナッツをかじりながら首をかしげる。
「天狗の同魂存在はなんて名前でどういう奴?ってこと」
「ああ、名前は何だったかな…巫女だな」
「巫女?天狗達は神に仕えないだろ?」
「キャラだからな、気にすんな」
「そのキャラとか作ってるのなんなの?」
「しおりんがお昼から来るって~
話するならまたおねえさんとこ行く?」
「ああそうだね。しおりんが来たら一緒に行こうか」
午前中はテレビを見て過ごした。
俺達がやったことの影響かもしれない話題がワイドショーでやってた。
孤児院に寄付してたお金持ちのお嬢様が、
その孤児院の運営に関わりだしたって話だった。
お嬢様が孤児院運営なんて出来るのかって言う人がいたり、
社会に出て生涯の幸せまで考えるなんて素晴らしいって言う人がいたり、
そんな単純な話じゃない。
戦後復興が進まなかった国が立ち直り始めた話もやってた。
世界が少しずつ変わっていく。
良いことも悪いこともきっとあるんだろうな。
俺達が何かをするべきなのか。
そもそも見るだけで良いのか。
でもきっと見るだけで何もしないなんて、俺達には出来ないよな。
おねえさんに行くねと連絡すると、
お昼ご飯を食べ終わったころに迎えの車がやってきた。
しおりんを迎えに行ってもらってから三六九機関に向かった。
「今日も訓練施設に行ってからおねえさんの所行こ~」
「そうだね。
しおりんは初めてだよね」
「凄い、こんな施設もあるんだね」
「私の見ててね~」
ゆうなちゃんがいつものように右人差し指を的に向ける。
「ドン!」
的に開く穴が前より小さくなった気がする。
表示された数字は十八万、前より強くなってる。
ゆうなちゃんがニヤニヤしながら俺にやるように言う。
俺もゆうなちゃんに教えてもらって訓練した。
両手を前に出して、五本の指をそれぞれ的に向けた。
「ズドドドドドドドドドン!」
指から次々にビームのように光が飛んだ。
表示された数字は十三万。
ゆうなちゃんを見るとニヤニヤしてる。
ムカつく。
なんでゆうなちゃんほどの威力が出ないんだろう。
俺は思いっきり地面を蹴り上げ、的に向かって飛んだ。
渾身の拳を叩きつける。
表示された数字は十六万、それでもゆうなちゃんに届かない。
数を打てるようになったから今は良しとしておくか。
「はるま君もすごいね~どれぐらい凄いのか私にはわからないけど」
俺はしおりんの言葉が少し励まそうとしてる気がして落ち込む。
「それじゃあ、お姉さんの部屋行こうか」
「訓練場はどうだった?」
「やっぱり私の方が強かった~」
「俺の方がいっぱい撃ったんだよ」
「二人で戦ったらアリシアさんとも戦えるかなあ」
戦いにはなると思う。
でも戦える土俵に上がったから、
絶対に勝てない確信が深まる。
ゾウとアリがゾウとキリギリスに変わっても大差ない。
「きっとまだまだ届かないよ」
「だよね」
「でも二人ともとても強くなったわよね」
おねえさんの言葉にゆうなちゃんのテンションが上がった。
「でしょ!でしょ!」
「私も戦えるようになりたいなあ」
「しおりんは戦う人のイメージじゃないなあ」
「最近物騒でしょ?
それで私の能力を開花させたいって話も少し前向きになりだしたんだよね。
もうちょっとで説得出来ると思うんだ」
「説得出来て能力を持っても、無茶しちゃ駄目よ?
無茶する子供は、ゆうなちゃんとはるま君で充分よ」
「私達無茶してるかなあ?」
「わかってないところが怖いのよ」
「俺はわかってるよ!」
「わかっててやってるからたち悪いのよ」
おねえさんのその言葉でみんな笑った。
「どっちもダメなんじゃん」
しばらくすると、まどかさんがやってきた。
「あれから大丈夫だった?」
「ええ、ありがとうございました。
なぜあんなことになったのかわからなくて」
「あの時って記憶はあるんだよね?」
「うたたね気味の頭に誰かが入ってきてるような感覚ですね」
「魔法や精霊はともかく、
人格がこっちに来るなんてどういうことなんだろう」
俺のその言葉に、天狗が反応した。
「チッ!同じことやる奴がいるだろう」
「パパ?」
「我等の知る限りでは奴一人だけだな」
「パパと同じ理の外の人になったってこと?」
「我等の理解を超えるがな…」
「おねえさんのこともそう言ってたよね」
「そうだ。どいつもこいつも」
天狗が苛立つのを見るのは珍しい。
「他の同魂存在の人も来るかもしれないってことだよね?」
「わかんねーな」
「あの女性もやばいけど…もっと強い話の通じない人もいるかもしれないよね」
「だったら本気でやばいね。軍隊でも止められない」
「あの女性との戦いのときってバハムートさんは出てこなかったよね。
なんでなの?」
「我は力を振るわぬようアリシア殿に強く言われているからな。
小娘の言うことを聞くのもしゃくではあるが、一応契約があるからな。
はるま殿の願いでアリシア殿の力を押さえるためと言っておったぞ。
我が出れば戦局は変わるであろうが我としてもイフリート殿やベヒーモス殿、
リヴァイアサン殿まで敵に回しては生きにくくてかなわんからな。
そうであろう?仲良く魔王殿の契約精霊であった時代は良かった。
あの頃は楽しかったなあ。そうであろう?イフリート殿?お主に言っておるのだぞ?
我らは仲良しであるからな?なあ?イフリート殿よ?なぜ何も言わん?
ベヒーモス殿?リヴァイアサン殿?何故無視をするのだ?
数少ない精霊王仲間ではないか」
「ああ、イフリート!バハムートさんとじっくり話したいんだったよね。
あっちに行って四柱でじっくり話すと良いよ!」
「な!主よ何を!」
「おお!そうであったかイフリート殿、じっくり話そうではないか。
ベヒーモス殿とリヴァイアサン殿もさあこちらに、どうしたのだ?早くこい。
三柱ともなぜそんなに口数が少ないのだ?」
「仲良くね~」
「人格が変わってもバハムートが敵にならないとわかっただけでも儲けものだね」
「その人格がアリシアさん以上の強者じゃなければじゃない?」
「アリシアさん以上の強者が敵になったら、バハムートが居なくても終わりだよ」
「そっか…」
「まどかさんがいつ変わるかわからないといつでも不安だな」
「私はどうすれば良いのでしょうか」
「本人が一番つらいよね」
「神の研究所の跡地に家を建てることにしたの。
あれだけの敷地があれば力が暴走しても爆発しても大丈夫そうだから」
「あの辺りなら俺達も駆けつけやすいしね」
「こっちでは最悪の場合でも、
ゆうなちゃんとはるま君に頼らなくても良いように頑張るわ。
ゆうなちゃんの魔力砲やはるま君の魔力を纏う技術で戦力強化を図ってる」
「強い人が増えるのは良いけど、怖くもあるね」
「もう抑え込めないわね。
警察や軍にも協力して、戦える状況を作らないと」
「なんか魔道大戦への序章って感じだなあ」
「この力を巡って戦争なんてパターンは本気で防がないとね」
「なんか怖いなあ」
「そういうゆうなちゃんが、今一番の戦力なんだけどね」




