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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第五章 渇愛

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第107話 ゆうなと違和感

「うわあ、おいしそう!」


夕食は獣王や宰相さん、みんなで食事を取ることとなった。


アダムとイブはずいぶん元気になった。


食欲も出てきたし、会話もどんどん出来るようになっている。


今も豪華な食事を前にテンションを上げている。


やっぱり病気みたいな物で、元々普通の人間だったんだ。


運ばれてきた食事はもっと野性的な感じかと思ったが、

高級レストランのフルコースって感じだった。


ライオンが小さな豆を舌の上に乗せて、

もぐもぐしてる所は少し笑える。


「なにこれ!すっごいおいしい!」


「本当、こんなおいしい料理は食べたことありませんわ」


「うんまい!」


宰相さんを見ると、

とても美味しそうに食べる姿が、やっぱりパパに似てる。


パパは食べることが大好きだった。


この人がパパの同魂存在なのだとしたら、

きっとこの人も私達のことを知ってるはず。


パパを封印することを願った一人のはずだ、でもこの人は何も言わない。


だから気を抜けない。

何か裏があるんじゃないかって…


「この国はどうであったかな?」


「とても素晴らしい、良い国でしたわ。


わたくし感激致しました」


「そうであろう。そうであろう」


獣王はご満悦って感じだったが、宰相さんは少し不服そうだった。


「ゆうなちゃんとはるま君はどう思ったかね?」


宰相さんの問いに私は即答出来なかったが、はるま君が答えた。


「何か…何か足りないような」


「だろうね」


「宰相さんも何か足りないと?」


「なんだ吾輩はそんなこと聞いていないぞ」


「言っていませんからね」


「ぐぬ、たまには教えてくれぬか」


「やろうとしたことは旨く行っていますよ。


獣王陛下にしては上出来です」


「ぐぬ、不満そうではないか」


普通の国なら不敬罪で首が飛びそうな言い方だ。


「いいえ、不満はありません。


しかしね。

そもそもこれじゃ奴隷の数は減らないんですよ」


「それは、そうですね。


私もそれは感じてました。


奴隷は同じスピードで増え続ける。


そして人攫いが犯罪奴隷に落ちるだけ、世界は変わらない」


「君達は世界を変える覚悟はあるかい?」


「…難しい質問ですね」


「変える方法はあるんですか?」


「そりゃいくらでもあるさ。


例えば奴隷商人を全員殺す。


子供を売る親も殺す。


攫って売るやつも殺す。


そのうち奴隷はいなくなるだろう?」


「それは!でもそんな!」


「そう、そんな!だろう?


世界は変えられる。でも変えられるのか?ってことだよ」


「別の方法だってあるんじゃなくって?」


「あるだろうね。きっとどこかには」


「制度を、法律を作るとか…」


「それも一つだね。


教育をする人々の意識を変える。


ただ、減りはするが無くなりはしないだろう。


だってそれをしないと生きていけない親がいる。


それを世界が必要としているのだから」


「それに途方もない労力がかかるし、見合うのかもわからない」


「そうだね。


それも理由の一つだ」


獣王が激しくテーブルを叩いた。


「それでは吾輩がしていたことはなんだというのだ!」


「救いですよ。


獣王陛下のやったことで救われたあの子達がいるでしょう。


それを無駄などとは、誰にも言わせない」


そうだ、無駄なんかじゃない。


根本的な解決にならなくても、それはあの子達にとっては正しいはずだ。


でも…


「でも…だろ?」


そう言いながら宰相さんは笑った。


なんだか心を読まれた気がした。


「答えなんて無い。だから出来ることをするしかない」


「そうか…


吾輩に出来ることをするなら、今はこれで良いのだな?」


おい!締めの肉を持て!


メインの魚料理、肉料理に続いて締めの肉?


獣王の前に運ばれてきたのは、骨に肉が付いたマンガ肉だった。


「私もそれ食べたい!」


反射的にそう叫んだ私を、みんなが驚いて見た。


「ガッハッハッハ!締めにこれを食うか!

汝は見込みがあるな!持ってまいれ!」


私は目の前に運ばれてきたマンガ肉に興奮してかぶりついた。



間食したらお腹が痛くなってきた。


「やっぱり食べすぎなんだよ」


「しかしあの肉がその小さな身体に…いやはや汝はただ物ではないぞ」


私はウサギの侍女さんに案内されて医務室に連れていかれた。


「このお薬を飲んで、しばらく横になってください」


胃薬のようなものを渡され飲んだ私は、少し横になる。


頭を使いお腹いっぱいの私はそのまま眠ってしまった。



それほどの時間は寝ていなかったと思う。


ふと目を覚ますと、話し声が聞こえた。


「ぐぬぬぬぬ!」


「静かにしないか。客人が来ているんだ。騒ぎにしたくない。」


私達がいるから騒ぎを起こしたくないってことかな?


「しかしこれは、ぬううううう!」


「これぐらいで良いか。


それじゃ次は…獣王国はどんな国だった?」


「獣王国は最低の国です!」


「買われた奴隷はどうしている?」


「買った奴隷はそれはむごい扱いを受け生き地獄です」


「よし、じゃあ行こうか」


「それにしてもこれは、痛いぞ。もっと他になんとかならなかったのか?」


獣王国は最低の国?何か隠してることがある?


さっきの獣王や宰相さんが嘘を言ってるようには見えなかった。


だけど今の話は…


でもなんか違和感のある話し方だった。


私は疑問を抱えながら医務室から出た。



医務室から少し歩くと、沢山の人がいる明かりのついた部屋があった。


覗くと、ボロボロの服をきた子供がたくさん質素な食事をしていた。


みんな元気がないし、父さん母さんと泣いている子もいる。


この子達は…


なんだろう。


頭がこんがらがってきた。


もしかしてこっちが本当の奴隷の姿?


あれ?昼間見たものは?


なんだ?


獣王も宰相も王女も嘘を付いてる?


いや、そんなわけない…と思いたい。


だって、あの王女の笑顔は本物だった…はずだ。


私はパニックになりながら食事をしていた部屋に戻った。



「そっか!それならもう少し奴隷を減らせるね!


あ!ゆうなちゃん、お腹は大丈夫?


ケーキあるよ!」


「大丈夫、ありがと」


悩んでいてもケーキは食べたい。


そう思って食べたけど、ケーキの味は覚えていない。


それから話した会話の内容も覚えていない。


それからしばらく話をして、私達は客室に戻った。



「ゆうなちゃん、やっぱりお腹の調子まだ悪い?」


「お腹は大丈夫なんだけど…あのね」


私は見たもの聞いたものを、そのままみんなに伝えた。


「そんな、そんなわけありませんわ!」


「俺も、あの人達が嘘を付いてるとは思えないな」


「でも、私は本当に…」


「ゆうなちゃんの言ってることは信じてるよ。


本当に見たし聞いたんだと思う。


でもその内容が何を示すのかはわからないってこと」


「聞いてみる?」


「聞いて信じられる?余計こじれるかも」


「そうかも…」


「どうなったら信じられるだろう」


「証拠をつかむ?」


「悪事の?悪事がないことの?」


「難しいね。これって決定打が無い可能性もあるし」


考えてもわからない。


「とりあえず様子を見るのが良いのかしら…」


「そうだね。嘘があるなら、ボロが出るかもしれないし…」


「それしかないね。今はそれしか…」


私達は、不安や疑問を抱えながらも、

何をして良いかわからず様子を見ることにした。


布団に入ってからも、ずっと悩み続けた。


まだこの国には私達が知らないことがたくさんあるのかもしれない。


そんなことを考えながら、不安の中で眠りについた。

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