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輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第五章 渇愛

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第106話 ゆうなと獣王国

「離せ!離せって言ってんだろうが~!」


「イフリート~!ゆうなちゃんを守れ!」


「心得た!」


私達は、城の前に降り立つなり捕らえられ、

ゴリラみたいな人や熊みたいな人達の怪力で押さえつけられて、

城の中まで連れてこられた。


「お前はこっちだ!」


はるま君と私達は引き離されて連行されそうになっている。


「危害を加える意図はないと言っているだろう!おとなしくしろ!」


「はるま君!おとなしくしよう!

この人達に戦う意思がないなら戦っちゃ駄目!

押しかけたのは私達なんだから!」


「わかった!お前ら、ゆうなちゃんに何かしたらただじゃおかないからな!」


私達は促されるままに、広い部屋に通された。


沢山のおやつやジュースが並んでいる。


「こちらでお待ちください。


こちらにあるものは自由にお召し上がりください。」


ウサギみたいな顔した人は、そう言いながら部屋を出て扉を閉めた。


「はるま君は大丈夫かな」


「これだけの待遇ですもの、敵意は無いのではなくて?」


「そうだよね…」


「心配は…してるのでしょうが…


あなたよく今それ食べれますわね」


「え?おいしいよ?」


「いや…まあ良いですわ。


私達も頂きましょう。


アダムとイブも食べておきなさい。


食べられない状況になるかもしれないものね」


アダムとイブも食べ始めた。



しばらく待つと扉が開き、ウサギの人が入ってきた。


「手違いがあり、申し訳ありません。


ゆうな様と言うのはどちらでしょうか?」


「私です。」


「では、ゆうな様だけ、こちらへご一緒頂きます。」


「わかりました。三人ともおとなしく待っててね。」


「大丈夫ですわ!アダムとイブは私にお任せあれ。」


「大丈夫、おとなしく、待つ」



私は案内され、玉座のある謁見の間って感じの場所に通された。


「はるま君!」


「ゆうなちゃん!大丈夫だった?」


「こっちは大丈夫だった!お菓子もおいしかったし」


「お菓子?まあいいや」



待っていると一人の馬の人が現れた。


他の人と違って凄く上品そうな豪華な服を着ていた。


少しだけ鼻につく感じがしたけど、不思議と嫌な感じはしなかった。


暖かそうというか優しそうというか、なんだろうこの感じ。


「すまなかったね。この国の民は人とは違い、少し乱暴な気質があってね」


「人とは違う?あんたたちは人じゃないってことか?」


え?馬の顔とかさっきもゴリラとか熊とかいたし、人じゃないでしょ?


そう思った瞬間、馬の顔の人が本当に楽しそうに笑った。


「これは失敬、君はやはり面白いね。


私達は人に見えているんだね。」


「え?だって言葉が通じてるし、

同じ言葉を話してるんだから、

むしろ外国の人達より俺に近いでしょ」


そうだ。


はるま君はそういう人間だった。


「もう少ししたら獣王陛下が来られる。


しばらく待ってくれ」


「人をこんな所へ無理やり連れてきたのに、なんだか偉そうだな」


馬の人の目付きが少し厳しく変わる。


「偉いんだよ。


この国は獣王国、今から来るのは獣王。


君達は例え他国の王であったとしても、

この国に入れば国王ではなく一人の外国の者だ。


逆に私が君の国に行けば立場は変わる。


それをはき違えると、痛い目を見るよ」


「この人の言う通りだよ。


今偉そうなのは、確実にはるま君の方だよ」


「そっか、ごめんなさい」


「大丈夫だよ。ちゃんとごめんなさいを言えて偉いね」


「あ…」


はるま君も何かに気が付いたみたいに顔が優しくなった。


「でも、必要以上に敬意を払う必要も無いから気楽にしてくれ。


これから来る国王は、君達の国の王ではない。


君達にとってはただのどこかの王様であり、ただの人だよ」


そう言うと馬の人は少し笑った。


「宰相閣下、獣王陛下のおなりにございます」


馬の人が跪くのに合わせて私達も跪いた。


はるま君も察したのか同じように振舞おうと見てまねている。


「表を上げよ」


こういう時は何回か言われてからだったっけ?


そう思っていると馬の人が立ち上がった。


はるま君も立ち上がった。


「あれ?え?」


ゆうなちゃん、立ってかまわないよ。


私は立ち上がると獣王を見た。


聞いていた通りライオンの顔の人だった。


「この国には何用で来たのだ?」


獣王の問いかけに私は少し迷ったが、

考えてもわからないので正直に行こうと思った。


「孤児や奴隷を救いたいと思っています。


獣王国が奴隷を大量に買っていると聞き、

どういう扱いをされているのか見に来ました」


「ほお、奴隷はゲームの駒にして殺している」


「な!?」


「と言ったらどうする?」


私達は答えられない。


もしそうなら戦うのか?

奴隷解放のために戦争をする覚悟はあるのか?

今ここで宣戦布告する覚悟も…


「どうするのだと聞いているのだ!」


獣王は大きな声と共にけたたましい雄叫びを上げた。


その風圧だけで吹き飛ばされそうだ。


機嫌を損ねてはいけない。


「陛下…」


馬の人が口を挟むと同時に再度雄叫びを上げて威嚇する獣王。


「陛下!」


馬の人が怒りをあらわに怒鳴り声を上げる。


「はい!」


獣王が裏返った声で答える。


「茶番はそのぐらいにしておきましょう。


彼らに敵対するなと言ったはずです」


なんだか獣王と宰相のパワーバランスがおかしい気がする。


なんだ?ライオンが馬を怖がる?


「はい、いや。


わかった。


吾輩に汝等と敵対する意図はない、孤児も奴隷も助けるべき存在だ。


共に孤児や奴隷が生まれない世界を作るためなら協力しあおうぞ」


獣王に裏表は無いように思った。


本当に孤児や奴隷を救いたいと思っている。


馬の人も悪い人には見えないけど、

なんだか底知れない怖さはこちらの方が強かった。


「とにかく、しばらく滞在し今吾輩らが何をしようとしているか、

買った奴隷がどうなっているか見て回るがよかろう。


我が二人の姫を案内役にするゆえ、ゆっくりしていくがよかろう」


「ありがとうございます」


私とはるま君は深々と頭を下げた。



「凄い国ですわ!私の理想がここに詰まっている!」


姉姫に案内されて私達は奴隷が暮らす施設を見て回った。


城の中の一画に各自個室も与えられ、とても良い環境で暮らしているようだった。


仕事が出来る物は仕事も与えられ、小さな子には学校のような時間もあった。


「本当に良い場所だね」


私がそう言うと姉姫はとても嬉しそうに説明してくれた。


「ありがとうございます。


宰相閣下の考えですが、お父様の自慢の国策です」


「やっぱり宰相さんが凄い人なの?」


「そうですね。


あの方が宰相であれば獣王は正直誰でもかまいません」


「それは…お父さん可哀相なんじゃ」


「お父様がそう言っておられますの、だからうちに男児は、跡取りは必要ないと」


「そこまで言わせるほど凄い人なんだね」


「だから、お父様も頭が上がりませんのよ」


「だからか、なんだか立場が逆転して見えたから」


「普通の国ではおかしなことなのでしょうね。


でも獣王国は実力主義の世界、それが通るのです」


「だからこんな良い国になるのかな」


「俺は、ちょっとだけ宰相さんが強すぎるのが怖いな。


裏表は無いんだろうけど…あの人にはなんだか底知れぬ不気味な感じがする」


私は笑ってしまった。


「なんで笑うのさ」


「いやそれ裏表あるって言ってるようなもんでしょ」


「いや、そんなこと……いやそうだね。

でもなんて言うか、なんか気になるって言うか」


「まあその気持ちはわかるよ。何かありそうな人ではあるよね」


「奴隷を買うペースとか選び方に決まりはあるの?」


「特に決まってはいませんね。


ただ犯罪奴隷は買いませんし、優先されるのは攫われた疑いがある子だと思います。」


「攫われた子もここに?」


「一時的にはおりますが、攫われたことが確定すれば親元に返します。


宰相閣下は、攫った者は確実に捕らえます。


捕らえて、攫った子の身元をはっきりさせます」


私は聞くのが怖かったが、聞いてみた。


「攫った人は?」


「聞きたいですか?」


「…」


姉姫は笑った。


「殺したりはしませんよ。犯罪奴隷として売ります。


別の子を買う資金になりますから、というのが宰相閣下の方針です」


いや、それも怖いんですけど…


「じゃあ、ここにいるのは親に売られた子がほとんどってことね?


そういう子は帰したりすることはないの?」


「ありえません」


その言葉には少し怒りが感じられた。


「子を売るような親に子を返してどうなると言うのでしょうか」


「それはそうだね…」


「みなさま~!おやつの時間ですよ~!」


そう言いながら沢山のおやつを持った侍女を従えて妹姫が現れた。


「みなさまもどうぞ、一緒に召し上がりましょう」


買った奴隷と共に、姫がおやつを食べる。


それだけでこの国の素晴らしさが語れる気がした。

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