↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第五章 渇愛

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
105/121

第105話 はるまと挑む覚悟

イフリートの拳が、俺に直撃する。


ガードした俺の腕から血が噴き出した。


「イフリートさん辞めて!」


俺は水を纏わせた剣で斬りかかった。


掻い潜ったイフリートの、

かわした左拳の直後に右の裏拳が完全に決まった。


俺は数十メートル吹っ飛んだだろうか。


「くそったれー!」


若干やけくそ気味に、俺は剣を振り上げる。


イフリートさんがその剣を掴もうとしたその瞬間に剣を離す。

剣はするりと落ち、空振りしたイフリートは体制を崩した。


このタイミングを待っていたとばかりに、

俺は渾身の拳をイフリートの顔面にぶち込んだ。


「ふんっ」


イフリートには全く通用せず、

鼻息を鳴らして俺へ頭突きを食らわせた。


地面にたたきつけられた俺の、足を掴むと持ち上げる。


「こんなものか?」


俺は反抗する力も残っておらず、何も言わずぶら下がる。


「イフリートさん、もう良いよ。下ろしてあげて」


イフリートさんは何も言わずに、

俺を抱きかかえて、ゆっくりと地面へ下した。


「なんて無茶をするの!

あんな魔神に勝てるわけがないでしょう!


まったく看病のし甲斐の無い男だこと」


「勝てるわけないじゃダメなんだ!」


俺はあの女性に何も出来なかった。


ヘレンをかばったからとかじゃない。


最初から勝てないと悟り、

助けてもらう前提で勝利を放棄した。


何が父さんを追いかけないだ。


俺は俺の人生を歩く資格すらない。


自分の足で歩くと言いながら、何も始めてすらいなかった。


「イフリートは、あの女性に勝つイメージ出来る?」


「ふむ、無理であろうな」


「俺があれに勝てるようになると思う?」


「ふむ、死ぬほどの鍛錬があれば、いずれ届くやもしれぬな」


「死ぬほど頑張ればってこと?」


「違う。


言葉通り死ぬほどの鍛錬だ」


「だから、死ぬほど頑張れってことじゃないの?」


「違うんじゃない?生きるか死ぬかの鍛錬、

失敗すれば死ぬ試練を乗り越え続ければってことじゃない?」


「そうだ。


己の命をチップに、鍛錬に全額をかける。


その先の頂きにあれはおる」


「それは…無理ってことじゃ」


「魔王軍の者はみなそれを乗り越えて、人智を超える力を手に入れた」


「彼女も魔王軍の人達と同じってこと?」


「これは奇なことを。


アリシア殿が魔王の右腕であることは、主も知っておろう?」


「へ?なんて?


アリシアさん?」


「あれがアリシアさんってこと?」


「あれはどこからどう見てもアリシア殿であろう?」


「どこをどう見たらアリシアさんなんだよ!」


「そっか、イフリートさんは魂を見てるんだ。


アリシアさんの同魂存在ってことね」


「それが分かったところで、人格は違うから話は出来そうにないね。


でもそうか、あれがアリシアさんならあの強烈な力も理解出来る。


俺達はまだ挑む権利の無い相手に、喧嘩を吹っ掛けられてるんだ。」


「でも、きっとまた襲ってくるよね。


あのままの強さならゆうなちゃんがいれば撃退は出来る。


でも戦い方を変えてくる可能性はあるね。


アリシアさんが力を一つ封じられたぐらいで弱くなるとは思えない」


「そもそも、まだ挑む権利が無いって話じゃないな。


俺が何もせずに、イフリートやシグルズの剣技で調子に乗ってる間に、

準備する時間を浪費してしまっただけだ」


「とりあえず獣王国には進みつつ、日々鍛錬だね」


「そうだね。まずはイフリートに一発食らわせる!」


イフリートが地面が揺れるほど笑う。


「主に消し炭にされる日が楽しみだ」


みんな、つられて笑った。



俺達は新しい馬車を調達するために、宿屋に紹介してもらった厩舎に来た。


「馬車を引く馬は…」


なんだか貧弱そうな馬しかいない。


「獣王国まで行きたいのだけど、耐えられる馬はいるかしら?」


「獣、獣王国ですか!それは…ここにいるものでは無理かもしれません」


「まあ!まともな馬もいないの?」


「良い馬はやはり人気でして、すぐ売れてしまうんですよ」


「どうにか手に入れる方法はなくって?」


「モンスターに引かせる方法もありますが…

それでも獣王国まで安全に耐えられるモンスターとなりますと、

狩れる人間が限られております。」


「高くつくってこと?お金はそれなりにあるんだけど…」


「いいえ、狩れる人間がいないので市場には出回りません。」


「そっか。引けるモンスターを連れてきたら馬車はあるってことだね?」


「それはもちろんございます!

お嬢様が快適に旅をされるのでしたら、こちらの最新型などいかがでしょうか。


車輪にスプリングが付いておりまして乗り心地はお墨付きです。」


「いや、その説明は後でまた買う時に聞くよ。


今聞いても忘れそうだしね」


「はい!ご購入の際は是非とも当店へ」


主人へ礼を言い、俺達は厩舎を後にした。


「困ったなあ。


どうやって行こう」


「乗りたい馬車が見つからないのか?」


イフリートが不思議そうに尋ねる。


「旅に堪えられそうな馬車がね」


「主には旅のこだわりがあるのだな」


「いや、こだわってはいないよ」


「そうなのか?馬車は譲れぬのであろう?」


俺がやることに誰かが不思議そうに聞くときは、

俺が何かを見落としてる場合が多い。


「なんか…デジャブな気がする。


このやりとりって嫌な予感がするんだけど、なんか方法がある?」


「我やベヒーモスに乗り飛べと命じればよかろう?」


「あ…」


やっぱりだ。


いや、それより…


「修羅の世界でゆうなちゃんを探す時も…

樽の世界でゆうなちゃんを探す時も…


言うタイミングいっぱいあったよね?」


イフリートもこのパターンに覚えがあるのか、しまったという顔をした。


「それは…主が成したいように成すのがよいかと思ってだな…」


「ベヒーモスさんに乗れるの?イフリートさんに乗ると熱そうだね!」


「まあいいや。


でも精霊王は俺達が何も知らないと思って、気になったらなんでも言うこと!」


イフリートとベヒーモスは同時に返事した。


「うむ」


「我が炎を操れることは知っているな?」


「知ってるよ!見ればわかることは大丈夫だよ」


「なら我が自らのサイズを自由に変えられることもいらぬな。


ではいくとしよう」


「いや、それはいる!

なに?サイズを変えられるの?」


「さよう。豆粒サイズから山よりもでかく」


そう言いながらイフリートは豆粒大の大きさに小さくなり、

ベヒーモスが山ほどの大きさになった。


「かわいい~~!イフリートさん!これ欲しい!」


「ベヒーモスと交代するか?」


「そんな簡単に…

忠誠心みたいな物は無いのかよ。


それから可愛いか?小さなおっさんじゃないか」


そう言えば、

やかんのお湯は何故熱くなるのかとか、

テレビは何故リモコンで着くのかとか、

そういう質問をするたびに父さんが、小さなおっさんが入ってるんだよって冗談言ってたな。


俺はあれが面白くてたまらなくて聞くたびに笑ってた。


「とにかく、これで移動手段は確保出来たね」



「なんかプテラノドンで飛んだ時のこと思い出すね~!」


「恐竜に乗れますの?」


「そうだよ~!はるま君落ちそうになって泣いてたね~!」


「泣いてないよ!」


飛ぶのはベヒーモスよりイフリートの方が早いらしくて、

俺達は全員イフリートに乗った。


前から気がついてはいたけど、

やっぱりイフリートが纏ってる炎は敵意の無い相手には熱くなかった。


「爽快ですわね!空を飛ぶって!悩みとか吹き飛ぶ気がしますわ~!」


ヘレンがとても元気になって良かった。


俺の怪我が自分のせいだと、落ち込ませてしまって申し訳ないと思ってたから。


「イフリートさん!全力で飛んで!」


「ゆうなちゃん!またそういう軽率なことを!あが!」


息が出来ない!前が見えない!


とんでもない風圧に気を失いそうになる。


そう思った瞬間、今度は急反転でイフリートの頭に激突する。


「すまない。アダムとイブを落とした。」


見ると本当に落ちている。


イフリートが急降下する。


イフリートの背中に落ちたアダムとイブは震えておびえている。


「よく考えればこの二人も、俺達についてきたおかげでとんでもない数日を過ごしてるな」


「ゆうなちゃんの指示に従う時は、加減とか考えてくれよ~」


「すまない、考えて加減したつもりだった。

しかし、アダムとイブのことを考慮に入れていなかった」


「本気で飛んだらどんな速度になるんだ」


やっぱりイフリートの強さは底知れない。


でも、それを凌駕したあの女性はどれほどなんだ。


俺は考えるだけで、背筋がぞっとした。



そんなことを考えていると、大きな城が見えてきた。


「おっきいお城だね~!」


今まで沢山の世界を旅して豪華な城も見てきたが、あれはでかいなんて物じゃない。


スケールの大きさがうかがえる。


あそこにいるのは話が通じる人なのか、それとも…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。