↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻回廊369  作者: ヴァネット卿
第二部 第五章 渇愛

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
103/121

第103話 はるまと自らの歩む道

「俺がお前を売っても良いってことだよな?ああ?」


奴隷商人の首ギリギリをかすむように突いた剣が後ろの壁に突き刺さる。


「ヒ、ヒー!警備の者はおらんのか!」


三人の警備兵が部屋に入ってくるが、その場に立ち尽くす。


「そのままじっとしてろ。


下手なことしたら焼き尽くすぞ!」


「それで?ゆうなちゃんとヘレンをどこに売り飛ばすって?」


「す、すまない。冗談だ。冗談」


俺は剣を引きながらも、にらみ続けた。


「じゃー俺がお前の耳をそぎ落としても冗談で許してくれるか?」


「そ、それは許されない!」


再度剣を突き立てる。


「ほお、誰が許さない?俺か?奴隷を買う変態貴族か?お前か?」


「い、いや。もう冗談はやめておく」


「そうだな。お互い。その手の冗談は辞めておこう。


今後俺達以外にもその手の冗談は辞めると約束してくれるか?」


「わ、わかった。約束する。」


「じゃー後は、この二人の質問に答えてやってくれ」


「わ、わかった。なんでも答える」


「警備兵のみなさんも仕事に戻って良いですよ」


俺は笑顔でそう言うと、警備兵はその場にへたり込んだ。


「ヘレン、大丈夫?」


差し出した俺の手を見ると、

ヘレンは鼻をふんと鳴らすと手を取った。


「思ったよりは、強そうじゃない」


「そうでしょ?イフリートさん強そうでしょ?」


「俺じゃなくて?」


「さて、じゃー質問ね。


奴隷を売るのはどういう人なの?」


「そうだね。


金が無い親が子を売る。


悪党どもが攫った子を売る。


犯罪者が奴隷として売られるのもあるね。」


「攫った子を買うのは駄目じゃない?」


「しかし、攫われたかがわからんのだよ」


「儲かるから黙認してるんじゃなくて?」


「まあ、その気持ちがゼロとは言えないね。」


「それは言っても仕方ないかも。


俺達の世界でも、金属が売れるからってマンホール売るやつがいるらしい。


マンホールなんて盗んだことわかりそうな物なのに買い取る業者もいるみたいだしね」


「そっか。わからないならそこはグレーゾーンなのか」


「そうだね。


親が売ったのに、子が攫われたって言ったら解放なんて出来ないだろう?」


「それはそうかも…」


「売られた奴隷が必ずしも不幸になるわけでもないしね」


「トゥルールの市長もそう言ってたね。」


「お金が無くて飢える世界で、

お金が手に入って奴隷という仕事に就く感覚だよね。」


「だからきっと、

奴隷制度自体が全て悪いとも言えないんだよ」


「そうね。


売られる先は獣王国が多いって聞いたけど?」


「そうだね。そこは奴隷をよく買うね。


しかもひどい扱いを受けそうな子を優先して買っていく。


貴族の家で重宝されそうな学のある子は買わないね」


「獣王国ってお金持ちの国なの?」


「まあ、闇組織を牛耳る集団って言うと簡単かもしれないね」


「悪い人達なの?」


「元が傭兵で大金を稼いだ国だからね。


野党崩れみたいなのもいっぱいいるよ」


「やっぱりライオンの顔してるとかなの?」


「国王はたしかそうだね。


様々な種族がいるみたいだけどね」


「とりあえず、宿でも取って考えようか」


「そうだね。


おじさんありがとう」


「お役に立てて何よりだよ」


「でもおじさん?変態貴族とは付き合わない方が良いよ?


それで傷付く子が出たら、通りすがりの炎の精霊王に消し炭にされるかもだし」


「き、肝に銘じておくよ」



宿を取ったゆうなちゃんとヘレンは部屋で今後のことについて話し合った。


俺はベッドに寝転がり考える。


最近ゆうなちゃんが丸くなってると思ってた。


昔はもっと突進キャラだった。


ヘレンと出会って昔のゆうなちゃんが少し戻った気がしたんだ。


その理由は、俺だったんだ。


ゆうなちゃんを侮辱されて、奴隷商人を傷付けようとした俺だ。


五万の軍勢を倒してから、俺は自分で思っている以上に変わってしまったのかもしれない。


その少しおかしくなった俺のために、

ゆうなちゃんは必要以上におねえちゃんになってくれてるんだ。


そう思ったら、ゆうなちゃんに必要以上の負担をかけていたんだと、反省した。


でも、俺が変わったのは殺したことじゃなくて、覚悟をしたことだ。


その覚悟が間違ってたとは思わない。


ゆうなちゃんが危険にさらされれば何度でも同じことをする。


でも、俺は俺だけの問題じゃないことをもっと自覚するべきなんだろう。


お姉さんが言っていた。


「あなた達の命をあなた達だけの物だと思い上がらないで」と。


今ならはっきりわかる。

俺達は自分の問題だと線を引けるほど単純な世界で生きてないんだ。


それだけは反省しないとな。


「はるま君、ねえって!」


「あ、ごめん。なんだった?」


「も~聞いててよ。


護衛の人どうしようかって話だよ。


このまま馬車においていく?」


護衛騎士は馬車で待機している。


この街の中ではそれほど危険はないだろうと、自由にさせてくれているんだ。


「駄目だね。」


「またそうやって偉そうなこと言うんだから。なんでよ?」


「このまま俺達が消えたら、彼の失態になる。


罰せられるかもしれないし、首になったり迷惑がかかるだろう?」


「あ、そうか。


あなた見かけによらず考えてるのね」


「どう見えてるんだよ。


だから、案の一つだけど、領主さんに手紙を書くってどうかな?


しばらくこの街に留まるから、手紙を渡してきてって。


そしてその手紙に、護衛騎士はいらないから戻ってこなくて良いって書いておく」


「結局、失態にならない?何故戻ってきたんだって」


「完全にならない方法は無いよ。


だって俺達が出し抜こうとしてる以上、彼には出し抜かれてもらわないと困るからね。


お詫びに、少しだけお金を渡しておこうか…


隠者、お金使わせてもらうね」


「好きに使え」


「それしかなさそうね…


手紙を書くわ」


ヘレンは机に向かって手紙を書きだした。


ゆうなちゃんは、隠者を見つけたいのか、居そうなところを叩きだした。


俺は、宿の庭で素振りをすることにした。


この剣筋は、シグルズの記憶だ。


正直、わからないことだらけだ。


知識としての記憶、身体に染み付いた記憶、記憶ってなんだ。


魂と精神の違い、肉体ってなんだ。


結局、俺達には何もわかってない。


父さんは誰にも情報を残さずに、自らの意思で眠った。


なら俺達じゃ起こせないし、父さんの意思なら起こすべきじゃない。


俺達はもう父さんを追いかけない。


でも十界には飛ばされる。


それも混沌なんて言う意味不明の意思によってだ。


賢者達にすらわからない存在、俺達に理解出来るわけがない存在。


なら俺達は何をすればいい?


俺達は飛ばされるままに、その世界で考え行動していく、それしか出来ないんだろうか。


混沌ってなんなんだ。


理解出来ないことを振り払うように俺は剣を振った。


「はるまく~ん!ご飯食べよ~!」


「は~い!今行くよ」


「あれ?ゆうなちゃんの分は?」


「もう食べた」


「…そっか」


ヘレンは、俺が来るのを待っていたように、祈りの言葉を唱えだす。


「さて、頂きましょう」


なんか変な子だけど、流石はお嬢様だ。


「何見てんのよ」


やっぱりなんかむかつく。


「ヘレンのこと聞きたいな。


なんで孤児院が作りたいのかとか、奴隷を助けたいのかとか」


「あんたは孤児が死んでっても平気なわけ?


奴隷がどんどん増えても良いと思ってるわけ?」


「そ、そんなこと思ってないよ」


「じゃ、なんでって何よ」


ゆうなちゃんもこんなだったな。


だって嫌じゃない?とかだって楽しそうだけで動いてたよな。


「わかった。


それなら俺はこれからもそれに協力するよ」


「あっそ」


でもやっぱりむかつくな。



次の日、俺達は手紙を託した護衛騎士を見送った。


馬車は辛いし遅いのでベヒーモスに乗せてもらって飛んでいくことにした。


「さて、俺達も出発しようか。」


その瞬間、強烈な重圧で押しつぶされそうになる。


背筋が凍り、息が止まる。


ヘレンが膝から崩れ落ちる。


俺は反射的にヘレンを抱きかかえる。


次の瞬間、身体が吹き飛ばされた。


血を吐き骨が砕ける音が聞こえた。


かすんでいく目を凝らして周りを確認する…


ゆうなちゃんは隠者に守られているのか、涼しい顔で立ってる。


襲ってきたのは…やっぱり森の女性だ。


ヘレンを横たわらせると気絶してしまった。


「あ、ぐぁぁ。痛ってえ」


全身が痛くてうまく立ち上がれない。


まるで弾丸のような速度で飛んでくる女性、今度こそ死んだと思った。


間に割って入ったイフリートが女性のこぶしを受け止める。


「ぐわあああああ!」


イフリートが痛みを感じている姿すら初めて見た。


「この小娘が!」


いつも冷静沈着なイフリートが怒りに震えている。


イフリートの渾身の右こぶしを軽く片手で受け止めた女性はつかんだ右手をそのままねじ切る。


「があああ!」


ベヒーモスも参戦しての乱戦になるが、女性は片手で精霊王を軽くあしらう。


絶対に勝てない。


勝てるわけがない。


「隠者!助けてくれよ!」


反応が無い。


なぜ?


なら、ゆうなちゃんはあんな平然としてる?


何かある!脳が焼ききれても良いから今考えろ!なんでだ!


「ゆうなちゃん!魔力を封じるやつ!とにかく辺り一帯の魔力を封じて!」


よくわからないと言った顔をしたが、ゆうなちゃんが焦って何かをつぶやいた。


魔力が押さえつけられる感覚がわかる。


ベヒーモスの一撃で女性が吹っ飛んだ。


やっぱりだ!女性の強さには魔力が関係してる。


イフリートもそれに気が付いたのか、連続でパンチを叩きこむ。


どんどん傷付いていく女性、ベヒーモスの一撃で吹き飛んだ。


倒れたのか?女性は戻ってこなかった。


勝利の安心か、全身の痛みか、疲労からか。


俺はその場で気絶した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。