人質の飢えをしのげ
換気ダクトを使って食糧庫へ向かう。
ノアの後ろをニコが懸命に追う。
腹ペコのニコはお腹を押さえ、少しだけ元気を失っていた。
「……おなかすいたなぁ」
「危ないし、ついて来なくていいよ」
「ねえノア君、フルーツもあるかなぁ?」
「どうかな……」
小さく息を吐いた。
ノアは、完全にニコのペースに飲まれていた。
「この下が厨房だね」
換気口から二人は静かに覗き込む。
換気扇が回る下では、調理された昼食が次々と並べられていく。
『ぐぅ〜〜』
ニコの腹の虫が騒ぐ。
「おい!ニコ……侵入がバレる」
「だってぇ……」
ニコは下の料理から目が離せない。
ノアの肩をツンツンとつつくニコ。
「あれ、美味しそう……」
一番大きな皿を指さす。
何種類ものサンドイッチが盛り付けられている。
「分かった。ここで待ってて」
ノアは換気口から換気扇ごと蹴り落とす。
そのまま、自分も下に降りた。
「な、なんだ!?」
「アイツだ!早く捕えろ!」
戸惑いの声と銃声が響く。
それが悲鳴と呻き声に変わっていく。
「ニコ、終わったよ」
換気口から顔を出したノアはニコの手を取り、下に降ろす。
ニコがノアに支えられて着地する。
「うわぁご飯だぁ」
「ニコ、落ち着いた場所で食べようか」
配膳カートに料理とニコを乗せ、廊下を突っ込んでいく。
「動いて食べにくいよぉ」
「おい今、食うな!」
銃声がなり、火薬の匂いが広がる廊下。
殴り合うノアと男達の横でニコはサンドイッチを頬張った。
「おいしいな。ノア君のも残しとこ」
「僕はいらないよ」
ノアはどこかで拾ったナイフの柄で男の鳩尾を突く。
呻き悶える男を部屋の奥に蹴り飛ばした。
そっと扉を閉める。
「もう全部食べちゃうよ」
「あとで食べたくてもないからね!」
大きな口をあけ、モグモグと頬を動かす。
ニコはマイペースだった。
「はいはい」
ノアは配膳カートを押しながら廊下を突き進んだ。
倉庫の裏側に到着する頃には、戦闘員の数は半数以下にまで減っていた。
配膳カートの料理もなくなりかけていた。
「ニコ、これで暫くは大人しくできるね」
「えっ……オヤツないの?」
ニコは残念そうに俯く。
「そこまでは想定してなかったな……」
ノアは、配膳カートに重ねられた皿を見つめた。
「そろそろ配信が始まる頃かな」
「配信?」
「僕もう行くから……ニコはここにいて」
「う、うん」
ニコの頭を優しく撫でる。
銀色の長い髪がキラキラと光に反射する。
「義父さんがすぐ回収にくるからね」
「うん!ノア君、配信頑張ってね!」
ノアはクスッと笑うと軽く手を振る。
くるりと踵を返し、一歩踏み出した。
緩んだネクタイを締め直す。
「……よし。殺されようか」
一方その頃。
「ねえ!私のサンドイッチまだぁ?」
ステラがソファに座り、長い脚を組む。
下っ端の戦闘員が慌てて駆け込んできた。
「ちゅ、厨房が襲われました!」
「はぁ?」
「戦闘員も厨房も壊滅状態です……」
「私のサンドイッチは?」
「……やられ、ました」
ステラは銀色のナイフを持った。
手がプルプルと震えた。
「ノア!」
戦闘員のすぐ横を銀色の光が通る。
壁に突き刺さるナイフ。
「ひぃっ」
「……殺す!」
ステラはブチギレていた。




