俺に逃げる場所なんてない
「……何なんだよ!ここ!」
気付いたら、全部口から漏れ出ていた。
ニコを監禁していたゲストルームから飛び出し、旧中核へ報告に向かう。
「何て言ったら……下手したら俺が消される!」
手が汗ばみ、小さく震える。
強く手を握りしめ、必死に誤魔化した。
倒れた戦闘員を避けながら、赤い絨毯の続く廊下を歩く。
足取りは、進むほど重くなった。
扉の前に立つ護衛役の男に目配せする。
扉がゆっくりと開かれた。
部屋の中には明らかに人相の違う男達が姿を現す。
やけに傷だらけ。
やけに圧がある。
ザビィは思わず息を飲み込む。
「随分騒がしいな」
「白さん……逃げられました」
「人質もか?」
「……う、奪われました」
部屋にいる男達がザビィを囲む。
ザビィが周りを見回し、思わず数步下がった。
ペクが手を挙げ、男達を制する。
「SANCTUARYさえ出て来なければ問題ない」
「ノアの義父ですよ。干渉するのでは?」
ザビィは恐る恐る発言する。
「そうしないための生配信だ」
「え?」
「アルヴァルトは実況配信するそうだからな」
「え、ええ……!?」
ザビィは理解出来なかった。
ただ、ノアの義父と思えば納得できた。
(……まともじゃねえ)
「本当に狂った親子だよな」
ペクの冷えた笑いに男達も釣られて笑い出す。
ザビィは静かに頷いた。
「サンクチュアリの汚れ役を買うのがエクリプスだからな」
「ここさえ潰せば、あんな組織どうって事ない」
「デカいだけ、だな」
口々に男達が悪口雑言を喚く。
ザビィの背中が少しだけ冷えた。
ザビィはノアに言われたことを思い出していた。
『お前の後ろが気になったからね』
『旧中核……あいつらだけじゃない』
「……アイツをやれば俺はエクリプスの頭にしてもらえるんですよね?」
「もちろんだ」
ザビィは小さく息を吐く。
ペクはフッと笑う。
「ただし、私達の指示通り動いてもらうぞ」
「え?」
「ザビィ、君だって何か目的があった方が輝けるだろ?」
「あ、……はい」
頭の中は、混乱していた。
指示?目的?私達?
それは頭が決めることじゃないのか?
──嵌められた?
頭を左右に振り、すぐに雑念を消した。
今、すべき事は現トップを消すことのみ。
それが出来なければ、消えるのは自分。
ザビィは銃を見つめた。
必ずこれでノアを仕留める。
「アイツは必ず俺が始末します」
ザビィの目は完全にキマっていた。
逃げ場なんてどこにもなかった。
一方その頃。
「ニコ!もっと縮め!」
「無理だよぅ……ノア君!い、痛い」
ノアはニコをスーツケースに詰めていた。
大きさ的に絶対無理だった。
「何か良いもの探さなきゃな」
ノアは顎に手を置き、悩んでいた。
ニコは腹をさすりながら呟く。
「……おなかすいたなぁ」
「仕方ないな。食糧庫まで行くか」
「やったぁ」
ノアは途中で拾った銃に装弾していく。
「念のためにナイフも欲しいな」
「ノア君、食糧庫ってお肉ある?」
「あるだろうけど……調理が面倒」
ニコはあからさまにがっかりと肩を落とした。
ノアは小さく息を吐いた。
「丁度いい頃合いだし、突入して掻っ払うか」
食料と武器集めが始まっていた。




