焦土と雷哭の終焉
焦土と雷光が交錯し、空気そのものが悲鳴を上げていた。
焦土を統べし者、バルザ=ラグナフレア。
雷哭を統べし者、ルミエル=ヴォルト。
二人の四天王が並び立つだけで、地面が軋み、空が裂ける。
その前に立つは――
ドワルガン国王 ドルガン=ハンマード。
そしてゼル=アラド族長 ザラフ=サンドレイ。
背後では、世界樹の巫女 セレフィア=ウィンドレルが光の精霊を複数召喚し、戦線を維持していた。
さらに――賢者 ポポ=ミリオンが長大な詠唱を開始する。
それは二十年前と同じ、絶望をねじ伏せる戦い方だった。
「焼き尽くしてやるよ、旧時代の戦士!」
バルザの腕が灼熱の杭となり、振り下ろされるたびに地面が溶け、焦土の砂塵が舞い上がる。
ドルガンは戦鎚で受け止めるが、衝撃で吹き飛ばされ、鎧が赤熱し、皮膚が焼ける匂いが立ち上る。
「ぐっ……!」
だが――
「《光癒・精霊の抱擁》」
セレフィアの光の精霊が降り立ち、ドルガンの全身を包む。
焼けた皮膚が再生し、砕けた骨が繋がる。
ドルガンは立ち上がり、戦鎚を肩に担ぎ直した。
「悪ぃな。俺はまだ死ねねぇんだよ」
バルザは笑う。
「面白ぇ……! もっと燃やしてやる!」
雷光が走る。
ルミエルの槍が瞬間移動のような速度で迫る。
ザラフはショーテルで受け流すが、雷撃が神経を焼き、身体が痺れる。
「……っ!」
膝が落ちかけた瞬間――光の精霊がザラフの背に触れた。
「《光癒・神経修復》」
痺れが消え、視界が戻る。
ザラフは息を吐き、再び構えた。
「……お前に回復されるのは癪だが……戦いやすい……」
ルミエルは無感情に言う。
「効率が悪い。回復される前提で戦うとは、愚かだ」
ザラフは薄く笑う。
「仲間がいるってのは、そういうことだ」
セレフィアは額に汗を浮かべながら光の精霊に指示を飛ばす。
「ドルガンには治癒を優先。
ザラフは神経修復を急いで。
ポポの詠唱は絶対に止めさせないで!」
精霊たちは光の軌跡を描き、戦場を縫うように飛び回る。
雷と灼熱の大地、燃え上がる瓦礫、吹き飛ぶ魔族――戦場はまるで自然の猛威そのものだった。
ルミエルがセレフィアを見据える。
「……巫女。まずはお前から排除する」
雷光が走る。
だが、ザラフが割って入る。
「させるか!」
雷と刃がぶつかり、火花が散る。
戦場の中心で、ポポは杖を地面に突き立て、長大な詠唱を続ける。
「――光よ、世界を満たせ……古き理よ、今ここに統合せよ……万象を束ね、終界を開け……」
魔力が渦を巻き、空が震え始める。
バルザが気づく。
「おい……あのガキ、何をしてやがる!」
ルミエルも目を細める。
「……高位魔法。いや、違う。これは――“究極魔法”……?」
二人が同時にポポへ向かう。
だが――ドルガンとザラフが立ちはだかる。
「行かせるかよ!」
「ここは通さない!」
二人は何度倒れても立ち上がり、セレフィアが何度でも癒す。
そのたびに、ポポの詠唱は一節、また一節と進む。
ポポの周囲に六つの魔法陣が展開した。
光、炎、雷、氷、風、土――全属性が融合し、空が白く染まる。
ポポは静かに目を開いた。
「――《究極魔法・エクス・アークノヴァ》」
世界が、光に飲まれた。
バルザの灼熱が消え、ルミエルの雷帝化が霧散する。
二人は光に呑まれ、抵抗する間もなく崩れ落ちた。
光が収束し、戦場に静寂が戻る。
ザラフが深く息をつく。
「……ポポ、よくやったな」
ポポは微笑む。
「……まだ、終わってないよ……」
その瞬間――
魔王城の奥から、氷の気配がゆっくりと溢れ出した。
ザラフは息を呑む。
「アッシュ……勝てよ……」
戦場は次なる絶望へと進む。
空気が凍りつき、背筋が震えるほどの冷気が城の奥から押し寄せていた。




