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二人で返す借り

雪原は白銀に覆われ、二十年前の戦場の記憶を映すかのように静まり返っていた。

その先にそびえる魔王城。巨大な城門が、冷たく威圧的な影を落とす。


雪原の表面は凍りつき、歩くたびに氷の軋む音が耳を刺す。

雪に覆われた丘陵や凍結した小川は、かつて本隊が布陣していた場所の跡を今も留めていた。


二十年前――。

あの時、この場所で、魔王軍の四天王グラキエスの奇襲を受けた。

兵たちは次々と倒れ、悲鳴と叫びが雪原に消えていった。

その混乱の中で、エリシアは消え、アッシュは氷漬けとなった。

アッシュ、ポルにとって忘れられない記憶だ。


「……ここからだ」

アッシュは低く呟き、背中の二振りの剣に手をかける。

ポルも肩をすくめ、短く笑みを浮かべた。

「やっと決戦だな」


しかし、後方より雪を踏みしめる音が響く。

魔王軍の増援が、一気に雪原に押し寄せてきたのだ。


「くそ……やはり罠だったか」

ザラフが深く息をつき、ショーテルを握りしめる。

「……ここは、俺が食い止める。アッシュ、お前たちは城へ行け!」


アッシュの拳がわずかに震える。

「ザラフ……やめろ! 一人で行くな!」


ポルも短く叫んだ。

「俺たちがいるだろ! 無茶はするな!」


レーネは雪を踏みしめて前に出る。

「ザラフ殿、どうしてそんな……!」


だがザラフは振り返らず、静かに答えた。

「止めるな……これは、俺の役目だ。二十年前の借りも、今ここで返す」


その瞳には迷いはない。

本隊が魔王軍の急襲に遭っていることを知りながら、勇者パーティは戻らなかった。

その借りを返すため、死を覚悟した戦士だけが宿す、冷たい決意。


アッシュたちはその決意に言葉を失う。

しかし、次の瞬間――


「僕も一緒に行くよ」


雪原の静寂を切り裂くように、ポポがザラフの横に立った。

力強い声で告げる。

「ザラフ、二十年前の借りは一緒に返そう」


ザラフは一瞬驚き、次にゆっくり頷く。

「……ああ、わかった。行くぞ、ポポ」


二人は並び立ち、雪原の白銀の上で死を覚悟した静かな戦意を灯す。


「待て! 俺たちも行くぞ!」

ポルの叫びが凍てついた空気を震わせる。


だが、ポポは短く、しかし揺るがぬ声で返す。

「ポル......あとは任せたよ......。

 俺たちがここで止める。君たちは魔王城へ行け。絶対に魔王を倒すんだ」


ザラフも深く頷く。

「頼むぞ、アッシュ。後で会おう」


その瞬間、雪原に響き渡る無数の足音。魔王軍の増援が迫ってくる。

白銀の世界に、二人だけが孤立する影。

死を覚悟した者同士の沈黙の決意が、雪の上に刻まれた。


アッシュは低く頷く。

「わかった。……絶対に戻る」

ポルは拳を握り、短く息を吐いた。

「……行こう、先に」


アッシュ、ポル、レーネ、カリム――四人は振り返り、二人の覚悟を胸に刻む。

そして、魔王城へと走り出す。

背後で二人が立ち向かう姿が、決戦前の最後の砦となる。


ザラフとポポは雪原に一歩踏み出した。


敵の足音が雪原を震わせ、魔王軍が押し寄せる。

ザラフの剣が振るわれ、ポポの魔法が雪を割る。

二人の間に、言葉はなくとも強い絆と覚悟が存在する――

死を覚悟しながら、仲間を守るためだけに立つ者たちの意志。


その隙に、アッシュ、ポル、レーネ、カリムは魔王城へと突入する。

雪原の後方で二人が繰り広げる死闘の音が、静かな緊迫を雪原に刻む。

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