揃った絆
焦げた大地に、まだ白い煙が立ち上っていた。
魔王軍の残骸は、黒炎に焼かれ、跡形もなく消え去っている。
その中心に、アッシュは立っていた。
深紅の髪が風に揺れ、毛先の淡い光が静かに瞬く。
「……一先ず終わったな」
低く呟いたその声に、背後から足音が近づく。
「……本当に、アッシュだよな……
あんな炎、初めて見たぞ……
……全部……思い出したのか?」
振り返ると、ポルが悲痛な顔で立っていた。
その後ろに、ポポ、レーネ、ザラフ、カリムの姿もある。
レーネが一歩前に出る。
「アッシュ殿……ポル殿のことですが
エリシア殿の魔法で……戻ってきたのです」
アッシュは静かに頷く。
「ああ……エリシアに会った。
記憶が戻って……俺は、自分の罪を受け止められなかった」
一瞬だけ、視線が落ちる。
「……でも、エリシアは許してくれた。
そして……今も、一緒に戦ってくれる」
アッシュの毛先の淡い光が、わずかに強く揺れた。
ポルは俯いたまま、低く言う。
「……エリシアのこと……黙っていてすまなかった……」
アッシュは目を閉じて、わずかに微笑んだ。
「俺が壊れない様に守ってくれたんだろ?」
ゆっくりと目を開ける。
「……ポル……いつも、ありがとう」
ポルは目を見開き――そのまま言葉を失う。
「……そうかよ……」
一度、息を飲み込んでから、呟く。
「……お前たちは俺の弟と妹みたいなものだからな」
ポポがそっとポルの肩を叩く。
「ポル……良かったな」
それ以上は何も言わない。
だが、ポルの肩の力が、はっきりと抜けていた。
レーネが胸に手を当てる。
「アッシュ殿……ご無事で、本当に……」
声がわずかに揺れる。
だがすぐに、騎士としての顔に戻った。
ザラフは腕を組んだまま鼻を鳴らす。
「これで攻勢に出られるな」
カリムは静かに一礼した。
「お戻りをお待ちしておりました」
ポポは微笑みながらアッシュの脚を叩く。
「おかえり。君がいると、とても心強い」
アッシュは一人一人を見渡し、ゆっくりと息を吐いた。
「……守ってくれて、ありがとう」
短い言葉だったが、空気が確かに和らぐ。
ポルが小さく笑う。
「……やっと揃ったな」
誰も否定しなかった。
その一言が、すべてだった。
アッシュは小さく頷く。
「……ああ。ここからだ」
風が吹き抜ける。
戦いは、まだ終わっていない。
だが――
もう、誰も一人ではなかった。




