表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/103

世界が敵に回る夜

アッシュを寝かせた客室には、暖炉の火だけが静かに揺れていた。

レーネはシグル王子に旅の報告を行いに王子の居室に行っている。

他の仲間たちはそれぞれ椅子に腰を下ろし、久しぶりの休息を取っていた。


ポルは腕を組んだまま目を閉じ、

ポポは落ち着かない様子で部屋を歩き回り、

ザラフは壁にもたれて黙っていた。

カリムだけが、変わらぬ無表情で窓の外を見ている。


そんな静寂を破るように、扉が再び叩かれた。


「……失礼いたします」


シグル王子とレーネが入室した。

先ほどよりも表情が硬い。


シグルは一度だけ深く息を吸い、皆を見渡した。

「……帝国が、勇者レオンの死を正式に発表しました」


空気が凍りついた。


ポルの拳がわずかに震える。

「……そうか」


シグルは続ける。


「そして……

 アッシュ殿が“勇者レオン殺害犯”として、冒険者ギルドに指名手配されました」


ポポが息を呑んだ。


「......ということはアッシュの首に賞金がかけられたということだね」


シグルは静かに首を振る。

「帝国は、アッシュ殿が暴走し、レオン殿を殺害したと発表しています」


レーネの顔が苦痛に歪む。

「……引き金は帝国が作ったというのに!」


シグルはさらに重い言葉を落とす。


「そして……

 ポル殿、カリム殿、ポポ殿、ザラフ殿、レーネ。

 あなた方も“共犯者”として同時に指名手配されています」


部屋の空気がさらに沈む。


ザラフは鼻で笑い呟いた。

「俺は大して変わらないな」


カリムは眉ひとつ動かさず言う。

「予想の範囲内です。問題ありません」


ポポは唇を噛みしめた。

「ギルドに.....エルフェリアに......もう戻れないな」


シグルは静かに頷いた。


「冒険者ギルド全体に通達が出ています。

 あなた方は、どの国でも“指名手配犯”として扱われるでしょう」


そして、表情を引き締める。


「……もう一つ、重大な報せがあります」


全員の視線がシグルに向く。


「イシュヴェルの魔力探知網が……

 “魔王アーク=ノクティスの復活”を確認しました」


ポルが息を呑む。

「そうか......」


シグルは続ける。


「同時に……魔王城跡から“4つの強大な魔力反応”も検出されています。

 いずれも、かつての魔王軍四天王に匹敵する力です」


部屋の空気が重く沈んだ。


ポルが低く呟く。

「アエロス含む新たな四天王だろう」


シグルは一歩前に出て、皆を見渡した。


「レーネより全ての報告を受けております。

 イシュヴェルはあなた方の味方です。

 帝国がどう動こうと、我々はあなた方を保護します。

 アッシュ殿が目覚めるまで……どうか、ここで休んでください」


その言葉に、誰もすぐには返事ができなかった。

誰もが口にしないまま、同じ不安を胸に抱えていた。


――アッシュは、本当に目を覚ますのだろうか。


暖炉の火だけが揺れる静かな夜が、重く長く続いていた。


だが、時間が経つほど、アッシュの呼吸は浅く乱れ、眠りは深く、まるで意識が遠くへ沈んでいくかのようだった。


身体の奥で微かに、何かが確かに揺れている——

それは、まだ消えていない闇と、残された希望のような光の気配だった。


誰も知らないところで、アッシュの意識は深い闇の底に沈み、現実と夢の境界は曖昧になっていた——

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ