奪われた仲間
森を抜けてサン=レガリア帝国の外壁手前。
ポルとレーネは、息を潜めて帝都の方角を見つめていた。
レーネが不安げに呟く。
「……遅い。
カリム殿とアッシュ殿、何かあったのでしょうか」
ポルは落ち着かない様子で地面を蹴る。
「カリムなら大丈夫だろう。
心配なのは……アッシュが……」
その時、風が一度だけ揺れた。
ポルが振り返る。
「……カリム!」
影から滑り出るように、カリムが姿を現した。
息は乱れていないが、表情は硬い。
レーネが駆け寄る。
「アッシュ殿は!? 無事なのですか!?」
カリムは短く首を振った。
「……捕らえられました」
空気が凍りつく。
ポルが叫ぶ。
「はぁ!? なんでだよ!
お前が一緒にいたんだろ!」
カリムは怒りを受け止めるように、静かに答えた。
「勇者レオンが現れました。
魔力感知で我々を捕捉し、帝国軍を率いて」
レーネの顔が青ざめる。
「……そんな……」
カリムは続ける。
「アッシュ殿は……ソウルベアラーの記録に触れて、精神が大きく揺らぎました」
ポルの拳が震える。
「……エリシアのか……?」
カリムは頷いた。
「はい。
記録を触れた直後……ほとんど動けない状態でした」
静かな声で続ける。
「その隙を、レオンの《光縛》が捉えました。
抵抗は……不可能でした」
レーネは唇を強く噛んだ。
「アッシュ殿が……そんな……」
カリムは二人を見渡す。
そして、静かに告げた。
「……アッシュ殿は帝国城へ連行されました。
近衛兵団の管理下に置かれるはずです」
ポルが地面を殴りつけた。
「クソッ……!
なんでだよ……!」
レーネは震える声で言う。
「……助けに行かないと……
アッシュ殿一人では……」
カリムは二人の言葉を遮らなかった。
だが、冷静に現実を告げる。
「今、突入すれば……三人とも捕まります」
ポルが睨みつける。
「じゃあ見捨てんのかよ!」
カリムは首を横に振った。
「いいえ」
一瞬だけ、目が鋭くなる。
「レオンの口振りからして、
すぐに処刑される可能性は低い」
「アッシュ殿を……何かに利用する気です」
ポルは歯を食いしばった。
「……じゃあどうすんだよ」
カリムは短く答える。
「まずは収容場所を特定します」
「その上で――救出の機会を作る」
レーネは深く息を吸い、頷いた。
「……わかりました。
今は……カリム殿の判断に従います」
ポルも悔しそうに拳を握りしめながら、
ゆっくりと頷いた。
「……絶対に助けるぞ。
アッシュを……絶対に取り戻す」
カリムは静かに言った。
「必ず。
あの方を終わらせるわけにはいきません」
三人は闇の中で身を潜め、
帝国城の光を見つめた。
その光の中に、
アッシュが囚われている。




