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世界樹の雫、奪われる

アエロスの風が空洞全体を震わせていた。

アッシュは二刀を構え、炎を封じたまま純粋な剣技だけで挑む。


だが――

アエロスの本気は、次元が違った。


「……終わりにしよう」


風が爆ぜ、アッシュの身体が吹き飛ぶ。

根の壁に叩きつけられ、呼吸が一瞬止まった。


(……速い)


立ち上がるより早く、アエロスは目の前にいた。

真空の刃が連続して放たれ、アッシュの身体に浅い傷が刻まれていく。


「炎を封じたお前は……ただの剣士だ」


アッシュは二刀で突風を受け止めるが、膝が沈む。

押し返せない。

風の圧力が骨を軋ませる。


アエロスが手を向けた。


「終わりだ」


その瞬間――

空洞の魔力が揺れた。


アエロスの視線がわずかに逸れる。


(……ポポの魔力?)


アッシュも感じた。

世界樹の根が、異常なほど光を帯び始めている。


アエロスは静かに呟いた。


「古代魔法……厄介だ」


そして次の瞬間、

アエロスの姿が“風のように”消えた。


「ポポ! 後ろだ!」


ポルの叫びが響く。


ポポが振り向くより早く、

アエロスの腕がポポの胸を貫こうとしていた。


ポルは迷わなかった。

飛び込み、ポポを突き飛ばす。


「逃げろ! ポポ!」


ポポは地面に転がりながら叫んだ。


「嫌だ! 僕はもう……絶対に逃げない!!」


アエロスの攻撃が再びポポに迫る。


その瞬間――

レーネが前に飛び込み、氷の大楯を展開した。


「ポポ殿! 詠唱を続けてください!!」


風刃が大楯に叩きつけられ、氷が砕け散る。

レーネの腕が震える。それでも退かない。


ポポは震える声で詠唱を再開した。


ポポの周囲に古代文字が浮かび上がる。

世界樹の魔力が反応し、光が一点に集束する。


中級魔族が焦ったように叫ぶ。


「ソノマホウ……ダメダ……!」


ポポは最後の詠唱を紡いだ。


「──《古代魔法・森羅万象の裁き》!!」


光が爆発した。


世界樹の根が共鳴し、

空洞全体が白い光に包まれる。


下級魔族は悲鳴を上げる間もなく消し飛び、

中級魔族も光に飲まれて消滅した。


アーリマンの巨体も霧のように消えていく。


そして――

アエロスの身体も光に呑まれた。


「……っ!」


風壁が砕け、

アエロスの肩口が大きく裂ける。

血が滴り、世界樹の根に落ちた。


アッシュはその光景を見逃さない。


(……効いている。)


アエロスは傷口に手を当て、

初めて警戒の色を見せた。


「……古代魔法。

 なるほど……これは厄介だ」


光が爆発する前に

アエロスの使い魔が世界樹から戻っていた。

アエロスの手には淡く輝く“滴”が握られていた。


世界樹の雫。


ポポが絶叫する。


「やめろ!!

 それは……世界樹の雫だ!!」


アエロスは傷を負いながらも、

静かに雫を掲げた。


「これで……アーク様は復活する」


アッシュが飛びかかる。


だがアエロスは時空魔法を展開した。


「時空魔法《転界門》」


空間が歪み、黒い裂け目が開く。


「さらばだ、過去の英雄と仲間たち。

 次に会う時は……絶望の中だ。」


アッシュの刃が届く寸前、

アエロスは世界樹の雫を抱えたまま消えた。


静寂。

世界樹の根元に、風だけが吹き抜ける。


ポポは膝をつき、震える声で呟いた。


「魔王が復活する……」


ポルはゆっくりと近づき、

ポポの肩に手を置いた。


「……時代が動くぞ。

 俺たちにしか出来ないことがあるはずだ」


ポポは涙をこぼしながら頷いた。


アッシュは拳を握りしめる。

胸の奥で、何かがざわついていた。


レーネは震える声で言った。


「……私たちに何が出来るんですか……」


カリムが静かに言う。


「魔王復活……本当に、始まってしまうのか」


ポルは剣を握り直し、仲間たちを見渡した。


「行くぞ。

 まずは各国に報告だ」


ポポは涙を拭い、立ち上がった。


「……ああ。早急に行わないと」


世界樹の影が揺れ、

新たな戦いの幕が上がった。

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