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光の中の影

光の門をくぐった瞬間、空気が変わった。


外環や中環とはまるで別の世界だった。

空気は澄み、魔力が細かな粒子となって漂い、肌に触れるたびに微かな刺激を残す。

建物は白い石と透明な魔力結晶で構成され、どれもが淡い光を帯びていた。


レーネが思わず息を呑む。

「……ここが、内環……」


ポポは頷き、案内するように歩き出す。

「魔法研究所と魔法部隊の詰所がある区域だ。

 揺らぎの中心も、この先にある」


道を進むと、巨大な塔が見えてきた。

塔の外壁には魔法陣が幾重にも刻まれ、ゆっくりと回転している。

魔法研究所――エルフェリアの知の中心。


その手前には、魔法部隊の訓練場が広がっていた。

若い魔法使いたちが魔力を放ち、結界が光を弾く音が響く。


「魔法部隊……まだこんなに人がいたんだな」

ポルが呟くと、ポポは苦い顔をした。


「昔よりはずっと少ないよ。

 魔王が倒れてから、王国軍の需要は減った。

 研究所も予算が削られ、部隊も縮小された」


ポルは無言で訓練場を見つめていた。

その横顔は、どこか硬い。


アッシュが気づいて声をかけようとした瞬間――

ポルの視界に、訓練場の一角が重なるように“過去の光景”がよぎった。


――十代の頃。

訓練場の中央で、ポルは杖を握りしめていた。


「……魔法が、出ない……?」


周囲の若い魔法使いたちが嘲るように笑う。


「またかよ、ポル。魔法使いになりたいのに魔力ゼロ?」

「才能ないなら、外環にでも行けば?」

「内環にいる資格、ないよな」


悔しさで喉が焼けるのに、魔力は一滴も応えてくれなかった。


その時、ポポだけが心配そうに駆け寄ってきた。

――だが、ポルはその手を振り払った。


「来るな……俺は……」


言葉の続きは、今も胸の奥に沈んだままだ。


回想が消えると、ポルは小さく息を吐いた。

アッシュが心配そうに見ている。


「……なんでもねぇよ」

ポルは視線をそらし、歩き出した。


ポポはその背中を見つめ、静かに言う。


「......揺らぎの中心は、さらに奥だ。

 行こう」


レーネが思わず立ち止まる。

「……空気が、光ってる……?」


ポポは頷く。

「世界樹の魔力が最も濃い場所だ。

 ここが――揺らぎの中心、“世界樹神殿領”」


巨大な結界壁がそびえ立ち、

その向こうに、世界樹の根が絡み合う神殿が見えた。


アッシュは息を呑む。

「……あれが、神殿……」


カリムは眉をひそめる。

「魔力の流れが乱れている……普通じゃない」


ポポは険しい表情で言う。

「本来なら、ここに外部の者を入れることはできない。

 でも、魔族の気配がある以上……もう、そんなことを言っていられない」


ポルは無言で神殿を見上げていた。

その横顔は、どこか影を落としている。

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