虹のエリイ
虹の上に立つ少女は、満面の笑みだった。
元のエリイは震えていた。怒っていた。困っていた。
「ムムムムム……!」
兵士たちは固唾を呑む。女神同士の対峙だった。たぶん。
後から来たエリイは、悪びれもなく笑った。
「やり過ぎよね!」
「なにい~!」
虹の少女が両手を広げると、空に光が散り、花が舞う。無駄に演出が派手だった。エリイがギリギリと睨みつける中、兵士たちは何となく感動している。
爆裂団の男が、隣の老軍師にこっそり聞いた。
「どっちが本物だ?」
「どっちもですな」
真顔の即答に、男は顔をしかめる。
「嫌すぎる答えだな」
その時だった。
虹のエリイが周囲を見回した。兵士たち、術師たち、宴会の残骸、崩れた岩。そして、世界。
「なるほどなるほど」
元のエリイの顔から一気に血の気が引く。
「あ」
「ちょっと試してみようか!」
「やめて」
「大丈夫大丈夫!」
「大丈夫じゃない!」
制止より早く、虹のエリイは楽しげに指を鳴らした。
ぱちん。
今度は、空が鳴った。
ゴォンゴォン――――。世界そのものが、巨大な鐘のように重く響く。
全員が唖然として空を見上げた。虹のエリイだけが、純粋に目を輝かせている。
その絶望的な状況下で。
元のエリイは、なぜか振り返り、兵士たちをギロリと睨みつけた。
「ムムム……ムムムム」
「え?」
「いいのね?」
「は?」
「いいのね?」
「だから何?」




