第14章: 「魔王の影」
地鳴りは止まらなかった。
木々が軋み、空は墨を流したように黒く染まる。
カイルは息を呑んだ。『ボスが...直接来た?』
「なんだこれ...」
勇者レオンも眉を寄せる。聖剣が微かに光る。
彼の視線は空の一点に集まっていた。
そこにいた。
黒いマントを翻し、空に立つ影。
顔は見えない。だが、その存在だけで森の空気が凍る。
「カイル」
低い声が頭に直接響いた。
『...ボス』
「よくやった。勇者を足止めしたな」
カイルは片膝をついた。肩の血が滴る。
「すみません...倒せませんでした」
「構わん」
魔王はゆっくりと降り立つ。足が地面に触れた瞬間、草が枯れた。
「お前の忠誠は見た。だから褒美をやろう」
魔王は手を差し出した。黒い霧がカイルの傷を包む。
一瞬で痛みが消える。
『これは...魔力?』
「聞け、勇者」
魔王はレオンを見た。仮面の奥の瞳が赤く光る。
「お前が探しているものは、ここにはない。帰れ」
レオンは聖剣を構えた。
「帰るわけないだろ。世界を滅ぼそうとしてるお前を倒すために来たんだ」
「滅ぼす?」
魔王は笑った。低い、腹の底から響く笑い。
「間違えるな。私はこの世界を"救う"のだ」
その瞬間、魔王の背後で空間が裂けた。
そこから無数の魔物が溢れ出す。ゴブリン、オーク、ドラゴン...
レベルも数も異常だ。
「行け」
魔王の一言で、魔物たちが突撃する。
「くっ!」
レオンは剣を振るう。光が走り、魔物が薙ぎ払われる。
だが、キリがない。
カイルは迷った。
『ボスの命令...勇者を連行』
『でも今は...』
「カイル!」
レオンが叫んだ。「お前も操られてるだけだろ!一緒に戦おう!」
カイルは拳を握りしめた。
「...忠誠だと言った」
そして、聖剣に向かって突っ込んだ。
――第14章 終わり――




