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死者専用アパートの管理人になった俺、なぜか成仏できない美少女たちに懐かれる  作者: 鷹司 怜


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第十三話 最後の管理人


『だから迎えに来てください、管理人さん』


結衣の文字だった。


何度見返しても変わらない。


夢ではない。


幻覚でもない。


机の上には確かに封筒がある。


そして桜の花びらも。


俺は震える手で日誌を閉じた。


窓の外では春の風が吹いている。


だが胸の奥はざわついていた。


結衣は消えたはずだ。


約束の桜の下で。


笑顔で。


それなのに。


なぜ今になって手紙が届く。


数日後。


俺は佐伯さんの日誌を読み続けていた。


そこには夕凪荘の記録が残されていた。


何十年分もの。


住人たちの名前。


未練。


最後の言葉。


そして送り出した日。


一人一人の人生がそこにあった。


その中で、あるページに目が止まる。


『管理人の条件』


俺は眉をひそめた。


ページを開く。


そこにはこう書かれていた。


『管理人は生者と死者の境界を歩く者』


『管理人は選ばれる』


『そして最後の管理人だけが夕凪荘を終わらせることができる』


俺は読み返した。


最後の管理人。


佐伯さんが夢で言っていた言葉だ。


続きがあった。


『次の管理人候補』


そこに記された名前を見て、俺は息を呑んだ。


相沢悠人。


俺だった。


その夜。


再び夢を見た。


今度は夕凪荘ではない。


見知らぬ駅だった。


ホームには誰もいない。


時刻表もない。


電車も来ない。


ただ静寂だけがある。


ふと視線を感じた。


振り向く。


ベンチに少女が座っていた。


制服姿。


長い黒髪。


見間違えるはずがない。


「結衣」


思わず駆け寄る。


だが。


違った。


顔が違う。


年齢も違う。


知らない少女だった。


それでも少女は俺を知っているように微笑んだ。


「管理人さんですね」


俺は立ち止まる。


「君は誰だ」


少女は答えない。


代わりに切符を差し出した。


古びた紙切れだった。


そこには行き先だけが記されている。


『夕凪荘』


「そんな場所はもう……」


言いかけて止まる。


少女が首を横に振った。


「まだあります」


静かな声。


「迷子がいる限り」


その言葉に鳥肌が立った。


目が覚める。


朝だった。


だが。


枕元に切符が置かれていた。


夢で見たものと同じ。


俺は言葉を失う。


夢ではなかった。


その日の夕方。


日誌の最後のページを開く。


そこには佐伯さんからの最後のメッセージがあった。


『悠人くんへ』


『きっと怒るだろうね』


少しだけ笑ってしまった。


佐伯さんらしい。


『でも管理人という仕事は、誰かが引き継がなければいけない』


『結衣ちゃんを救ったように』


『これからも迷子を救ってほしい』


ページをめくる。


最後の一文があった。


『それと――』


文字が少しだけ乱れている。


『結衣ちゃんは消えていない』


俺の呼吸が止まった。


続きを読む。


『あの子は今、誰かを待っている』


『君を』


胸が激しく鳴る。


ページの下には地図が描かれていた。


手書きの地図。


見覚えのない場所。


そして赤い丸。


その横に書かれた文字。


『終着駅』


夜。


俺は駅へ向かった。


夢で見た切符を握り締めて。


馬鹿げていると思った。


でも行かなければならない気がした。


終電が過ぎたホーム。


誰もいない。


時計だけが時を刻む。


その時だった。


ホームの端に古い列車が現れた。


音もなく。


灯りもなく。


まるで闇そのものが形を持ったような列車だった。


扉が開く。


車掌の姿が見える。


黒い制服。


黒い帽子。


そして――


骸骨のような白い顔。


死神だった。


車掌は静かに頭を下げた。


「お待ちしておりました」


冷たい風が吹く。


列車の行き先表示が揺れる。


そこに記された文字を見て、俺は息を呑んだ。


『夕凪荘・再行き』


列車の奥。


誰かの笑い声が聞こえた気がした。


懐かしい声。


忘れられるはずのない声。


――悠人くん。


俺は切符を握り締める。


そして静かに列車へ足を踏み入れた。


新しい物語が始まろうとしていた。

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