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236 『確信的な意識』

 また驚くべき言葉が飛び出した。

 サツキの世界はこの世界の過去で、言い換えればサツキは古代人になる。

 一部で、「古代人は今よりも高い文明レベルを有していた」とも言われているが、月に降り立つほどなら科学レベルは怪盗デゼル兄が今生きているこの世界の比じゃない。


「科学のレベルはすごかったです。たぶん、このあともっと極まっていくでしょう。しかし、魔法はまるで別のすごさです。俺からすると、魔法が科学を超越しているように見えても、科学は魔法を超越したようには見えません。無い物ねだりというか、俺の知っている科学が当たり前になり過ぎて、畏敬の念が欠けているせいだと思いますが」

「あたしがサツキから聞いた話でもそうだよ。サツキの世界の科学すごすぎ。たくさんの人を乗せて空を飛んだり宇宙に行ったり、離れている相手としゃべったり、それをだれもができる設計になっているなんて、魔法とは比較にならないわ」

「ぼくもそう思うよ。一度でいいからサツキくんの世界に行ってみたい」


 怪盗デゼル兄は話を聞きながら感激すらしていた。


 ――飛行船が実現してるってことか。宇宙にも行けて、離れた相手と特殊な魔法もなくしゃべれる。すごいな。


 すっかりサツキが異世界から来て、それが古代の世界だという話も信じてきてしまっている。

 そのあとも、サツキたちの話は続く。


「サツキくんの世界の文明レベルはとてつもなく高い。今ぼくたちがいる世界では、《気象ノ卵(ウェザー・エッグ)》から生まれた『大気(アトモス)の子供』が地球の自浄作用を高めていると言っても、常人には理解できない。地球が自らの意思を持っていると言っても信じてもらえない。一人の魔法が映し出した真実は、常識にはできないんだ。学術的ではないと言われてしまう」

「俺の世界でも、信じてもらえるかわかりませんよ。目に見えないものを認める意識は、この世界のほうがありますから」

「なるほど。それもそうかもしれないね。サツキくんが前に言っていたように、この世界が、人々のイメージコントロールの力によって、人々のイメージが形になって投影されたものだとしたら、人々の意識はこの世界のほうが柔軟だ。魔法を認めて生み出せるほどに」

「サツキは、こう言ってたよね。サツキのいた世界は一万年以上も前で、地殻変動で世界地図も変わっているはずなのに、この世界とそっくりでだいたい同じ形を残しているのはおかしいって。それも『世界はこの形だ』って大勢の人のイメージコントロールの力が働いたからだって」

「うむ。それを可能にしているのが世界樹だと言ったが、世界樹という魔法の電波塔がなくても、人間には魔法のような力が備わっている気がしてる」


 また、怪盗デゼル兄にはわからない話が出てきた。


 ――世界地図はこの一万年以上もの間、変化してないのか。オレも遙かなる昔、地球は一つの大陸だったって説を聞いたことがあるが、今のこの世界はそんないびつなことになっているのか。


 その元凶とも言えるのが、


 ――人々のイメージコントロールの力。


 なのである。


 ――イコールこの世界の投影。そして、世界樹のおかげで魔法が使えるのはこの世界の常識だが、(しろ)()(さつき)くんは人間には元々そういうすごい力が備わっていると考えている。

 ますますおもしろい話になってきた。


 だが、うっかりしゃしゃり出てはいけない。盗聴がバレてしまう。それも興味本位の盗聴であり、怪盗デゼル兄本人はサツキには友好の情を抱いている。敵対したくもない。


「おそらく、マンフレード博士の研究をちゃんと広く知らせれば、この世界の人たちなら理解しようと思ったんじゃないかな。支配構造がなければ、もっと人間の意識は寛容で、自由だったと思う。俺の世界も人々の意識がもっと進化すれば、もっと平和なパラレルも描いたかもしれない。いや、パラレルなんだから、その可能性はまだまだあるけど」

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