兆候2
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深夜、魔王殿
ギィ…
重い音を立てる観音開きの門を、魔王はやや眉をひそめながらゆっくりと閉じた。
なるべく音を立てないように、するりと板の上に足を滑らせてすすむ。
床板の上に落ちる灯火の陰を見ると、サっと動くものが映った。
大きな翼を慌ててたたむ、天使のシルエット。
床の上のそれを見る魔王の表情は、誰からも伺い知ることはできないだろう。
いや、あるいは獣王であれば察することができたのかもしれない。
魔王の、その心中を彼であれば嗅ぎ分けることができただろう。
魔王は、喜ばしく思っていた。
亀姫を様子見に送り出すようになってから顕著にあらわれた兆候。
それまで、魔王が部屋に戻ると、天使は御簾の中で気配を殺し、小さな物音を立てては、その物音を立ててしまったことに体を震わせて息すらも押し殺していた。
言葉にするなら、恐ろしい猛獣のように扱われていたと思う。
見つかれば食い殺されてしまうのではないか、というほどの追い詰められた気配。
それが、ここ数日はずっと…いや、段々と明らかに和らいでいるのを感じるのだ。
それだけで、魔王は喜ばしく感じていた。
--恐れられない。
相変わらず言葉をかわすことも、素直に身を晒すこともない天使ではあったが、その気配からは魔王の様子を伺うようなものさえ感じられる。
それは小さな一歩というにもまだ踏み出せていないかもしれない。
そのような小さな出来事に喜んでしまう自分をほんの少し笑い、魔王はまた静かに横になるのだった。
そして、魔王はひとつの決意を固めた。
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