天使3
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困り果てた顔で、どうにか弁を立てて妥協点を見つけ出してくれた亀姫の笑顔を見て、天使はなおさらに顔をほころばせる。
(……本当に、優しい人。私よりもよほど女神様のような慈愛の心をお持ちで…それになにより別け隔てなく天使である自分に接してくれる)
姉のようにも慕っていたあの人は、きっともういないだろう。
だけど、まるでそれに変わるように優しい微笑みと困った笑顔を自分に向けてくれる亀姫に、天使は確かに慰めを感じていた。
亀姫の姿に、いまは懐かしい人の姿を重ねると、ゆっくりと思い出される彼女の姿。
あの人は、あまりご自身のことは話してくれなかった。
だけど、いつだってすべてを受け止めて許そうとする心をずっと抱えていた。
今の亀姫のように、優しくて、困ったような、穏やかな微笑みで…いつも、そばにいてくれた…
―――――回想―――――――
「誇り高くて、強くって。姉さまは本当に素敵。いざとなれば神様を守り、神様のお力が弱まることがあれば、姉様が御子様をお宿しになるのでしょう? 姉さまは、天族みんなのお母様のよう」
「ふふ。私のことを本当にそんなふうに思っているか? 口うるさい姉だと思ってたりはしないかな?」
「そんなことないわ、私は本当に姉さまにあこがれているもの!」
「そうか。ありがとう。だが別に私が特別なわけではないよ。それぞれが立派に務めている。私も、私の役割を精一杯務めているだけなんだよ」
「むぅ…でも、他の子だって言っていたわ、姉さまはとても立派で、他の誰にもできないことをしている唯一無二の御方だって。もしかしたら、姉さまは神様よりもずっと――!」
「天使」
「あっ…」
「…ありがとう、天使。お前の気持ちはよくわかった。だけど、お前が犯した過ちがある。わかるね?」
「……ごめんなさい。神様を悪く言うつもりはなくて。私は、ただ、姉さまが素晴らしいって…言いたかっただけなの」
「そう、お前は自分の過ちをひとつは気づいているようだね」
「ひとつ…?」
「ああ。私を褒めるために、天主である神様を貶めてしまった。そのやり方が良くなかったのはお前も気づいたのだろう?」
「…はい。お許しください」
「ああ、神様もきっと赦してくださる。天使の言葉と気持ちが、ただ私への敬愛で満ちていたことはもちろん神様にはおわかりのことだろう」
「…他にも、私が犯した罪があるのです?」
「天使は私が神様のことをお慕いしているのはしっているだろう?」
「…もちろん、知ってます! 姉さまは他の誰よりも神様のお御使いとしてやっていらっしゃるもの!」
「では。天使、お前は私のことを好いているようだが… もし他の者に、『戦神なんかより、天使のほうがよほど可愛くて穏やかで素敵じゃないか』と褒められたらどう思う?」
「怒るわ! それにすごく悲しむわ! 私を褒めたいのかもしれないけれど、そのために姉さまを持ち出すなんて! それにそれは、私のほうが優れてるわけではなくて、姉さまとの違いってだけ。姉さまの良さは、私とは違う気高いお美しさや、凛々しく迷いの無い振る舞いやにもあるのだもの!」
「ああ、そうだね。そのとおりだよ、天使」
「??」
「お前が私に言ったのも、それと同じってことさ」
「あ…」
「神様と、私もまた違うんだ。私は神を守るために強くある。そして神はすべてを慈しみ、守るためにそこにおられる。役割が違うのだから、その魅力も違う…そして私もまた神に守られる身の一つに過ぎず、神に与えられたものによってこうしてお前たちに好いてもらうだけの魅力を持っていられるんだ」
「姉さま…」
「神様を差し置いて、私のことを慕ってくれる可愛いお前に、神に与えられた魅力でもって神様を出し抜くような言葉を向けられて、私がどう感じたか…天使なら、わかるだろう?」




