天使という者2
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魔王はその日、ずっとそのまま黙ったままで座り続けていたようだ。
天使は気疲れして、御車に寄りかかったまま眠ってしまっていたらしい。
おそらく夜更けもいい時間だろう。目を覚ました天使は起きた瞬間に、眠り込んでしまっていた自分を責めた。
だが、そっと振り向いてのぞき見た魔王は、最後に満たっときと同じ場所に薄絹の衣を敷いて、静かに横になっていた。
戦争を終えた夜だ、魔王だってきっとひどく披露しているのだろう――そう思った天使は、安堵の息を漏らす。
目が覚める気配は無い。
ただ、だまって息を潜めていれば、魔王が眠っているのだとわかる程度に静かな寝息は聞こえる。
(……一体…魔王様は、何を…?)
王ともあろう者が、板の間に薄衣を敷いただけの場所で寝てしまうなんて。
そう思ってから天使は、自分が魔王殿の御簾の中にいるからだと思い至る。
(そう、でした。私の今いるこの場所こそが、本当の魔王様の寝所でした…)
ほんの少し、良心がとがめた。
眠っている魔王を見て、あの瞳を思い出す。
孤独だけを物語る、あの瞳。
寂しそうとか悲しそうとか、そんな陳腐な言葉では表現できなかった。
そんなものはもうとっくに知っていると、その寂しさも悲しさも飲み込んで諦めて、虚しさに心を病ませ、そして受け入れては、その寂しさをまた味わい……
その繰り返しを何百、何千と…いや、どれだけ続ければ、あのような瞳になるのだろうか。
天使はふとそれを想像し、ブル、と身を震わせ 目を閉じて頭を振る。
目蓋の裏側にでも浮かんできそうなあの魔王の深い瞳から逃れるように、天使はそっと御車の中に潜り込み、端に身を寄せて小さくなって また眠りに落ちた――
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