帰還2
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魔国――
魔王達が地に降りたつまで、二刻程もかかっただろうか。
ともあれ神界を無事に落とし切り、この戦を見事に乗り切ったのだ。
魔の土地を踏んだ魔物たちは、興奮冷めやらぬ様子でめいめいに騒ぎ始めている。
ようやく緊張がほどけたのだろう、魔王がいまだ傍にいるというのに 皆、落ち着きがない。
着地したのは魔王殿よりもやや離れた場所で、一同はそれぞれに歩を進めた。
魔族の中には、そのまま自らの領地へ戻るものもいる。
戦の終わりとは思えない散会の仕方に、近衛は苦笑しながら魔王の後ろを歩いた。
王殿の手前の庭にまでつくと、王の帰殿を待つ家臣の姿があった。
「――お帰りを、お待ちもうしていた」
「クク。お前はもう、俺の家臣ではないと言ったのだが」
「知らぬようなら覚えてくだされ―― 主君に否定されたとて消えないものが、“真の忠義”というものじゃと」
「―――クク。昔から、お前は説教くさくてたまらないな」
「…………」
竜王の横を素通りする魔王の口許に、微笑。
頭を下げたままの竜王からは、安堵したかのような小さな溜息。
その様子を見ていた近衛と亀姫は、お互いに顔を見合わせて小さく笑った。
獣王は大きく伸びをしたかと思うと、ゴロリと転がって地に背をこすりつけていた。
(………さて)
魔王は王殿にはいるなり、まず一番に自分の社殿へと向かった。
結界の中に閉じ込めてあるとはいえ、神が失せたとなればその影響は皆無ではないだろう。
(…………)
しばしの間とはいえ、留守にしていた屋敷に 魔王は目もくれずに進んだ。
頭を垂れた使用人とすれ違ったような気もするが、よく覚えていない。
僅かでも歩を乱すことはなく、他に何を思うでもなく
気が付けばすでに大きな扉が目の前にあった。
焦っているような、落ち着き払っているような。
あるいは極度の緊張のあまり、心臓がとうに動きを止めてしまったような。
しかしそんな自分の状態にすら、意識を向ける時間は惜しい。
ゴゴギィと響く、重厚な開閉音。
暗い社殿の中に僅かな灯りが入り込む。
社殿の中にあった小さな蝋燭の灯のもとまで灯りが届くと、
魔王はそこでようやく、(ほぅ)と、気付かれぬ程度の安堵の息をついた。
「…………ぁ…」
天使が まだ、そこに居てくれた。
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