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汝の名は、魔王ー魔王と天使の物語ー  作者: 木彫りのクマ
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畏怖2


神の、元より真白の肌が、さらに蒼白に染まっていく。


近衛が、元勇者。

その素性を知って、多くの物に合点がいってしまったのだろう。



魔族を恨んでいるのは、人間世界を滅ぼしたのだから当然だ。

神をなんとも思わない無礼な態度も、神が人間世界を救わなかった事を思えば理解できる。

正体不明の余裕ですらも、狂人のそれだと思えばいい……



すべての辻妻が合ってしまったのだ。

神の目に、近衛は“魔王殺しのためならば神殺しも厭わない狂人”に見えているだろう。



(―――実際に、狂人なのかもしれないけれど)



亀姫は自分に言い聞かせ、自らを律する。

近衛に嘘があれば、それは見定めなければならない。妄信的に信じてはいけない。



『剣を…… 剣をしまえ。お前が魔王を憎んでいるのは理解した…!』



神は、近衛が持っている剣に注視しながら 震えていた。

魔族であれば、いくらか浄気を使ってしまえば追い払えると思っていたのだろう。


だが、剣を構えた勇者であるならば決して油断はならない。

その危機を前に、怯えているのだ。


(……神従者の言った通り、神は本当に戦向きではないのでしょうね)



神族自体が戦に不向きな種族と思っていても

内心では “神だけは強いのではないか”と思っていた。

だがこうして神自身をとって見ると、他の神族以上に戦に不向きなのが明白だ。



何しろ、武器らしきものを持ってさえいない。

浄気を纏ってはいるものの、本人は隙だらけで反応も鈍そうだった。


確かに神は、神の名に恥じない特別な気品のある佇まいをしているが、

それは王の威厳に似たものではなく、深層の令嬢が持つ儚さに似たものだ。


このような者が神なのだとしたら、戦神を警護にしているのも頷ける。



(……ああ、でも怯えているのは仕方ありませんわね)


(神界から勇者に授けた剣。もしそれが魔王殺しのために与えたものならば、その威力は本物なのでしょうから)



だとすれば、こちらは有利だ。

それこそ浄気を暴発でもさせない限り、神は下出に回るしかなくなる。


近衛もそれに気づいているのだろう。

大剣を時に大きく振り、驚かせる程度の威圧を繰り返している。

ビクリと肩を跳ねさせる神に同情してしまいそうだ。


『………い、生きていたとは思わなかった…。 だが死に損なったとは一体……?!』


「まあ死に損ないっていうか、魔王に生かされてるだけなんですけどね。人間としてはもう死んでるようなものです」


『魔王に……?』


「ええ」



「だからまあ、今更 自分の命を惜しむつもりもないんですよねぇ。暴風に巻き込まれて僕が死ぬとしても……―――それで魔王が死ぬなら、本望ですよ」




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