希望
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天空宮殿・最上階
天守閣
「……やはり、我々が憎いか…? 我らの手を取ることはできないのか…?」
「…………」
「魔王……?」
魔王は段々と苛立ちを覚え始めていた。
先ほどから胸の奥底に小さなわだかまりが出来ていて、それが魔王の気に障っている。
「そんな言葉を、俺が信じると思うのか」
「信じてほしいんだ!」
「馬鹿な。魔王が神族の手をとるだなどと――……
口から出てくる言葉が、空々しく感じた。
違和感にも似た嘘くささ。言葉が続かない。
愛しいものを手に入れるためには、奪い取るしか方法がなかった
自分は悪だから。
魔王だから。
どんな方法を選んだとしても、許されることはない。
愛することも、愛されることも 自分が行えばそれは何かの悪行の一端を演出するだけ。
(………天使を愛する方法だけでなく、愛される方法があるというのか?)
天使と笑いあえる未来。
そんなものがあるのなら、縋り付いてみたい。
「………いや。もういい、話は終わりだ。お前の話は夢物語、乗ってやるにはあまりにも稚拙すぎる」
「夢物語などではないと言っているだろう!?」
出来るものか。叶うものか。
神と魔王が共に切望するような願いならば、とっくに叶っていておかしくない。
「夢物語だ。……どれだけ望んだとしても叶わない物を追うなど、馬鹿げている」
必死に否定しなくては、自分まで夢物語を追い求めてしまう。
魔王はそんな危機感に追い立てられていた。
信じてみたいと思った。
信じたかった。
だから、もっと信じさせて欲しい。
――信じられるだけの言葉が、欲しい。
そんな自分の祈りに、苛立たしさが募っていく。
馬鹿げている。天使と共に生きる幸福を、神頼みにして説かれるなどまっぴらだ。
「惑わされはしない。俺はやはりお前を殺し、自分の手で得られる分だけを………」
そう言いながらも、脳裏には天使の泣き顔が浮かぶ。
神界を滅ぼした後は、きっと天使を飼育するように生かすことになるだろう。
それは、天使の側に確実に居られる方法だ。
だが同時に、微笑みや愛を得る機会を永遠に失う方法だ。
自分の手で得られるやり方では、それだけしか得られない。
「………――っ」
それでいいはずだった。充分だと思っていた。
それ以上は望めるわけがなかった。だから、納得できていた。――なのに。
「私の手を取ってくれ。――共に、生きよう」
いっそ大嘘だと言ってくれ。そんなこと本当に出来るわけないと。
騙してやったと、そう言って嗤ってくれ。
「……もう、これ以上、お前の言葉を聞いている気になれない…」
腰元で構えていた刀。元より抜身のその刀を、上段に大きく振り上げる。
何もかもが鬱陶しくて気障りだったから、迷いごと、一刀両断に斬り捨ててしまいたかった。
「魔……!」
夢を見せられて、息苦しい。
掲げた刀が重過ぎる。
「死ね……!」
ビュ…ッ………
ガギィン……!
神に向けて、振り下ろした刀。
無防備な神を、斬り捨てるための一太刀。
「…………っ…!」
「…………ぇ」
その切っ先は神に届かないまま
勢いよく地を斬りつけた。
迷いが、一歩踏み出すことを阻んでしまったのだ。
「…………魔、王…?」
「…………っ」




