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汝の名は、魔王ー魔王と天使の物語ー  作者: 木彫りのクマ
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疑惑


――――――――――――――――――――――――


天空宮殿・最深部

――始まりの間



・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・



ゴ……ゴゴゴ……


石造りの扉が、左右の壁の中に吸い込まれていく。

扉という名の大岩を引きずる振動は大きく、この地下穴が崩れてしまわないか心配になる。


開いた室内には灯りがともされていて、先ほどまで暗闇にいた亀姫は目を眩ませた。

もしも奇襲を仕掛けねばならなかったとすれば、これは致命的だったろう。



『!!』


「…………失礼します」



先に足を踏み込んだのは近衛。

ここまでの間、目を閉じていたのかもしれない。迷いのない足取りだった。



気配を頼りに、亀姫はその後ろについて歩く。

いざ攻撃をする時に、亀姫の身体が近衛の邪魔になってはいけない。



『何者だ……!?』


「貴方が、神でいらっしゃいますか?」



近衛が堂々とした態度で神に語り掛けるのを聞き、

亀姫は顔を伏せ、近衛の従者のように控えることにした。


近衛がうまく会話できるのなら、

神を刺激しないためにも、主人とその大人しい下僕のように見せかけるのが得策だろう。



『……魔族か…!?』


「はい。ですが、魔族であってもあなたに逆らう者ではありませんよ」


『何…?』



(……飄々としたものね、上手な演技ですこと。…こんな一面があるのは知りませんでしたわ)



堂々としているどころか、近衛はいつも以上に軽快な口ぶりだ。

会いたかった人に会えたような、喜色めいた声色をしている。



「………自分は、魔王に仕える近衛でしてね」


『なぜここを…! チッ』


「ああ、お待ちください。自分を殺すのは、話を聞いてからにしていただけませんか?」ニコ



(……近衛?)


まさか自分の正体をあっさりと名乗るとは思わなかった。

刺激をしないようにするはずだったのに、近衛という職を名乗っては逆効果ではないだろうか。


近衛がどのようにして神の油断を誘うつもりなのか、打ち合わせる時間がなかったのが悔やまれる。

しかし初まってしまった以上、亀姫にはどうしようもない。


どのような状況にも対応できるよう、

今はしっかりと二人の会話を聞いているしかないのだ。



『………』


「っと。ああ。もしかして、後ろのソレですかね…? 貴方が魔王を殺すための、切り札とやらは」


『これは……』


「もっとわかりにくいかと思っていましたよ。浄気…でしたっけ? 目に見えない状態で、貴方の体内にでもあったらどうしようかと」クスクス


『……誰から何をきいてきた。話とは、なんだ』


「せっかちですね。ソレが交渉の肝となるんですから、少しくらい吟味させてくださいよ」ニコ


『交渉…?』



(近衛… いくら演技とはいえ、なんだか普段とあまりにも違いすぎて…)



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