神の迎合4
「………謝罪、だと…?」
これには魔王も眉を顰め、神の言葉の真意を窺った。
獣王にいたっては、明らかに警戒を強めて唸り声を上げている。
「……神の間への入り口にあったステンドグラス。あれは正しく、魔王と神の姿を描いたものだ。…その話から始めよう」
「遠く遠い昔―― 最初の魔王は、元々は我らと同じ神族… 天使だったんだ」
「な…に…?」
「魔王の元となった天使は、罪を犯し、心を黒く染め、この神界から堕ちたという」
「……その天使は、ひどく我らを憎んでいた。浄気すらも憎み、魔素という新たな力に変えてしまうほどに、我らを憎んでいたんだ」
「……」
「罪を被った天使は自らを魔と名乗り、悪であると宣言し 我らと対立したのだ」
「……ふん。それが事実であったとして、罪が冤罪であったわけでもないのだろう。謝罪など俺は求めていない」
「ああ。確かに罪は罪だ。我らはいずれ彼を赦すつもりだった。だが、彼は赦しを受けることすらも拒絶した」
「彼は罪人であり続けた。赦すこともさせてもらえなかった」
「その時になって、ようやく我らは気付いたのだ」
「裁きと赦し…神であれば当然であると思っていたその行為が、ひどく自我に満ちた行為であることに」
「……あのステンドグラスに描かれているのは、彼の姿だ」
「この神界に、彼の居場所を作り続けるために描かれたものだ」
「……それで」
「……結局、彼はその死を迎えてもここには帰ってこなかった」
「代が変わり、跡を継いだ魔王も どう教えられたものか我らを憎みつづけた」
「もちろん、我らは何度も接触を図った! そこにいる……四神だって、そうだ!」
「何ヲ。我ガ祖先は、今のお前たち神族とは違ウ」
「違うと思いこませたんだ!!」
「……!?」
「魔王が我らを憎んでいる限り、四神が我らの手の内の者だとわかれば会話も出来ぬまま殺されてしまう!」
「……朱雀のようにか?」
「――っ。朱雀は、翼持ちだった。だから朱雀は神界との繋がりをとれるものとして、真実が教えられていた…」
「竜族にも翼はある。 竜族も、真実を知る一族なのか」
「違う。竜族は…朱雀が使えなくなった場合の、予備だった」
「予備…?」
「……罵ってくれて構わない。我らはいつでも二の手、三の手を用意して、失策を恐れる脆弱者だ」
「--悪いが、罵るほどにはお前たちに興味を持っていない。話を続けろ」
「……四神に与えられた役割は、魔王に負けて魔王の配下となることだった」
「魔王の配下となり、魔王の心を解き、我らと接触する機会を作る…」
「だが、天界へと昇る姿を見られた朱雀は、魔王に詰問された。朱雀はこの作戦をどうにか全うしようと考えていたのだろう」
「何も語らず。事情も知らぬ残りの三神にすべてを託し、口を固く閉ざしたまま、自らの炎によって絶命した……知られてしまえば、どう事態が転ぶかわからない」
「ふ、おかしな話だな。こちらでは朱雀は、魔王が焼き殺して食べた、と聞いているが」
「……『悪を悪と思わず、善を善と思わず』…お前も、そう教えられているのだろう」
「――なぜ、それを」
「魔王は代が変わっても、常に罪人であり続けた。その存在に深く刻まれた呪いのような言葉と教訓…」
「語らず死した朱雀の正体に気づいていたのだろう。魔王は朱雀の死すらも、自らの罪として――己に関わったが故の死だとして、自らに被せたのだ」
「……」
「魔王は、代を重ねるごとに罪を増やし、力をつけつづけた。もはや我々では手出しができぬほどに…悪行を被り、不浄となり、我らから遠ざかって行った」
「そして我らに、“善”を強いた。――すべての善行は神の物となり、すべての悪行は魔王の物となったのだ」
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