神の迎合2
「…………なんだと?」
「魔王サマ! 神族の話などニ耳を傾けてハならなイ!!」
「我らは、その獣のように、魔王も話を聴かぬものと思っていたのだ!!!」
「ガゥルルル!!!!」
「獣王、待て…」
騒ぎ立てる声を聞き、鬱陶しそうに目を細めた魔王。
諌めるために低く出した声に、獣も神も目を向けている。
「ククク、もちろんこれも策である可能性は大きい」
「だが、神の嘆願を魔王が聞くなど… なかなか面白いではないか? 天使への土産にもなろう。聞いてやってもよいと思うがな」
「魔王サマ!!!」
「……それに、あのステンドグラスの事も腑に落ちないでいた」
「ステンど…グラす…?」
「魔王と神を描いた2枚のガラスだ…聞いてくれるのであればそれについても説明しよう」
「クク…好きに語るがよい。いつ俺の気が変わってお前を殺すか保証はしないが、それまでは聞いてやるぞ…?」
「グルル…」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「戦を仕掛けたのは、確かなんだ。……そればかりは弁解のしようもない」
「………」
握りしめた剣を見つめて、神はそう切り出した。
神はどう話を続けるか、思考を巡らせているらしい。魔王は構えたまま、次の句を待った。
「我らは、お前たちを脅威だと感じていた――」
「策を張り巡らせ、裏を読み、その裏にも手を打って……そこまでしなければ、勝てないと思っていた」
「我らの作戦では、魔王がここに辿り着くまでに充分消耗させておくはずだった。 私が…たとえ相打ちになろうとも、魔王を戦闘不能な状態にまで持ち込めると考えていた」
「……侮られたものだな」
「侮ってなどいない!!」
「……」
「侮ってなど、いない……。我らが魔王を戦闘不能にできる可能性があるとすれば、その策しかありえなかったんだ」
「……正面きって戦えば、負けることは明白だった。賢い手を探し、少しでも多くの神族を生かして残す方法をかんがえた」
「だが、魔王を戦闘不能に持ち込むには、結果的に総力戦をしいられる……」
「だから我らは最初から、すべてを犠牲にしてでも、最も確実に近い方法を選ぶしかなかったのだ」
「ふ。神のくせにずいぶんと弱気ではないか」
「……我らは戦闘など行わない。我が剣も、本来は警護のための剣…。人間世界で起きる争いを止めるため、強さの象徴として磨かれた」
「……象徴、偶像。神の名にあっては決してほかに比べて劣ることはないが、所詮はお飾りの剣だ。実戦経験などない」
「戦になど向いていない神族が、負けると踏んでいてなぜ戦を仕掛けた?」
「……話を、するためだ」
「話だと…?」
「戦闘可能な状態の魔王と、言葉を交わすことなどできないと思っていた」
「幾ばくかの神族を遣いとして降ろしたところで、魔素の土地で弱り、むざむざと殺されると考えていたんだ」
「だから……総力をもって、魔王を抑え込むために。魔王をこの神界におびき寄せる必要があった」
「それが、この戦争を仕掛けた理由か。して、そこまでして話すべき要件とはなんだ」
神はビクリと身を震わせた。
本当に口にしていいものか悩むように、口を開けては閉じ、剣を見つめ――視線を落とした。
それから、ゆっくりと剣を鞘に収めた。
「……何のつもりだ」
神はその質問には答えず、魔王にむけてゆっくりと片膝をつき……はっきりと告げた。
「――謝罪と、和解の申し入れだ」




