神の迎合
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天空宮殿・最上階
天守閣――
「ガウルルルルァァ!!!」
「無駄だっ! 私に噛み付こうと、その牙は決して通らない!!」
「そうかもしれん。だが――」
ボウッ!!
魔王が放った魔力弾が神に触れる。
するとその瞬間、喰らいついていた獣の牙が深く刺さり肉を抉った。
「ぐゥ――ッ」
「魔力を同時に当てれば、その道理も効かぬようではないか」クク
「魔王――ッ!」
「クク……勇ましいな。剣技も見事だ。女性神でなまぬるいなどと侮ったこと、謝罪してやっても良いぞ」
「――謝罪など……っ」
「「ガウァァッ!!」」
「~~~死にぞこないの獣が、邪魔をするな!」
ッキーーーン!
自らの脚すれすれの位置に剣を振り下ろし、足元に噛み付いた獣を斬る。
喰らいついていて無防備な顔面をやられた獣は、たまらずに声を上げ口を離してしまった。
「よくやった、お前たち」
剣を完全に振り下ろしきった隙をついて、魔王が神の懐近くまで跳躍する。
あまりの勢いに、体当たりと見間違う。
魔王の身体全体に纏わせた魔素が神に触れる距離まで近づくと――
「……!」
「――」
斬るというよりは、刺すに近い攻撃だった。
魔王は確かに優勢だったが、神の剣技が魔王を超えているのには気付いている。
優勢で居られるのは、がむしゃらな獣達が作る“時間”のおかげだ。
神だけに注目し、頭と身体を使える魔王に対し
神は獣の分も動きを計算しなければならない。
その僅かな演算速度の差が、魔王の優勢を支えている。
だからこそ、斬りつける為に刀を振る一瞬の時間ですら与える余裕はなかった。
「っ、カハ…ッ…!」
「ちっ!!」
魔王の刀は確かに神に刺さった。
だが即時に浄気を噴出され、魔王は抉ることも払うことも出来ぬまま後方へ跳び逃げる。
「………っ」
「ただ穴を開けただけだが、少しは効いたようだな」
「魔王、らしくない戦い方を…っ しやが、って……っ」
「……らしくないだと? どんな攻撃をすると思っていたやら」
「な、ぜ……私を、殺す気にならぬのだ…っ」
「…………っ」
「グル…… 魔王サマ…?」
言葉に詰まった魔王を、訝しげに獣王が見つめる。
魔王は改めて構えを取り、神を見据えながら獣王の不安を払拭してやった。
「勘違いするな……殺す気がないわけではない」
「ならば、急所をはずし甚振るのが目的か…!?」
「クク、おかしなことを」
「ではなぜ……!!」
「逆に問おう」
「おまえは何故、既に死を決意しているのだ?」
「……っ」
「確かに目を見張る剣技だ。だがあまりにも豪胆すぎる」
「勝って生き残ることを見据えた戦い方ではない――相手さえ破ればよいという剣だ」
「どういうつもりか知らぬ。知らぬが、おまえが相打ちを狙っているのなら…下手に討つのも討たれるのも早計だろう?」
「……お前は…本当に、魔王なのか……?」
「くく。本当におかしな質問をするな。俺が俺でなくて、誰だというのだ?」
「だが…魔王はもっと横暴に、自分の不都合を排除していたじゃないか…」
「……ほう? 魔王を知っているかのような口ぶりだな」
「知っている―― お前は…魔王は! 我らが守り育てていた人間の世を滅茶苦茶にし、奪ったではないか!!!!」
「……先代魔王サマの、人間掃討戦のことカ」
「先代…?」
「クク。成程… 俺と父君を間違っていたか。確かに俺は代が浅いからな」
「それでは…お前は…」
「残念だったな…? 誇り高く、強き賢王と謳われた父君は既に魔王ではない」
「“魔王らしく誇り高い戦闘”など―― してやるつもりはないぞ?」クク…
「な……」
「くく。つまらぬ誤解に余計な詮索をしたようだ。どういう理屈かわからんが…つまり俺は俺らしく、魔王らしくない殺し方をしていればよいのだな…?」
「ま…待て…っ!」
「クク。自らで仕掛けた戦だろう。策を間違えたからといって、今更命乞いなど――
「お前は! 現魔王のお前は―― 我ら神族と話をするつもりはあるか!?」




