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汝の名は、魔王ー魔王と天使の物語ー  作者: 木彫りのクマ
58/99

神の迎合


――――――――――――――――――――――――


天空宮殿・最上階

天守閣――



「ガウルルルルァァ!!!」


「無駄だっ! 私に噛み付こうと、その牙は決して通らない!!」


「そうかもしれん。だが――」



ボウッ!!

魔王が放った魔力弾が神に触れる。

するとその瞬間、喰らいついていた獣の牙が深く刺さり肉を抉った。



「ぐゥ――ッ」


「魔力を同時に当てれば、その道理も効かぬようではないか」クク


「魔王――ッ!」


「クク……勇ましいな。剣技も見事だ。女性神でなまぬるいなどと侮ったこと、謝罪してやっても良いぞ」


「――謝罪など……っ」


「「ガウァァッ!!」」


「~~~死にぞこないの獣が、邪魔をするな!」



ッキーーーン!

自らの脚すれすれの位置に剣を振り下ろし、足元に噛み付いた獣を斬る。

喰らいついていて無防備な顔面をやられた獣は、たまらずに声を上げ口を離してしまった。



「よくやった、お前たち」



剣を完全に振り下ろしきった隙をついて、魔王が神の懐近くまで跳躍する。

あまりの勢いに、体当たりと見間違う。

魔王の身体全体に纏わせた魔素が神に触れる距離まで近づくと――



「……!」


「――」



斬るというよりは、刺すに近い攻撃だった。

魔王は確かに優勢だったが、神の剣技が魔王を超えているのには気付いている。

優勢で居られるのは、がむしゃらな獣達が作る“時間”のおかげだ。


神だけに注目し、頭と身体を使える魔王に対し

神は獣の分も動きを計算しなければならない。


その僅かな演算速度の差が、魔王の優勢を支えている。

だからこそ、斬りつける為に刀を振る一瞬の時間ですら与える余裕はなかった。



「っ、カハ…ッ…!」


「ちっ!!」



魔王の刀は確かに神に刺さった。

だが即時に浄気を噴出され、魔王は抉ることも払うことも出来ぬまま後方へ跳び逃げる。



「………っ」


「ただ穴を開けただけだが、少しは効いたようだな」


「魔王、らしくない戦い方を…っ しやが、って……っ」


「……らしくないだと? どんな攻撃をすると思っていたやら」



「な、ぜ……私を、殺す気にならぬのだ…っ」



「…………っ」



「グル…… 魔王サマ…?」



言葉に詰まった魔王を、訝しげに獣王が見つめる。

魔王は改めて構えを取り、神を見据えながら獣王の不安を払拭してやった。



「勘違いするな……殺す気がないわけではない」


「ならば、急所をはずし甚振るのが目的か…!?」


「クク、おかしなことを」


「ではなぜ……!!」


「逆に問おう」



「おまえは何故、既に死を決意しているのだ?」



「……っ」



「確かに目を見張る剣技だ。だがあまりにも豪胆すぎる」


「勝って生き残ることを見据えた戦い方ではない――相手さえ破ればよいという剣だ」


「どういうつもりか知らぬ。知らぬが、おまえが相打ちを狙っているのなら…下手に討つのも討たれるのも早計だろう?」



「……お前は…本当に、魔王なのか……?」


「くく。本当におかしな質問をするな。俺が俺でなくて、誰だというのだ?」


「だが…魔王はもっと横暴に、自分の不都合を排除していたじゃないか…」


「……ほう? 魔王を知っているかのような口ぶりだな」


「知っている―― お前は…魔王は! 我らが守り育てていた人間の世を滅茶苦茶にし、奪ったではないか!!!!」



「……先代魔王サマの、人間掃討戦のことカ」


「先代…?」


「クク。成程… 俺と父君を間違っていたか。確かに俺は代が浅いからな」


「それでは…お前は…」


「残念だったな…? 誇り高く、強き賢王と謳われた父君は既に魔王ではない」


「“魔王らしく誇り高い戦闘”など―― してやるつもりはないぞ?」クク…


「な……」



「くく。つまらぬ誤解に余計な詮索をしたようだ。どういう理屈かわからんが…つまり俺は俺らしく、魔王らしくない殺し方をしていればよいのだな…?」


「ま…待て…っ!」


「クク。自らで仕掛けた戦だろう。策を間違えたからといって、今更命乞いなど――



「お前は! 現魔王のお前は―― 我ら神族と話をするつもりはあるか!?」




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