最下階:始まりの間3
ッシュルルルル・・・!!!
ザッザッザッザッザッザッ・・・・・・!
更に速度を増して階段を下りる。
もう既にかなり降りたように思うが、前も後ろも見えない暗闇の中で距離の感覚は鈍い。
近衛に担がれたまま、努めて冷静に神従者が説明を始めた。
「……あなた方は正面から、神族を討ってきたのでしょう?」
「ですが、全てが罠なのです。快進撃ですら、神に仕組まれていたもの」
「連戦による疲弊を狙っただけではないと仰るの?」
「……神族は“浄気”と“物理”のどちらで攻撃してきましたか?」
(……!)
「……言われてみると、弓を射たり体当たりをしたり…物理攻撃ばかりでしたわ」
「でしょうね。浄気を減らさずに、魔王に“魔素を使わせる”ことが目的なのです」
「魔素を…」
「浄気を纏う天使を倒すには、魔素を当てるのが効果的。ましてや接近して攻撃しようとしてくるなら、なおさら遠距離で倒せる魔力攻撃を仕掛けるでしょう」
「……陛下は別の理由で、初めから魔力攻撃をなさっていましたわ」
「初めから?」
「ええ。それに神族を倒す以外でも、余計に魔力を使っていらっしゃるはず。陛下は刀による攻撃にも優れていますもの、魔素が減れば刀で凌ぐおつもりなのかも――」
「戦神妃は武力と剣技の神。 いくら腕に自信があろうと、魔力抜きで勝てる相手ではありません」
「魔王様も馬鹿ではありませんわ。神との戦をするつもりなのですから、きちんと魔力も残しているはず」
「……ええ。ですが残した魔力が“十分量”に届かなければそれでいいのです」
「戦神妃に、物理攻撃は通用しませんから」
「……なんですって?」
「彼女は強力な加護の持ち主なのです。魔素によってその加護を弱めなければ、いくら叩いた所でダメージにならないのです」
「……いくら腕があろうと、魔素がなければ戦いにならないのね」
「ええ。だからこそ、疲労を感じて魔素を温存する気にならないよう、少しでも多くの魔素を消費させるように、快進撃をさせたのです」
「……そう。だけどそれは陛下が“負ける”理由にはならないわ。勝てないだけ」
「陛下は決して戦闘狂ではありませんわ。分が悪ければあっさりと撤退を選ぶことでしょう」
「その機を待って、神が地下にいるのですよ」
「……?」
「浄気をなるべく使わせないまま、あっさりと神族を殺させたのはもうひとつ理由があります」
「……神族が死ぬと体内から抜け出す浄気。それを一箇所に集めているのですよ」
「抵抗する術を失くした魔王に、確実にとどめを刺すために……っ!!」
「――な」
「神族は…っ 魔王の魔力を減らす為に慣れぬ戦場へ向かわされ…っ! 神がその浄気を取る為に、最初から殺される予定だったんです…!!」
「神は! 魔王を殺し理想郷を築くために!! 人間の世も、魔の国も、この神界ですらも全てを殺し! 無くし! 創りかえるつもりなのです!!!!」
走りながら、腕の中で語られる災厄の姿。
近衛がそれに激昂するより先に、亀姫の足が止まったのは幸いだ。
「……これより先は、行き止まりですわ」
「……っ! それなら、ここが入り口です……
天空宮殿・深奥の間。この天空宮殿の基盤となったといわれる原始の部屋……
別名、『始まりの間』です」




