最下層:始まりの間
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天空宮殿――宮殿前
目の前にある大宮殿の入り口。
先ほど、魔王たちと別行動を取ることにしたその場所まで戻ってきた。
近衛は腕に神従者を抱えて、亀姫は周辺警戒をしながら走ってきた。
「そこの入り口では駄目です、手前にある小さな噴水の所へ!」
神従者が指し示した場所に、入り口を飾るための“置物の噴水”があった。
正確に言えば、噴水を模した彫像。
実際に水は沸いておらず、甕を肩に乗せた天使の足元に円形の桶があるだけだ。
周囲には花とも草とも言えぬ、綿のような植物が植え込まれている。
近衛が彫像の前で止まり神従者を降ろすと、神従者は小走りで植え込みに入っていく。
「……これですか?」
「この、台座の桶の部分を……っ ま、まわ…」グッ
「自分がやりましょう。まわせばいいんですね?」
近衛も台座に手を掛ける。
重たい石臼と同じ感触で台座が回転すると、風化で抉れたように見えた底部分と奥にあった穴が合致し、穴が現れた。
神従者はそれをみるなり後ろ手で翼を押さえ、身を細くして穴の中へと入りこむ。
肩口あたりで膨らんだ翼が穴の縁に引っかかると、神従者は低く呻き痛みを堪えた。
「あなた、大丈夫ですの。その翼…」
「はは…折れたようで、根元のほうがうまくたためません」
治療を施すべきなのだろうが、そんな場合ではない。
自分達から離れてもよいが、囚人である彼にはこの神界のどこにも居場所はない。
亀姫の治療術は魔素を用いるので、神従者には使えない――
痛々しいことこの上ないが、せめて気遣うほかに出来ることはなかった。
「気にしないでください。元々、使い物にはならなかったのです。そんな翼であなた方を支えて塔を出て、まだ残っていることの方が信じられません」
「……感謝いたしますわ」
「はは…。あなた方のもっていた、あの翼を使うわけにいきませんからね…」
「…すみません」
話しながらも、順に穴に潜り込む。
穴は1.5m程度の深さだったが、その奥には階段があり、降りるにつれて天井は高くなった。
光は射さない。
時折、壁に蜀台を置くための窪みが見られるが、灯している猶予はないだろう。
お互いの姿を確認することも出来ないほどの暗闇。
どうしたわけか自信ありげな亀姫に先導を任せ、神従者を担いで近衛も降りることにした。
「それで…あとどれくらい進むんですの」
「目的は最下層です。宮殿の中央に位置する最深部………」
「――そこに、“神”が居ます」




