塔へ2
身体ひとつ分ほどの小さな穴ができた。
中を覗き込むと、塔の中は不思議な深い空洞であった。
長い塔の内部は吹き抜けになっており、ちょうど半円の分だけに床がある。
吹き抜けを飛んで階を移動する設計なのだろう。
足元に飛び出した屋根の梁を蹴り動かして穴に掛け、そこから紐を垂らして内部へと降りた。
半円の床の終わり、吹き抜けの始まりの部分に、梯子のようなものを見つける。
飛べない者の為に用意されているのだろうが、実際に使うには粗末過ぎる代物だ。
――実際、朽ちた梯子の所々は段が無くなり、ただの棒になってしまっている。
「自分が先に降ります…1階ずつ互いに待ちながら、順に降りましょう。無理ならばそう仰ってください」
「心配はご無用ですわ。梯子ではなく棒なら…巻きついて降りられますもの」
(…滑り棒…。むしろ自分は待ってもらえるのだろうか)
シュルル…ギシッ、メシ…シュルルル…
「近衛。底に、何かいますわ」
「あれは…?」
近づくにつれ姿が明瞭になっていく。
ずっぽりと被った薄汚れたローブ。あたりに舞い散った羽と、羽の抜け落ちた翼……
ある程度の高さまでいくと、近衛は一息に飛び降りた。
ナイフを構えて近づいてみるが、うずくまった姿勢のそれは動かないままだ。
シュルリ、と背後に降りた亀姫の気配を感じたところで、指示を仰ぐ。
「神族と思われます。…何か聞き出しますか、それとも倒しますか?」
「……というよりも、既に死んでいるのでは?」
「生きて…おります……。謀叛の罪を着せられ……ここに、閉じ込められておりました…」
「!!」
「!」
ゆっくりと顔を上げたのは羽の傷付いた天使だった。
「……ワタシは神従者と申します。多くのものがそうであるように、個別の名は持ちません。ただ、役割のみが神より与えられしもの・・・。ですが、罪を負ったワタシは、今はこの役割でさえ名乗るべきではないのかもしれません・・・・」
こちらを見てはいるものの、その声音ともに、段々と顔も沈み込んでいく。小さく腕を振るわせて、首を振り、何かに抗うように苦悩のうめき声を上げては、なにかをつぶやき続けていた。
「神従者、ですか。ここに閉じ込められていたと……?」
「は、はい。………あなた方は…見たところ、人間のようですが…?」
「あら、そう見えて? でも残念ですわね。私も、この子も……魔族ですわ」
(………亀姫様…)
「ああ。そう……魔族、ですか」
「驚きませんのね」
「そそのかされ、天界を滅ぼしにきたのでしょう?」
「え」
「……閉じ込められていた割に、まるで事情を知っているかのごとく当たり前におっしゃいますのね」
「ええ。ワタシは、魔族を逆撫でし天界へ差し向けた罪で、翼を毟られここに投げ捨てられましたから…。魔族が来る可能性を知っていました」
「!! 貴方が……戦争を仕掛けたということですか?!」
「ち、違います! 全ては神のした事…! ワタシはその神の業を着せられたのでございます!」
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