塔へ
――――――――――――――――――
――謎の塔、屋根の上…
……………
………
ビュゥゥ…ザッ!
「っ、きゃっ!!」
「亀姫様!」
先に屋根の上に降りていた近衛が、滑り落ちてきた亀姫の抱える翼を掴む。
すぐさま反対の手で亀姫の腕を掴み、引き上げた。
「…っはぁ。助かりましたわ」
「最後の着地で滑るとは……自分も一瞬、気を抜きかけた所でした。無事でよかった」
「ごめんなさいませ…あまり足元の安定は得意ではありませんの。屋根の上まで届いたなら、転げ倒れて着地するつもりだったのが仇になりましたのよ」
本当は着地の際、近衛に対して僅かに感じてしまった恐怖心を思い出し、動揺して足を滑らせた。
だが、受け止めてくれた近衛は普段どおりの近衛だ。
律儀な仕草で亀姫を屋根の上に座らせ、自らはその足下、滑り止めとなる位置に回ってくれる。
「それならそうと、何故それを先に………あ、ええと、その。……いえ、その脚では仕方ありませんよね」
叱責するような口調から一転、誤魔化すように苦笑して目を逸らす近衛。
亀姫はようやく自分の着物の裾がひどくはだけていることに気付き、慌てて引き寄せた。
…先ほどの廊下で感じたのは錯覚なのではと思うほど、“いつもの坊や”だった。
危うく死に掛けたこともあり、亀姫はおおきく息を吐いて気を取り直す。
「……ごめんなさい、不快なものを見せましたわ。もう隠しましたから安心なさって」
「不快だなんて。想像以上に艶かしかったもので、目のやり場に困っただけです」
「………近衛については、単に適応力が異常なだけだと思うことにしますわ…」
「え?」
「さ、それより早く中へ」
「あ、待ってください」
「何ですの? ロープ代わりの布ならきちんとこちらに…」
「いえ。足元に自信がないのでしたら、ロープで外壁を伝い、大扉まで這うのはお辛いでしょう。屋根を破りましょう」
「この屋根を? 破れますの?」
近衛は屋根の上を何度か踏み比べて歩き、足元の反響を確かめる。
それから屋根の中腹のあたりで、立ち止まった。
「亀姫、こちらへ。本来ならば、離れて…と言うべきなのでしょうが、少し揺れるでしょうから。…自分にしっかりとしがみついていて下さい」
「え、ええ。滑り落ちては元も子もありませんものね」
「この屋根、さすがに一撃では厳しいです。三撃は行きますよ……――っ、はぁぁぁっ!!!!」
ダガァァァァン!! がらららっ…
ドカァッ!!! バキバキバキ………
ベキャキャキャキャ……!!!
「まぁ…。細腕の割りに、意外に力もありますのね」
「刀だったらまず無理です…。このナイフの特徴ゆえですよ」
「切り裂くことも、穿つことも出来るなんて…剣というのは便利ですわね」
「普通の剣がどうかまでは、保障しませんよ。さて、中の様子は…」




