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汝の名は、魔王ー魔王と天使の物語ー  作者: 木彫りのクマ
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発見4

―――――――――――――――――――

天空宮殿 6階



「落ちるって…こういう事ですか」



近衛と亀姫がいるのは、6階の大廊下

――先ほどまでいた場所とよく似た廊下だ。



「魔王様が神族を倒しておいてくださったおかげで、あっさりと上階にあがれましたわね」



ここでは魔王による戦闘があったのだろう。


崩れた壁や割れた窓ガラスを脚で蹴りどかし、外を覗き込む。

眼下には、先ほどの塔の屋根が見えた。



「下に屋根が見えるとはいえ、飛び降りて落下中に飛距離を稼ぐに充分な高度とは思いませんよ…。ただ真下に落ちてしまうのでは?」


「そうですわね。そして、ここからただ落ちたら、むしろ強く堀にたたきこまれるでしょう。……雲の下まで突き抜けてしまいそう」


「雲の下まで…。せいぜい数十メートルのつもりが実は何百キロの高さだなんて。笑えません。……本当にここから落ちるおつもりですか?」


「あら、もちろんそのまま落ちたりしませんわ。……翼を持ち、滑空するのです」


「翼…?」


「ええ。たくさんありますでしょう?」



亀姫が指差した先の通路には、魔王達の倒した神族の骸が点々と転がっていた。



「………まさか…」


「察してくださって助かりますわ。さ、取っておいでなさい。ああ…首と腕と、胸下は要りませんわ。邪魔ですもの」



あっさりと言ってのけた死体損壊令に、近衛は躊躇する。

……神殺しだけでも罪深く感じたのに、まさかその遺骸を弄ぶ事になるとは。



「私の分と坊やの分で2体ね。あまり硬直していない、翼の綺麗に残った骸を選んで頂戴。……これなんてどうかしら?」



亀姫が扇で指し示した遺骸は、身体の中央が瓦礫の破片に穿たれている。

壁に打ち付けられて死したのだろう。崩れた身体は壁を背に座り込んでいるように見えた。

大きく広げられたままの翼が、最期の瞬間の衝撃を語っている。


「―――…」


「近衛?」



躊躇している場合ではない。

ここは戦場で、自分は魔王の近衛。討った敵の首を刎ねることなど初めてではない。


――拷問にかけ生きたまま耳を刎ねるよりは、余程楽なものだ。

そう自分に言い聞かせて、目を閉じて深呼吸をした。


目を開き、件の死骸に近寄る。


警戒しながら翼に触れてみたが、その身体は既に浄気を失っており、神族というよりは…ただの、鳥の死骸に見えた。



(……鳥…か)



魔王が最初に斬り落とした腕を思い出す。

あの時は、ただの木の枝のように見えた。……ソレに比べれば、これが元生物に見えるだけ正気を保っているのだろう。



ゴジュ…ジュブ…。

ガツッ……グッ、バキャッ、ダンッ。



ナイフは胴体に差し込まれると、一瞬のうちに大剣化して深くまで裂き入った。

その感触を確かめてから、”ゆっくりと” 力を込めて引き下ろし…二分した。


大きな種の入った果実を、割るのによく似ている。

もちろんこれは種ではなく、骨なのだろうが。


「……一息に斬り捨てればよいものを。まさか肉斬りの趣味がおありなの?」



多少の嫌悪感を浮かべた様子で、亀姫は問いかけてくる。

誤解をされてはたまらないが、そう見えても仕方ないだろう。近衛は苦笑し、弁解する。



「いえ。こうすれば、“怖ろしく生々しい作業だ”と、吐き気のひとつも催すかと思ったんですよ」


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