発見2
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天空宮殿3階――大廊下
長く伸びる通路の途中で、外壁につけられた不審な大扉。
通路にあった飾り窓から、反対の位置に立つ塔が見えている。
それからその塔には、こちらと同じ装飾の大扉がついているのも見えた。
亀姫と顔を見合わせ、コクリと頷いた。
――ザァッ!!!
近衛が扉を開けると、強すぎる勢いで外気が流れ込み 亀姫は顔を顰める。
「あちらの塔への渡り通路だろうとは思いましたが… まさか、完全に落ちているとはね」
「陛下の攻撃で、崩れたのでしょうか」
「いえ、違うと思いますわ」
亀姫がかがみこみ、扉の奥へ身を乗り出す
崩された渡り廊下に触れると、断面は砂のようにボロボロと崩れていった。
「崩れたのか崩されたのか…ともかく、だいぶ以前からこの状態のようですね」
「向こうの塔は、ここと同じ高さに扉があって、塔の土台はただの石積み……つまりこの消えた渡り廊下だけが、入り口」
「大昔から使われていない塔とその入り口ってことですか…。そんなものに惑わされて踏み込まなくてよかった」
「開けたと同時に踏み出していたら、落ちて真っ逆さまでしたわね。押し扉ですのに、よく踏み込まなかったこと」
「大扉を開ける度に死にそうになってますからね、もういい加減に学習しましたよ」
行きましょう、と近衛が半歩下がり扉から離れると
亀姫は不思議そうに首をかしげた。
「? どうしました。もしあの塔に武器でも隠してあるのならば、多少なりとも利便を図り別の出入り口が用意されているはず。一度降りて、塔へ調べに行かなくては」
「降りて、あちらに向かうのです? 時間の無駄ではなくて?」
「…まあ確かに、崩れた通路でさえ放置されているのですから、あまり重要なものがあるとは期待できないでしょうが…」
「バカねぇ。そうではなく、どうせ下に出入り口なんて造られるわけがありませんといっているのですわ」
「え?」
「神族は、飛べるのですから。もしあの塔に何かあるなら、この通路は故意に落とされたに決まっていますわ」
「っ!!! そうか、神族以外を立ち入らせない為には道を落としてしまうだけでいい…!」
「少なくとも飛べない者…それこそニンゲンや魔族の大多数は入りにくくなりますわね」
「……通路がない時点で、怪しさも充分ってわけですか」
「さて…翼のない私達は、一体どうやって空を飛びましょうか?」
「ふむ…そうですね。ナイフに紐をつけて投げて渡し紐にするとか?」
「この距離にこれだけ風の強さ。減速して落下…いえ、その剣が届いたとしても石造りの塔に確実に刺さるとは思えないですわね」
「亀姫様の結界術を足場に転用するというのは可能でしょうか」
「魔素の結界ですから、浄気を持つものならともかく 私達の身体を弾いて支えるだけの足場にはなりませんわ」
「…ではやはり、いっそ塔の足元から登りますか」
「近衛、あなた真面目に考えていらっしゃって? 下を覗いたでしょう。塔の足元は大きな堀になってますのよ」
「亀姫様は、泳げないのですか?」
「あの怪しすぎる堀に飛び込んで泳ぎ渡り、塔へしがみつくの? 私、泳ぎは得意ですけれど嫌な予感しかしませんわ」
「予感……ですか」
「確かめたかったら堀に入って確認してくださいませ。あれが聖水の堀だったとしても、ニンゲンのあなたなら生き残れるかもしれませんわ」
「聖水…。あの、この石が聖水に浸けて壊れた時点で自分は死ぬんですが…。それならばまだ、結界をお持ちの亀姫様の方がまだ生き残れるかと」
「聖水の中で保つだけの濃い結界を貼り続けながら、泳いでいって壁を登れとか。案外と鬼畜ですのね、近衛。そんなに私の必死の喘ぎ声が聞きたいのかしら」
「い、いえ。よく知らないものですから…軽率でした、お許しください」
「案を出せばいいってものではないのよ。真面目に、考えて頂戴」
「……では。空を飛べる魔族はいませんか」
「確実な方法ね。飛べる魔族自体はたくさん居ますわ。だけどその多くはハーピーや淫魔などの非戦闘の種族ですの。誰か来ていたかしら……?」
「戦闘向きの、空を飛ぶ一族に心当たりは?」
「………攻撃力を誇り、空を舞い、戦闘となれば他の追随をゆるさない一族がいらっしゃいますけどね」
「ならば、もちろんその方たちは来ているのでは」
「いいえ。誰一人として参加されていないはずです。……竜王様の一族ですから」
「………そうですか」
「せめて朱雀の末裔でもいたら良かったのですけれどねえ…。私達を運べるほどの者は、来ていないのでは」
「……真面目に考えてもいい案になりませんでした。申し訳ありません」
「うふふ。渡れないし飛べないのであれば………」
「あとはもう……運を天に任せて、落ちるしかないのでは?」
「………はい?」
悪戯すぎる微笑みが、亀姫の本気を語っていた。




