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汝の名は、魔王ー魔王と天使の物語ー  作者: 木彫りのクマ
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快進撃

―――――――――――――――――――――――


一方、天空宮殿1階

魔王・獣王率いる組――



広々としたエントランスを抜けると、片側にたくさんの扉のついた廊下があった。

おそらく扉の中で待ち構えている兵もいるだろう。


魔王と獣王はその廊下の突き当りまでの距離や扉の数を、視線だけで測る。



「獣王。なるべく派手に行け」


「グルル……。了承しタ」


「くく……始めよう」



魔王が手を前に突き出したのを合図に、獣王が飛び出す。

後方で威嚇していた他の獣族も、流れんばかりの勢いで駆け出した。


獣たちはそれぞれに大声で吠え、壁を蹴破り、ドアをたたきつけ…

様々なものを派手に散らしながら、兵の喉笛に喰らい付いていく。


獣王はその中心でわざとらしく敵に時間を与えて見せつけ、逃げ出すのを許している。

……そうしてそいつが改めて他の兵を引き連れて戻ってくるのを出迎えた。


「……キリがなイ。手応えもなイ。面白みもなイ」



あらかた片付き、逃げ出した兵が戻ってくるのを待つだけの状態になると、獣王は魔王の側に戻ってきた。

口内に残った肉片を吐き出しながら獣王は不満を口にする。


魔王はそれを満足そうに笑って聞き入れながら、獣族の内の一匹の毛並みなどを撫でている。


「これを面白いと思えたなら、獣王は魔王にでも破壊神にでもなれるだろうな」



そんな2,3のやりとりを楽しむ間に、追加の兵が走りよってくる足音を聞きつけた。

獣王がグルルと喉を鳴らして警戒したが、魔王はそれを手で制す。



「休憩して良い。一度代わろう」



魔王はジッと廊下の様子を見守っていた。

曲がり角から出てくると思っていたら、その手前にある扉が大きく開け放たれる。


扉そのものを盾に、矢による遠距離攻撃を仕掛けるつもりらしい。



「ちっ。距離を取ルとハ…獣とノ戦いニ怖じけたカ」


「交代しておいたのは正解だったな」


魔王は扉に隠れる一団の足元に魔力弾を打ち込み、続けざまに斬撃を放った。

宮殿の頑丈そうな床は崩れ落ち、一団の重みを受けて連鎖的に広範囲がガラガラと崩れいく。

扉ですらも、壁ごと崩れては盾の役目など果たしようがない。



轟音に悲鳴、混乱。鼓膜を破りそうなほどの大音量が、床に瓦礫ごと呑み込まれて消えていった。



「……魔王様の攻撃ハ、派手すぎル。我々ニ派手にやれと言われてモ、そんな真似ハ出来なイ」


「方法はやりやすいもので構わない。一網打尽にするとは言っておいただろう?」


「ふム。……だガ天の者を個々に撃つよリ、床を破る方が面白いかモ知れなイ」


「くく…。ああ、面白いぞ」


「しかしやはリ、俺には出来なさそうダ。残念ダが、流石ハ魔王様ダ」



心底残念そうな獣王のつぶやきを聞いて、魔王も心底楽しそうに笑った

笑われて不満げな顔をした獣に、俺は魔王だからな、と声をかける。


獣王は自分の落胆の言葉が、自嘲じみた魔王のセリフへの皮肉になってしまっていた事に気付き、非礼を詫びるべく顔をあげた。


だが声を出すより前に、魔王の手から魔力が立ち上がり、それが魔力だと気づいた時には目の前をひときわ大きな魔力弾が疾っていったあとだった。

大穴の向こうの曲がり角にぶち当たった魔力弾は壁を砕いて着弾し…… その奥にいたらしい一団が悲鳴をあげる。



「まダ隠れていたのカ」

「先ほどの弓隊との攻防にまぎれて接近したのだろう。顔も見ず撃った件は、許してもらうとしよう」


「許して貰う必要ナドないのでハ?」


「いや。あのまま走って来られて、そこの穴に落ちる間抜けを見たりしては、本当に笑い転げてしまいかねないと思ってな。攻撃を急いだ」


「……大恥の中デ死ぬよりはそいつもマシだろウ…。許すどころカ感謝するべきダ」


「恥をかくところだった事も知らずに死んだのだぞ。どちらが良かったかなど比べることは出来ないではないか」


「むむ。それもそうカ。なら……せいぜい自分の死に方を悔やんでくれるナよ。魔王様が回避してくださっタ笑い者の死ヲ、無駄にするナ……と」



獣王が、おそらく死体の転がっているだろう曲がり角の向こうに声を掛ける。

魔王は楽しそうに笑い、それからふとまじめな顔をして、こう言った。



「………あちら側に進むのはやめておこう。引き返して別ルートを行く」


「何故ダ?」


「これで床に血文字で無念などと書かれていたら、お前が本当に笑いそうだからだよ」


「……了承しタ」



二人が軽快に走り去った方向からは、また爆音が響く。

魔王と獣達はそうして宮殿内を次々に駆け巡っていった。




――天空宮殿一階、制圧完了。


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