亀姫の推測
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「……え! 近衛!」
「っ!」
「近衛、聞いていますの?!」
「これは…申し訳ありません。衣装のせいでしょうか、どうも古い記憶ばかりに囚われてしまって……」
やや青白い顔をしたまま俯いた近衛に、亀姫は呆れたように声を掛ける。
だがその口調は責めるものではなく、僅かに気遣いを含んでいるようだった。
「貴方はそんなこと言ってばかりね…。まさか浄気に当てられたわけではないでしょう?」
「ええ、大丈夫です。亀姫さまの守護術が浄気を弾いてくれていますし、この石もきちんと機能しているようです」
「なら、しゃんとあそばせ。いいこと? もう一度しか言わないから、今度こそよくお聞きなさい」
「はい…。もう、大丈夫です」
まっすぐに目を見つめてくる近衛を確認して、
亀姫もまたしっかりと瞳を見つめて問いかける。
「先ほど、近衛の言っていた件。神族が人間の味方をせず、むしろ武器として利用しようとしたという話……確かでいらっしゃいますの?」
「少なくとも自分に武器を与え、自分を勇者と称させたのは事実です。さらにここにあった本の内容が事実なら…人間の危機を知り、その場にいながらも、手を出してこなかったことも事実となるでしょう」
「……武器を与えてきのだから、武器として…武器の使い手として利用しようとした、と思ったのね」
「そう…ですね。確かにそこは推測の域を出ません」
「もうひとつ確認させてもらいますわ。……勇者というのは…神よりその称号と武器を与えられて成るものなの?」
「……わかりません。自分以外の例を知らないので、おそらく、としか」
「近衛の場合は、神からそれらを与えられたのは確かなのね?」
「……間違いのないよう正確に答えるのなら、“魔王陛下がそう仰った”となりますね」
「陛下が仰ったことなの?」
近衛はコクリと頷いてから、腰に下げたナイフに手を掛ける。
丁寧に引き抜いたそれを、掌に載せて亀姫に見せた。
「自分の持っているこのナイフ…ご存知の通り、衝撃の段階で大剣へと姿を変えるものです。これが大剣の状態になる時、浄気が動くそうなのです」
「……浄気を用いて作用するのなら、それは神界からもたらされたものに違いないと判断なされたのね」
「はい。与えられた時の状況に強い光があった事なども含め、陛下はそう確信されていました」
「わかりましたわ。陛下が確信なさったのなら、それは間違いのない事でしょう」
溜飲を下げたような亀姫の口ぶりに、近衛も一息をついた。
誤解が生まれないように正確に質問に答えるのは、なかなかに緊張を伴う。
確認作業を終えた亀姫が続けて何かを考えこんだので、近衛は黙ったまま本を手にとり、パラリパラリとページをめくりながら待った。
「……私達はひとつ見誤っていた可能性がありますわ」
「見誤った? 何をですか」
「……貴方はいろいろとおかしいと思いませんでしたの?」
「すみません。お話の意図が…」
「今回の神界戦争…陛下は思いつきだなんて仰っていられましたけど、陛下の中では以前よりお覚悟なさっていた事案なのでは、と」
「! どういう事です」
「この戦争…仕掛けたのは陛下ではなく、神の方だったという考え方ですわ」
「亀姫殿。どうぞ詳しくお考えをお聞かせください」




