天族との戦
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神界・正門奥 “空中庭園”
「一斉掃射! 穢れを払え!!」
純白の、薄布を金糸で結い上げたような軽装ながら、勇ましく声を上げ後方への指揮を飛ばしたのは「天族」――天の使いだった。
「号令を出すその間が、命取りだ」
キュッ… ダムッ!!! ダムッ、ダムッ!!!
隊列を組んだ天の使い達に向けて、掌から魔力弾を放つ魔王。
爆炎が上がると同時、空中に羽や弓が舞い上がるのが見えた。
「ガウルァァァ!!!」
獣王は大きく唸ると、粉塵と煙に向かって駆けだす。
煙の晴れる間もなく飛び出してきた残敵の喉笛に、次々と食らいついていく。
「獣王は、相変わらず乱暴ですこと」
そう呟いた亀姫を一隊の隙と判断したのか、数名の天の者が脇から飛び掛ってきた。
「覚悟!!」
「あら……大勢で横入りなんて。いけない子ね」
亀姫は横から襲い掛かってくる数名に
懐から取り出した小石のようなものを、一握り投げつける。
「目潰しのつもりなら、せめてきちんと顔に向け――ガッ!?」
「目潰し? いいえ、その石自体が小さな固形結界ですわ…そんなに勢いよくぶつかって行っては、痛いでしょうに」
「こんな小細工ごとき……!」
「その小細工で足を緩めたのはどこのどなたか」
「っ!! しまっ……!」
小石程度の障害物に足並みを乱した愚か者を、近衛が一閃で斬りおとす。
足を止めるのはほんの一瞬。流れ込む勢いを殺さぬように、駆けたままで乱雑に交わされる殺戮行為。
「奥へ」
先陣を切った四人は、こうして天の者の陣形を崩して乱し、数を削ぐ。
第二陣に続いている獣族達は、その鼻と足を活かして 隠れ潜む敵を炙り出しては自らの陣へと追い込む。
さらに続く第三陣が、取り損ねた単体を一騎づつ潰していく。
最後尾をゆたりと進む亀姫の従属の娘たちは、怪我をした仲間達を見つけては治癒しながら、「死に損ない」の後処理をしている。
「ふっ、お前は大名行列でも気取っているつもりか…!? それとも百鬼夜行か!」
堂々たる様子で魔王の前に飛び降りてきたのは、やはり天族だった。皆、同じような格好をしているので見分けるのも難しい。よくよく見れば、体格が少し大きかったり背が低かったり・・・見分けを付ける前に斬り落としている彼らにはその差異すらも気づくほどのものではない。
皆、一様。
まるで何もかも――与えられる「存在」すべてが平等であるとでもいわんばかりに、天族の多くのものが平均して同じような作りをしていた。
「大名行列に、百鬼夜行か。ほう、変わった例えだな。お前の目にはそう見えるのか」
「ここは神界!! お前のような穢れが踏み荒らしていい地ではない!!」
「ならば許可を貰いに行こう。お前、俺を神の元へ案内するか?」
「貴様……!」
「ガウルルルル!!!!」
天族が構えた槍先を魔王に向けようと腕に力を込めたその瞬間、横から獣王が飛びかかった。
「ぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!!」
首筋に、齧り付いた牙は開くことなく、硬く噛み締められたままにブンと振られ、天族の首のあった場所から華やかすぎる赤が咲きみだれた。
「……魔王サマに向かっテ、無礼な奴ダ」
「くく。ご苦労だな、獣王」
獣王が咥えた首をもう一度ブンと振り回すのが見えたが、気にも留めずに通り抜け
前方に見えた敵の影にひときわ大きな魔力弾を打ち込む。
いくらか口を交わした仲とて、わざわざ死を見届けてやる義理も無い。




