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汝の名は、魔王ー魔王と天使の物語ー  作者: 木彫りのクマ
26/99

天へ2

――――――――――――――――――――――


・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・


紅い魔力の柱は、100kmに及ぶか及ばないかの長さがある。

その途中で消失したものの数など、誰も数えやしない。


たどり着いた其処には、雲とは違う異質の大地があった。

氷と水蒸気、それから植物の根を這わせて成型したような土地――神界だ。



「浄気が、これほどに満ちているとは。魔物達は動けないのではありませぬか?」


「お前の護法術でどうにかできるか」


「御意に。……陛下にもお掛けいたします?」


「俺に? 今日はきっと、相当暴れる事になるが?」


「うふふ。きっとすぐに破れてしまいますわね。ではせめて――」



跪き、魔王に両の掌を恭しく差し出す。

魔王はそこに、自分の掌を乗せた。



「我が主に、守護を」



指先を食むような、口付け。

触れた場所がぼんやりと薄紫に光って、ゆっくりと消えた。


「陛下、魔物達も次々に到着しています」


「ああ。では亀姫、頼むぞ」


「畏まりお承りいたします…」



打ち上げられた噴水のように、雲上に無数の魔物達が打ち付けられては広がり散っている。

獣王がそれらに指揮を執りまとめていき、亀姫が護法を授けて浄気から守っていく。



「……静かですね」



神界ではとっくに異常に気づいているだろうに、天の者達はその姿を見せてはいない。

それには魔物達も違和感を感じていたらしく、どこからか“怖けたか…?”などの声が聞こえてくる。



「俺たちが来ただけで、天の者が怖気づくわけもあるまいに」


「……そうですね。現れただけで怖けてくれたならば、相当に楽な戦いでしょう」


「くくく……ああ、そうだな。そういった類の戦は、相当に楽な戦だった」


「…………」


「どうせそのうちに掛かってくる。現れたなら、その都度 落とせ」


少しの後、魔王は数歩奥へと進んだ場所に立って、振り返る。

波のような魔物の群れを前に、錫杖を高く掲げてリンとならした。


それだけ。

それだけで、魔物達の視線は集まり、緊張感が高まるのが分かる。

雲の上に打ち上げられ崩れた姿勢のままの者も、全てはそのままに。


一瞬で、空気が変わった。



(……始まる)



錫杖。魔王が掲げるのは、僧侶の持つそれである。

元々は近衞の居た異国を統治していた宗教家の持ち物で、統治の象徴でもあった。


それを取り上げ、気に入ったからと残しておいたもの。今は魔王の手中にある“象徴”。

その金環の響きは、強奪されてなお美しく鳴り響く。



「行くぞ」



なんの抑揚もなく、告げられた。

鼓舞のひとつもないその声に魔物達は一様に応を唱え、魔物の咆哮が天を震わせた。


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