↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
汝の名は、魔王ー魔王と天使の物語ー  作者: 木彫りのクマ
19/99

怪我と治療5


「そういえば、あの魔王陛下の血の御石。…力の増幅器のような役割もあると言っていらしたわね」


「あア」


「……ですけれど、やはり杞憂ではありませんの? あの坊やが強いだなんて聞いた事もありませんわ。それに以前、“あの近衛には刀を振る才能が無い”と、魔王陛下が笑っているのを聞いた事が」

「近衛の武器ハ、本来は刀ではなイとも言い換えられよウ。そしてこの戦争でハ、おそらく本来の自分の武器を持ツ」


「……あの坊やが、接近武器の使い手だと仰いますの?」


「可能性はあろウ。そして接近武器の使い手と言えバ……」


「……まさか、“暗殺者”だと…?」


「知らぬ。あの者が何故 どのようにして魔王サマのもとに来たのか、院と魔王サマを除いて知る者はいない」


「もし坊やが、降伏したニンゲンによって献上されたものであれば…」


「下出に回り懐刀となることで、魔王サマへの報復の機を計っているのかも知れヌ」


「……この戦争に乗じて、本来の武器を持ったとしたら…」


「あア。……絶好の機会に、違いなイ」


「―――あの坊やが……」


先ほどまで握っていた手を思い出す。

あの手で、魔王を討つのだろうか。あの瞳で、魔王への報復を狙っているのだろうか。


だけれど、“滅ぼされた種族”が“滅ぼした種族”に仕える理由が他に思い当たらない。

少なくとも充分な動機になるだろう。ならば、本当に――?



「まだわからなイ。魔王サマへの忠誠ハ、あるようにも見えル」


「私にも…… そう、見えましたわ」


「確かなことハ、魔王様に歯向かえる強さがあるという事ダ。あやつは不吉ダ。あの天使よりモ、何よりモ。俺の鼻がそう感じていル」



「……わかりました。貴方の嗅覚を信用して、私も警戒するといたしましょう」



(私の治癒したあの手で魔王陛下に歯向かうなど… 決して許せません事よ)



亀姫という理解者を得て、獣王は満足げにその場に寝そべった。

そうして一息ついた様子で、尻尾をパタと揺らしてみせる。



「魔王様はいつもどこかラ、あのようにおかしなものばかり拾ってくるのカ」


「そして何故、そんなものばかりお傍におくのでしょうね…? ふふ」


「まったくダ」



僅かに吹いた風を気持ちよさそうに鼻先に受ける獣王は

場所も人目も気にせずにそのまま眠ってしまった。


所詮は獣。

そのうちに誰ぞやの気配でも感じ取れば、スと目を覚ましてどこかにいくだろう。

気にかけてやる必要もない。


亀姫はそのまま女房舎へと戻り、几帳の影へともぐりこんだ。



(魔王陛下……。愛しい愛しい、私の魔王陛下…)



頭の中で名を呼べば、いともたやすく脳裏に現れてくれる愛しい主。

その姿と声に、たまらぬ愛しさがこみ上げてくる。


懸想するだけで、焦がれて火照る。

自分を落ち着かすため吐きだした呼気の熱さに、なおさらに目が眩む。




(天使も、近衛も、獣王ですらも、妬ましく思えてしまう……)



熱されすぎた想いが、ねばつきはじめる。

そうではない、妬んでも仕方がないのにと言い聞かせながらも

想いの熱さは鎮まることは無さそうだ。息苦しいほどに焦がれてしまい、堪らずに身を捩じらせる。



魔王。

彼は何故、あんな者ばかり側に置くのだろう。

そんなものよりずっと、自分のほうが有用だと言い切る自信があるのに。



(ですからどうぞ、私を貴方のお側に置いてくださいませ――)



次回投稿は7月5日です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。