↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝起きたらイケメン大学生になってました  作者: 蒼狐


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

第4話 鏡の向こうから、ありがとう

あれから半年が経った。


私は高校3年生になり、大学受験の波に飲まれながらも、毎日を少しだけ丁寧に生きるようになっていた。文芸部では短編小説を書くようになり、文化祭では自分の作品を発表した。友達からは「最近、あかり大人っぽくなったね」と言われる。

私はいつも、心の中で小さく答える。

——あの三日間のおかげだよ。


悠真とは、今も時々メッセージを交わしていた。

匿名アカウントのまま、季節の変わり目や、悩んだときにだけ。


彼は無事に大手企業から内定をもらったらしい。でも、最終的にそれを蹴って、出版社の契約社員になる道を選んだと聞いたときは、私は思わずガッツポーズをした。


ある冬の夜、雪が静かに降る中、私は最後のメッセージを送った。


「もうすぐ受験が終わります。

あなたが勇気を出して出版社の道を選んだこと、私も嬉しかったです。

本当に、鏡の向こうから、ありがとう。」


送信してしばらくすると、返信が来た。


「こちらこそ。

君がいてくれたから、僕は自分の声で生きることを選べた。

もしよかったら……一度だけ、会ってみないか?」


私は息を止めた。

心臓が激しく鳴った。


会うべきではない。

会ったら、この不思議で大切な関係が壊れてしまう気がした。

でも、私は指を動かした。


「場所と時間を教えてください。」


指定されたのは、大学近くの静かな喫茶店だった。

私はマフラーで口元を隠し、緊張しながら店に入った。


窓際の席に、背の高い男性が座っていた。

高橋悠真。

写真で見たより、少し痩せて、でも目が優しかった。


私は彼の向かいの席に座り、小さな声で言った。


「……はじめまして。

私は、佐藤あかりです。」


悠真は一瞬、目を丸くした。

そして、ゆっくりと微笑んだ。

その笑顔は、あの鏡で見たものと同じだった。


「やっぱり……君だったんだ。」


私たちはお互いの半年間を語った。

私が受験勉強で挫折しそうになったとき、彼の言葉が支えになったこと。

彼が就活で悩んでいたとき、私が書いた小説の続きが、背中を押してくれたこと。


「不思議だよね」

悠真がコーヒーカップを両手で包みながら言った。

「一瞬だけ体が入れ替わって、人生が変わるなんて。」


私は頷いた。


「でも、きっと必要だったんだと思う。

私があなたの人生を見て、あなたが私の人生に触れて……

お互いに、ちょっとだけ優しくなれたから。」


店を出るとき、雪が少し強くなっていた。


別れ際、悠真が静かに言った。


「これからは、鏡の向こうじゃなくて、ちゃんとこの世界で生きていこう。

また、どこかで言葉を交わせたら嬉しいよ。」


私は微笑んで頷いた。


「はい。私も。」


彼の背中が見えなくなるまで見送った後、私は雪空に向かって小さく手を振った。


鏡の向こうにいたもう一人の自分へ。

そして、これからを生きる自分へ。


「ありがとう」


雪が、私の言葉を優しく包み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。