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Just like starting over 〜アメリカ帰りの幼馴染に振り回されちゃってます!!〜  作者: 優月菜


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第九十五話 Stargazing(天体観察)


「四日の午前二時頃からハレー彗星を母体にする流星群※1 が見られそうなんだけど」


今日は五月三日。

朝ごはんを皆で囲みながら、唐突に汐恩向かって話し始めた幸子。

幸子はどうしても、ここならきっと綺麗な星空と流星が見られると思っているようだ。

汐恩におねだりを続けた。


「一度でお昼寝とかして、どうかな?夜中に起きるとか」

「いやいや、無理だろ。明日帰るんだぞ」

「あ、そうか……そうよね。それじゃ、折角、望遠鏡も持って来たから、 春の大三角・春のダイヤモンド※2 くらいは見たいわ」

「あぁ、分かった分かった。さて、皆の衆はいかがかな?」


灯と享は顔を見合わせるも嫌とは言えず……

 

「今晩の夕飯にBBQを考えてたので、ちょうどいいです。ねっ、灯」

「あ、うん、そうだね。ちょうどいいよね!星空、見ながらBBQ!楽しみだなぁ」


灯は『本当に楽しいのかなぁ……』と思ったのだった。


そして。


元々、星座には関心のない灯。

享に呼ばれても、享と幸子の天体の話には、ついて行けそうにないから、ううんと首を振って行かなかった。

BBQの残りのとうもろこしを食べながら、ぼんやり二人のことを眺めている灯に、ビールを片手に汐恩が話しかける。


「おい、お前ら、今、どんな感じなんだ?」

「えっ?どうなって?」

「何だか分からない脅威からは解放されたのか?」

「ん?どうなのかなぁ、私には分からないよ」


幸子が享に笑いかけながら、ポンと腕を叩くのが見えた。

灯は、胸がチクっとした。


「てかさぁ、恋人同士にはなったんだろ?」

「恋人?」

「雰囲気は、そんな感じに元々見えてたけど、久しぶりに会ったら少し進んだようにも見える」

「……」

「でも、まだか?」

「何?まだって?」

「その、なんだ。恋人らしいことの事だ」

「恋人?恋人らしい?」

「キスは当然として、その先のことだよ」


汐恩が言った時、享と幸子が同時に

「「いたっ」」

と言った。

どうやら望遠鏡を同じタイミングで覗こうとして頭がぶつかったらしい。


「あっ、ごめんなさい」

「こちらこそ、ごめん」


にこやかに謝り合う二人を見ていた灯は、いきなり立ち上がった。

汐恩が聞く。


「どうした?」

「女性には聞いて良いことと、聞いちゃいけないことがあるって、サッちゃんに教わってないの?」

「……あ、トイレか……」


呟いた汐恩の背中をバンッと叩くと、灯は中庭からリビングに入った。

そして、そのまま廊下に出る。

『なんで、こんなにイライラするんだろ……』


「少し頭でも冷やすか……」


灯は、そのまま靴(バッシュ)を履くと、玄関から外に出た。

連休もあっという間に過ぎて、残り二日だが、明日には東京に戻る事になっていた。

最後の一日はそれぞれの家に戻り過ごす事にしたのだ。


楽しかった数日が、今朝いきなり流星群一色となり、幸子のご自慢の天体望遠鏡が披露され、享と幸子の高学歴同士の会話を耳にして、ついて行ける訳がなく、むしろつまらなくなった。


もちろん灯が成績が悪い訳ではないが、享の様に何でも知りたい欲はない。


享が、星座の話とギリシャ神話を重ね合わせて、灯にもわかりやすく話してくれるのは、その神話の成り立ちでもあり面白いので、たくさん語られても問題は全くないのに『今日の私はおかしい』と、思いながら門扉のゲートを開けると、真っ暗な木立の間の道を一人で歩き出す灯。


「もう少し歩いたら八幡宮様かなぁ……」


そう呟いた時、後ろから、享が走ってきた。


「灯!」

「……」


いきなり腕を取られたので反射的にその手を払いのけた。


「どうして?一人でこんなところまで、心配するじゃない」

「別に散歩に出ただけだし」

「一人じゃ、危ないでしょ」

「大人だし、怖くないし」

「そういうことじゃなくて!」


「楽しく天文学について語り合えてよかったでしょ?」

「えっ?」

「私なんか知らないことばかりだもん。サッちゃんとなら興味関心が高められる感じじゃない」

「幸子さんは汐恩さんの恋人でしょ?灯のお兄さんの大事な人だから、喋らない訳には行かないよ」


「そうかもしれないけどTallには、あぁ言う雰囲気の女性(ひと)の方が、お似合いな気がする」

「なんで、そんなこと言うの?」

「本当のことだもん」


少し怒った様に享が言った。


「本心は違うよね?」


「…… 二人で来たかった……」


灯の呟きに享が答える。


「僕が、それはダメだった」

「どうして?」

「僕の部屋でなら自制ができるけど、場所が変わったら……灯に」

「私に?」 


『灯に全部を求めてしまうかもしれない』


「何?」

「とにかく、二人っきりは無理なんだ」

「……Tall?」

「約束、思い出してくれた?」

「約束?……まだ……」

「でも、幸子さんに焼きもちは妬いたってわけだ」


「焼きもち?そんな事あるわけないでしょ!」

「じゃ、なんで一人で散歩なんか行くのさ?誘ってくれればいいじゃない」

「サッちゃんとの方が楽しそうだったから!」


灯が言い放った瞬間、やすやすと享の肩に彼女は担ぎ上げられ、両膝を手で押さえられる。


灯は、享の背中をグーで叩きながら


「おろして!!おろせ!」


足をバタバタして暴れるが、しっかりと膝を固定されたまま、別荘まで戻ってしまった。

玄関から中に入ると、享は自分だけ靴を脱ぐと、そのままリビングを抜け中庭に向かう。


「灯ちゃん!」


汐恩と幸子は、ベンチに隣り合わせに座っていたが、彼女が思わず立ち上がると、享はそこに灯を乱暴に下ろした。


「汐恩さん、幸子さん、すみません。僕は今日このままお先に帰らせて頂きます」

「「「えっ!」」」


いきなり下ろされた灯も汐恩も幸子も同時に声を上げる。

汐恩に寄りかかる様な姿勢になった灯を汐恩がベンチから落ちないように、腰に手を回していた。


「ちょっと具合が悪いんで、すみません。後日、片付けには来るんで、明日、戸締りだけして帰って下さい」

「灯は?」

「一緒にお願いします」


「「「えっ!!」」」



※1 みずがめ座η(エータ)流星群

ハレー彗星を母天体とする流星群で、毎年4月下旬から5月上旬にかけて活動。

5月3日は極大(ピーク)である5月5日〜6日の数日前で、すでに流星の活動期に入っていた。

放射点のある「みずがめ座」が東の地平線から昇ってくる深夜2時以降〜明け方が観察のチャンス。

素早く流れて流星痕を残しやすいのが特徴。


※2 春の大三角・春のダイヤモンド

しし座=宵の口に南の空高く位置する

おとめ座=1等星スピカが青白く輝く

うかい座=オレンジ色の1等星アルクトゥルスが目立つ

からす座=南の空に四角形がキュッとまとまって見える

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