第九十三話 Celebration & Unveiling?(お祝いとお披露目?))
夕飯の後、紅茶を入れ、享がこれも予め作っておき冷蔵庫で冷やしておいたチーズケーキをデザートとして出す灯と享。
そして、そのデザートをお喋りしながら楽しんでいる最中、灯が享と二人で汐恩に用意しておいたプレゼントを持って来た。
「遅くなりましたが、医学部ご入学おめでとうございます」
享が言うと灯がプレゼントを差し出す。
「教えてくれないから、浪人するのかと思っちゃって聞くに聞けなかったんだけど」
「え、何だか照れ臭くてさ」
「とにかく、おめでとうございます」
「あ、有難う」
「二人で選んだの。開けてみて」
渡された小さな箱を丁寧に開ける汐恩の姿を嬉しそうに幸子が隣の席のから眺めている。
「うわっ!まさか!」
「モンブラン のマイスターシュテュック 149です!Tallが医大生の必需品だって調べてくれたの」
「マジかー!どうしようかと思ってたんだ。何か買えない訳じゃないけど、気恥ずかしくてさ」
「汐恩くん、照れ屋さんだから」
「幸子からも高級革鞄貰ったけど、あれも何だか自分じゃ、無理で……有難う!本当に嬉しいよ。幸子が伝えてくれたんだろ?有難うな」
「お節介かな?とは思ったけど、家族で隠し事は良くないと思って」
「幸子、マジでお前はいい女だ!」
汐恩が幸子の頭を抱き寄せてキスした。
灯が咳払いする。
「そう言うのは、お二人の時にして下さーい」
「雰囲気壊すなよぉ」
汐恩の一言に皆んなで笑った。
翌日。
昨夜は割と遅くまでお喋りしたせいか、起きるのが皆遅く、お昼近くに朝昼ごはんを済ませた四人。
この後どうしようか?散歩にでも行く?と女子二人は鎌倉散歩を楽しみたいようだ。
ところがその時、汐恩が突然、柄にもない事を言い出した。
「これから勉強って言うのはどうだ!」
「え?」
灯が驚くと幸子が助け舟を出した。
「汐恩くんの大学、五月の連休まで休みは休みだけど、レポート提出が何個かあるんだって」
「うわ!講義はないのに?……分かった!ドイツ語があるね?」
灯が言うと慌てる汐恩。
「Tallに教えて貰う気だったんでしょ?」
「出来れば……」
享が嬉しそうに答える。
「もちろん、僕でお役に立つなら、いくらでも!」
「おー、そう言ってくれると思った!頼むよ」
「どんなレポートですか?」
「うわ、発音が違う……あ、それは英語か!今、持って来る」
汐恩が部屋に戻ると享が女子二人に言う。
「昨日から温水プールの水を循環させてあるんだ。お天気もいいし、風もないから、お二人さんは水遊びでもどうかな?いつでも入れるよ」
確かに天気も良い。
実は、この別荘のプールは温水プール。
陽射しがよく入る南側の中庭は何も遮るものがないので、確かに真夏とまでは行かなくても日中はプールの水さえ冷たくなければ充分水遊びは出来そうだった。
灯が残念そうに言う。
「でも、私、水着持って来てないよ」
「ごめん、自分のは持って来たのに。灯に話すの忘れてた」
享が謝ったところで幸子がそこに口を挟んだ。
「汐恩くんから聞いてたから、こんな事もあろうかと水着二着持って来てて、私ので良ければだけど、どうかしら?」
『サイズが違うと思うけど……』
と灯は思いつつも
「えっとサッちゃんが構わないなら……」
「もちろん!じゃ、お部屋に行きましょ」
幸子と灯は、汐恩と入れ替わりで建物の中と外に移動した。
汐恩と享は中庭に置いてある鉄製のテーブルにパラソルを広げ、そこで早速、ドイツ語のレポートを作成の為の準備を始めた。
女子部屋。
「これなんだけど」
「ピンク?」
「灯ちゃんは、色白だから、ピンク似合うと思うよ」
「初めて言われた……あまり着たことないんだけど。それに、こんな可愛いデザイン、私なんかが着ていいのかな?」
「このデザインって、首の後ろでリボンを結ぶホルターネック※が可愛いの。裾はスカート風のドレープフレアだから、太ももも気にしなくいいし!後ろブララインまでしっかりカバーする安心感のある深さがあるから安心だよ。とにかく着てみて」
「サッちゃんは、どんなの着るの?」
「私は、汐恩くんの趣味だから。ワンピースだけど、ちょっと後ろが開いてるの」
幸子の水着は、色は黒。
ワンピース型だが背中が大きく空いており、細身の紐をクロスして一番上でリボン結びするタイプ。
少し大人っぽい感じだ。
「ドキドキする紐だね!なんだか解けちゃいそう」
「それが水に濡れると、そうでもないのよ」
「そうなんだ」
「とにかく着替えない?」
「うん、お借りします」
そして水着に着替えた二人はバスローブを着て、リビングを抜けて中庭に出た。
「お!幸子、戻ってきたか」
「汐恩さん、集中」
「あ、悪いな」
とは言え、男子二人も女子のバスローブの中身が気になる。
「灯ちゃん、ビーチボール持ってきたから、プールの中で遊ばない?」
「楽しそう」
「膨らませないと」
「あ、私やるよ」
灯が言うか言わないのうちに隣に来てた享がビーチボールに息を吹き込み、すぐに膨らませた。
「はい」
「ありがと」
まん丸のビーチボールを渡された灯は、一度、二つ並んでいるデッキチェアに置いた。
「横溝くん、本当に灯ちゃんの事になると、すぐに駆けつけてくれるのね!」
「え?そうかなぁ」
「そうよ、いつも気にかけてるもの」
灯はその享の思いやりは嬉しかった。
ただ、自分がそれを返せるほど享に思いがあるのかどうかは定かではなかった。
※ホルターネック
胸元から伸びるたっぷりの生地を首の後ろでリボン結びにして着用する水着。




