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Just like starting over 〜アメリカ帰りの幼馴染に振り回されちゃってます!!〜  作者: 優月菜


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第八十二話 Valentine's Day gift.(バレンタインの贈り物)


行き先は決まっている。


この前、バイク用の手袋(ライディンググローブ)を買いそびれたバイク用品専門店(ショップ)だ。


『大学からだと行って帰って四〜五十分、買い物には十五分くらいは使えるよね』


少し遠いが享の指導もあって最近色々な抜け道も覚えた灯、思いの外、早く専門店(ショップ)についた。


店内に入ると、すぐに店員を探す。


『いた!』

「あの!すみません!」

「え?はい、何でしょうか?」


女性ライダーが少ないのか、ヘルメットを持っている灯に対して怪訝そうな顔の店員だが、灯の見た目に急に思い出した様に言った。


「あ!君、この前、外人の彼氏くんと来てたよね?」

「え?あぁ、はい」

「いつも君が運転するの?彼氏くん乗せて」

「いえ、いつもは逆です」

「やっぱり彼氏くんもライダーなんだ?何に乗ってんの?」


「CB400Nです」

「スーパーホーク?」

「スーパーホークIIIです」

「へぇ!何色?」

「コスモブラックメタリックとか言う」

「センスいいね!CB400かー!で、彼女はCB125JXに乗ってんだもんね!」

「何に乗ってるのかも、ご存知なんですか?」


「そりゃ、見るよ。駐車場に乗り入れた時に、オッ?あれは女子だなって思ったら、外人の彼氏くん乗せてたんだもん。店内のお客さん達も羨ましそうに、君達のこと見てたのに気づかなかったの?」


灯は驚いた様に答える。

「え?全く……」

「あれれ、彼氏の方は状況楽しんでたみたいだったよ。君の後ろに乗せられて駐車場出る時、店内にいた、ほぼ全員のお客さんが見てる中、ピースサインしてったからね」

「えっ!そんなことしたんですか!?」

「面白かったけどね!」

「そんな恥ずかしいことを……」


『享らしいけど』と思いながら、灯はそこで、ふと我に返った。


「あ!すみません!バイク用の手袋(ライディンググローブ)が欲しくて来たんでした!」

「そうなんだ、こちらこそごめんね。余計な話しちゃって」


気のいい感じの五十代くらいの男性店員は、"店長 本郷"と言うネームプレートをつけていた。


「こっちにあるのは、この前見てた様だけど、お目当てのものがなかったのかな?」

「すみません、あまり時間がなくて探すより聞いた方が早いかもって」

「あぁ、そう言うこと!じゃ、どんなのがいいのか言ってみて」


「本革の色は黒のガントレット※1 で、出来たら紺か青の糸目で縫っている感じのってありますか?」

「君が使うの?」

「いえ!あの彼にプレゼントしたいんです」

「あぁ、バレンタイン?」

「はい」


「残念ながら、既製品は単色しかないんだよね。

浅草のカドヤさん※2 なら受注もしてくれるけど、今からだとバレンタインには間に合わない上に、本人に採寸に行って貰ってピッタリサイズを作って貰う事になるから内緒に出来ないんだよ」


「あ、そうなんですか……」

「うん、残念だけど職人さんの手作りだから極めると、そうなっちゃうね」

「……分かりました!では、そのカドヤさんのガントレットの黒のLLを頂きます」

「はい、承ります!プレゼント包装しますか?」

「えっと、そのままで大丈夫です」

「あ、何か自分で考える訳ね?」

「はい……」


灯が顔を赤くするのを見て、店長は享のことを"あいつ果報者だな"と思った。



買い物を済ませると慌てて大学に戻る灯。


思った通りの時間で大学に戻ることが出来た。

享が窓の外を講義室から眺めているかもと、校庭を走り抜けずに校舎に張り付く様に小走りしながら、図書室に戻って、司書さんにお礼を言いながら帰りがけに買って来た不二家のクッキーを渡した。


「あらまあ。気を遣わせて、でも嬉しいわ、有難う。それで、いい買い物は出来たのかしら?」

「はい!お陰様で……思ったより、いいものになりそうです」


「それは良かったわ。宮守さんの無事も何よりだけどね!焦って事故にでも遭ったら横溝くんに顔向け出来ないから」

「大丈夫です!運転の師匠は横溝先輩ですから、安全第一です」

「そうなのね!それなら安心だわね」


と、まあお喋りしているうちに享が迎えに来たので二人は司書さんに挨拶をして図書室を後にした。



お互いそれぞれのヘルメットを被った後、灯が享にいつも通り声を掛ける。

これが二人の定番。


「さて、帰りましょうか、師匠」

「うむ、では荷物を寄越して先に乗りなさい」

「はい、宜しくお願いします」


灯はいつでもDバッグを背負っているので、バイクに乗る時は享の背中に預ける。

享自身はショルダーバッグを斜めがけにして後ろに回して置く。


享は灯の後からバイクに腰を下ろした時、気づいたことがあったが、あえて口にはしなかった。




※1 ガントレット(Gauntlet)

手首から袖口まで深く覆う長めのグローブ。風の侵入を防ぎ、万が一の転倒時も肌の露出を防止するため、ハーレー乗りやクラシックスタイルのバイカー、防寒用として定番品。


※2 カドヤ(KADOYA)

浅草の老舗革ジャンメーカー。アメリカンや硬派なストリート系、武骨な革グローブを求めるライダーに絶大な支持を得ていた。厚手のしっかりとした革ガントレットなどが定番。


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