第七十七話 What now?(これからどうする?)
灯は自分が今どこにいるのか分からなかった。
『ん?……どこ?!』
慌てて飛び起きて立ち上がった灯に龍馬が声を掛ける。
「灯ちゃん、大丈夫?」
「あ、学長代理……すみません……また寝ちゃったんですね、私」
「いいの、いいの。起こすのも可哀想だからって享も言ってたから起こさなかったんだからさ」
「また講義サボっちゃったことになります」
「仕方ないでしょ、体調悪かったんだからさ。とりあえず、お座りなさいよ、シンドイでしょ?でもちょうど二限終わったから、多分そろそろ享も来るん」
"じやないかな?"と龍馬が言おうとした時、ノックを素早く三回鳴らすと返答も待たずに享がドアを開けて入って来た。
立ってる灯を見つけると、すぐに享が抱きしめた。
抗う気力もないのか灯はされるがままだ。
「良かった!目が覚めたんだね!」
「あ……うん。今さっき」
龍馬が遠くから
「もしもーし、お二人さん、おうちに帰ってから続きはしなさいよ」
と笑いながら言った。
享は三限の労働法をさぼると灯を連れて自宅に戻った。
灯は全く気づいていなかったが、今日も享の髪の毛はドアに張り付いている。
部屋に入ると享が聞く。
「お腹空かない?」
「あ、そう言えば……少し」
「もし、何だったら先にお風呂入って、ゆっくりして来たら?その間にご飯作っておくから」
「ん、そうさせて貰おうかな。有難う」
灯は思わず享に抱きつく。
「どうした?」
「享の匂い安心するから」
「そっか、たくさん吸って安心して」
享も応えるように灯を抱きしめた。
そして。
灯をお風呂にうまいこと誘導した享は、灯台下暗しはマズイと思い、学長代理室でしたことと同じことを始めた。
が、やはり盗聴器の類は見つからなかった。
となると、セキュリティの問題なのだろう。
今後も気をつければ、この部屋自体は安全ということだ。
最上階であることと、エレベーター自体が各階に止まるのは四階の賃貸部屋までという利点もあった。
オーナーズルームについては、元々一階で乗った時点でエレベーター内に隠されたキーボックスの中の鍵穴に部屋鍵を鍵を差し込まないと五階の扉が開かないシステムになっていた。
降りた後も扉はツーロック。
『これで入られたら設計者も泣くだろうし……まあ安心した。あとは外での行動だな』
お風呂から上がったばかりのはずなのに灯は青白い顔で髪の毛にタオルを被ったままリビングに戻って来た。
カウンターキッチンのカウンターには、灯のアクセサリーを入れるガラスの小さなお皿があり、その中に王冠と十字架が鎮座している。
そこに灯は噂のネックレスも入れた。
そして灯はカウンターキッチンでお昼の支度をしている享に声を掛けた。
「Tall、今日もごめんね。心配かけて」
享は慌てて灯に駆け寄ると抱きしめながら優しく話す。
「灯……灯のせいじゃない。悪いのは勝手に噂を流したヤツだ。誰だって、そんな風に噂話されたら気色悪くて具合が悪くなって当たり前だからね」
ソファに灯を座らせると、いつものように優しくタオルで髪の水分を拭き取ってからドライヤーをかけ始めた享。
灯はボンヤリとしたまま、享にされるがままになっている。
以前の様に、また身体が傾く。
享はその身体を受け止める。
「あ、いけない……また寝ちゃってた?」
そんな灯を後ろから抱きしめる享。
「頼むから、ご飯食べてから寝て」
「うん……」
「灯?」
「食べるよ、ご飯……今日は何?」
「エッグベネディクトだよ」
「うわー嬉しい……」
灯は声を出すのも、やっとの様に一言ずつ話す。
そんな灯を見るのは本当に辛い。
『僕といると、こんね目にまた遭わせることになるのか?オッさんが言った様に別れれば灯は安全になるのか?』
お昼ご飯の後、歯磨きを洗面所で享に支えられながら終えた灯はお姫様抱っこでベッドに運ばれると、そのまま、また寝てしまった。
その横で寝顔を見ながら享も眠くなってきてしまう。
ただその前に一言呟いた。
「これから、どうする?どうしたい灯……」




