第七十一話 Christmas eve(クリスマス前夜)
いつもJust like starting overをご覧頂き有難うございます。
日本の至る所で色々な自然現象でご苦労されている皆様のことを思うと胸が痛みます。
暑い中の作業など大変なことも多いことでしょう。
早く、日常にお戻り頂けます様に心からお祈り申し上げます。
優月菜
享のマンションに戻った二人。
「買い物してきたものは片付けるから先に灯はお風呂入っちゃって」
「いいの?」
「もちろん」
「じゃ、そうさせてもらっちゃおうかなー」
「うん、そうして」
享は、買ってきたものを冷蔵庫に入れたり、キッチンストッカーに仕舞う。
今日これから食べると言っていた、サラダやチーズ、サラミは皿に盛り付けて、ラップをし冷蔵庫に一旦いれる。バケットは切り分けて、パン専用カゴにナフキンを敷いて、綺麗に揃えて入れた。
後はスープだが、今日はお湯を注ぐタイプの粉のコースープの素を買って来たのでカップだけ用意する。
食後は灯がアイスクリームを食べたいと言ったので、レディボーデンのバニラとストロベリーを買った。それにクレーミーホイップ※を付け合わせにしたいと追加した。
「Tall、お先にお風呂有難う」
「速いね。ちゃんと温まったの?」
「温まったよ」
「じゃ、ほら、ここ」
ドライヤーを手にした享が待ち受けていた。
少しだけカーテンが開いている窓からは、空気が澄んでいるせいか、いつも以上に星空が煌めいている様に見える。
灯は髪を享に優しく乾かして貰いながら、その星空を見つめていた。
「今って星座は何が一番よく見えるのかな?」
「南の空なら、オリオン座かな。今頃の南の空高くに見えて、一等星のベテルギウスやリゲル、中央の三ツ星がひときわ明るく輝くんだ。あと、オリオン座のすぐ右上、と言っても西寄りの高い位置にある、おうし座。赤く輝くアルデバランやプレアデス星団がよく見えるはず」
「Tallって何でも知ってるんだね」
「好きだからさ。まだ見える星座あるよ。東から南東の空にね、夜が深まると昇ってくる、ふたご座のポルックスとカストル。 おおいぬ座は全天で最も明るい1等星シリウス、こいぬ座のプロキオンが見える。冬の大三角形って覚えてる?」
「あ、理科でやった!えっと……オリオン座のベテルギウスと、おおいぬ座のシリウス……こいぬ座のプロキオン!なんだ!今、享が教えてくれたヤツだった」
「でも、覚えてるのは偉い」
「え、そう」
灯は嬉しそうだ。
「ちなみに星座占いの牡羊座男子と射手座女子の相性って知ってる?」
「え?考えたことなかった……もしかして私達?」
「そう」
「どうなの?」
「ベストパートナーなんだって、サッちゃんが羨ましがってくれた」
「……ベストパートナー……」
「灯」
髪を乾かした後、享は後ろから灯を抱きしめて、肩の上に顔を埋めた。
「もう、こんなに可愛くて、こんなに一緒にいて楽しい子は他にいないって事」
「……照れちゃう」
「あ」
「何?」
「靴下履いて、足元から風邪ひくよ。じゃ僕もシャワー浴びてくる。五分後くらいに、スープ用にお湯だけ沸かし始めてくれると嬉しいんだけど」
「うん、分かった!任せて」
灯は享の方を見ないで答えたが、身体が熱くて胸が苦しくて、どうしようもなく享のことが愛おしくて仕方ない自分の気持ちを騙すことが出来なくなり始めていた。
でもあの“約束“は守れない。
それだけが、今の灯の行動に歯止めをかけていた。
シャワーを浴び終えた享が五十センチくらいの箱を持ってリビングに戻って来た。
「Tall、お湯沸いたけど、一旦ポットに入れておく?」
「あ、うん。有難う」
「それが、ツリー?」
「そう、どこに置こうか?箱は大きいけど、ツリーは小さいんだ」
「じゃ、そっちのテーブルに置けば?」
灯がソファの前のテーブルを指差した。
「あ、そうだね。それの方が綺麗かも」
「え?何が仕掛けでもあるの?」
「それは見てのお楽しみ」
享が箱から出したのは高さ三十センチほどのクリスタルのツリーだった。
もみの木を模した枝先が少し跳ねる様に上がっていて、そこに付属のオーナメントを下げるらしい。
「綺麗だね……オーナメントもガラスだ」
「おばあちゃんから、昨日届いてた」
「え!!今言う?私、何も用意してないのに!どうしよう?今から何か……」
「灯、あかり!」
「え?」
「これはクリスマスプレゼントじゃなくて、自分の代わりに僕達を見守りたいってことらしいよ」
「でもクリスマスツリーだし……プレゼントだよね?」
「じゃ、年が明けたら一緒に何か考えよ」
「あ、うん」
「何か飲み物飲みながら飾ろっか?」
「うん!シードル……」
「ダメ」
「ケチ、自分ばっかり」
「だってお酒は二十歳過ぎてから」
「じゃ、ジンジャエールでいいです」
「僕もそうします」
灯が嬉しそうに笑った。
クリスタルのクリスマスツリーはオーナメントが下げられると、ますます光を反射してキラキラと眩い輝きを見せている。
少し灯を落として、ダイニングテーブルの方に腰掛けて二人で、享の用意したサラダやバケットを食べながら、コーンスープをカップで飲む。
窓ガラスの向こうの夜景は他に高い建物がないお陰で、星空が煌めいているのが、よく見える。
「灯?もう眠い?」
頬杖をついたまま窓の外を見ていた灯に享が尋ねる。
「え?まだ眠くないけど」
「じゃ、アイス食べる?」
「忘れてた!」
「用意しようか?アイスクリームグラスにバニラとストロベリー二個乗せにホイップクリームだよね?」
「嫌なことなんて何にもないけど、アイス食べたい!」
「よし、分かった」
享がアイスクリームの用意にカウンターキッチンの向こう側に行った時、灯はベッドルームから享へのクリスマスプレゼントを取りに行き、自分の椅子の背中側に隠した。
「はい、お待たせ」
「おぉ!まるで喫茶店の仕上がり!」
「それはお褒めに預かり光栄です。召し上がれ」
「はい、頂きます」
「んー、美味しい!寒い日にあったかいお部屋でアイスクリーム!なんて贅沢」
灯のスプーンは止まらなかった。
※クレーミーホイップ 箱の中に粉末(素)が入っていて、冷たい牛乳を注いで泡立て器で混ぜるだけで簡単に固めのホイップクリームが作れる画期的な商品。箱の中に透明なビニールの「絞り袋」とプラ製の「星型の口金」が最初からセットで同封されていた。
季節感のないお話で申し訳ないですが、この続きはまた午後八時に投稿致します!
どうぞお楽しみに!




