第六十二話 We moved in together!(同棲する事になっちゃった!)
Just like starting overをご覧頂いている皆様
優月菜の世界感に浸れてますか?
一週間が経つのが早い毎日。
仕事に行っている時は一時間が長いんですけどね。
私と同じ意見の方!!
午後八時に最新話を投稿致します。
甘々の続きをご覧頂いてお楽しみ下さい。
「え?今何と?」
翌日の昼下がり、灯の義父、崇が驚いた様に声を上げた。
むしろ実母の千紗子の方が落ち着いて、龍馬に聞き返す。
「結局、この前の火事にも関わっているから、灯がここに帰ってくるのも、かなり心配って事ですよね?」
「お母様、お話が早い!そう言う事です!こちらにまた何かしら起きる可能性がないとも言えない状態なんです。つきましては……享が住んでいる今のマンションはセキュリティもしっかりしておりますので、空き部屋に灯さんに引越して頂けたらと。そして享が灯さんのボディガードを務めますので、ご安心をという事です」
『あれ?話、違くない?』
灯は享の顔を見るとウィンクされた。
『え?嘘?』
灯は内心うろたえている。
享の部屋に同居するって話を聞いていたからだ。
まずは、それ自体自分では受け止め難いのに、両親に嘘までついて享と同居するなんて……。
灯の頭の中は、自分から享にキスしてしまった以来、完全に思考がグルグルグルグル回り回ってそこから離れない。
なのに得体の知れない恐怖心だけは、いきなり襲ってくる。
享と一緒にいられると安心する。
でも自分の中の超えてはいけないと思う一線との表裏一体だ。
「まあ確かに仰る通りに何らかの理由で灯が危ない目に合わない様にと考えて下さるのは有難いことではありますが、何もそこまでしなくても……」
崇には、どうしても理解できかねていた。
全てを語るには、どうしても灯の拉致騒動まで話さないとならないが、それは検察側からダメ出しが出ていた。
実行犯はともかくとして、黒幕側にはっきりとした証拠がない為だ。
そこを下手に騒がれると、それこそ大きな魚を逃すことになってしまう。
「学部長代行ではありますが。そこは信用がおけるとお考え頂き、享の日本での親代わりとして言わせて頂いくと、享が目立つのは兎も角、実は灯さんも入学以来かなり目立ってらっしゃいます。とくに学祭以降は、他校の学生まで灯さんのことを目当てに駅で待ち伏せしたりしています。まあ灯さんが寮生だと言うことまでは知らんのでしょうが……」
ようやく事態を重く受け止めたのか崇が確認をして来た。
「そんな浮ついた人だけが、灯のことを狙っている訳ではないと言う事なんですね?」
「詳細は申し上げられませんが、その通りです」
「享くん」
崇は享に呼びかけた。
「はい」
「灯のことを宜しくお願いします」
「あ、はい!全身全霊をかけて必ずお守りします」
「君って本当に見た目からは、本当に想像出来ない言葉を使うよね……あ、いや、失礼。本当に宜しく頼みます」
「はい、お任せ下さい」
「引越しをさせないと」
「もう既に用意は出来てますので、GOサインを出すだけです!」
「何と?」
崇が驚くと龍馬が答える。
「寮は家具付きですので、灯さんのお荷物自体は、そう多くないものですから、私の方から信用の出来る者の手配を致しますので」
「あぁ、そうですか。何から何まで本当にお手数をお掛け致しますが、宜しくお願いします」
崇は龍馬に頭を下げた。
その夕方。
「今日から同居人だね」
「宜しくお願いします」
「どうしたの?かしこまっちゃって」
「お世話になります」
「灯?」
「同居に際しましては、いろいろご面倒をおかけする事になるかと思いますが……」
「ちょっと何?」
「こちらは義父からの……お札でございます」
「すごい!初めて見た」
“邪気退散"
人間関係のトラブルや悪い気、精神的な不調をもたらす「邪気・魔」を寄せ付けないためのお札だった。
「よし、玄関の上に貼ろうか?」
「うん、南向きですし、そこで邪気祓い出来るからいいと思います」
「どうすればいいのかな?」
「貼る前にドアとか窓を開けて玄関を中心に普段通りのお掃除をして、その後、貼る壁を塩水で洗ったタオルで拭き掃除をします」
「O.K.」
いつもと口調の違う灯に違和感を覚えながらも、享は言われた通りに作業をする。
そして。
「玄関ドアの真上じゃなくて、少し横にずらした方良くて左開きのドアだから、真ん中より右にずらして下さい」
「これはどうして?」
「玄関は出入りするところだから、真下を何回も通るのは失礼って事ですね」
「神様だもんね」
「貼り終えたら、柏手を打ちます」
二人揃ってニ拍手した。
「これで安心だね」
「はい……」
「灯、何で、ですます?」
「え?これからお世話になるので……当たり前です」
「ちょっと」
灯のおでこに手をあてる享。
「熱あるじゃん!何で言わないの?」
「え?熱ある?私が?……」
享に言われて気がついてしまったら急に気分が悪くなり灯は、そのまま前のめりに倒れそうになったところを享が抱き止めた。
どうやら灯の思惑通り風邪が移ったらしい。
「ん……」
おでこに冷たいタオルが乗っている。
「灯?気持ち悪くない?お腹は痛くない?喉は?」
「?……ん……」
また、そのまま眠りに落ちた灯。
享は氷枕の冷たさを確認しながら動揺を隠せなかった。
『……喉が痛い……』
灯が寝返りを打つと、享が頬杖ついてベッドサイドに寄り添っていた。
「灯?気分は?」
「喉が……痛い……」
「やっぱり風邪移しちゃったんだね。ごめん」
「Tallの……せい……じゃ、ないよ」
享の海の色の瞳に見つめられて、この時までの色々な想いが目まぐるしく思い出されて灯の胸が高鳴る。
灯のおでこのタオルを取り替える享。
「病院行こっか」
「え、と、トローチ……ある?」
「あ、この前病院で貰ったのがある!持って来るよ」
しばらくして享は、自分が処方された、ほぼ飲まずに全快した風邪薬とトローチを持って戻って来た。
「これ僕が貰った風邪薬だけど、錠剤だから体の大きさは関係ないと思うんだ。熱が下がると楽になるから飲んだらどうかな?」※
「トローチ……だけ頂戴」
「ん」
享がPTPシートから指の腹でプラスチック部分をギュッと押して裏のアルミを破ってトローチを出して、灯の口に入れる。
「あ、り、がと」
灯が口の中でトローチをゆっくり溶かす。
「本当にトローチだけで大丈夫?」
「ん、」
享は灯のトローチをふくんで、ちょっともぐもぐと動いている口元を見つめている。
灯は思わず、恥ずかしくなって毛布に潜った。
「灯」
「ん?」
「風邪返して」
「?!」
顔を隠した毛布をはがすと享の唇が、何か言いかけた灯の唇をふさいだ。
※ピンボーン!処方薬は処方された本人以外は勝手に使用してはいけません。




